「暗黙のルール」って知ってる?

『暗黙のルール』というのは、何処にも書いていないし、ルールとして明確に提示されてはいないけど、「一般常識」として、あるいは「当たり前」のこととして、広く世間で認められているルールのことです。

みんなが「暗黙」に従っている「ルール」です。

 

『暗黙のルール』は、はっきりわからない

きちんと明言化されていない『ルール』を守れと言われても、困ってしまいます。

特に『生きにくさ』を感じている子ども達にとって、はっきりしないものは理解しにくいのです。

「ルール」として書いてあれば、それを頑なに守ろうとする子どもはいます。

でも、時と場合によって変わる『ルール』とか、相手によって変わる曖昧な『ルール』については理解できないし、守る必要も感じません。

そもそも、『暗黙のルール』というものは、国や文化の違いでも変わってきます。

ある国では常識とされることでも、他の国では非常識と思われる行為かもしれません。

ある時代では「当たり前」とされていたことが、現代では非常に奇異に映ることかもしれません。

そのように考えると、『暗黙のルール』を守ることが本当に大切なのかも疑問視する必要があるかもしれません。

でも、社会で生きていく上で、この厄介な『暗黙のルール』は確かに存在し、守れない場合は『非常識』な行為として捉えられやすいです。

『生きにくさ』を感じている子ども達には、この『暗黙のルール』が理解しがたいものなのです。

 

『暗黙のルール』は難しい

 

『生きにくさ』を感じている子ども達の中には、ルールが書いてあると、それをしっかりと守ろうとする子どもがいます。

時にはしっかりすぎるほどルールに固執します。

守れていない人がいると、どんな状況でも注意をしようとします。

例えば、コンビニの前でタバコを吸っている高校生に「大人にならないとタバコは吸ってはいけないんだよ。法律違反だ。」と注意をしに行きます。その後の展開を予想することができないので危険な行為ですが、本人は正しいことをしたと思っています。

また、書いていないルールを守る必要はないと思っている子どももいます。

「そんなの誰が決めたの?どこにも書いてないじゃないか。」と言って憤慨する子供もいます。

 

人の気持ちを理解することが難しい子どもは、自分の行為が相手に不快な感情を抱かせているとは気が付きません。

その時の状況を把握することができない子どもは、周りの人の目線を感じることもありませんので、自分の行動が迷惑になっていることがわかりません。

そのような子ども達に『暗黙のルール』を教えていくのは、至難の技です。

 

SSTで『暗黙のルール』を教える

SSTでは、『暗黙のルール』に気づくことから始めます。

『暗黙のルール』は世の中にたくさんあります。

その中で、子ども達の日常生活に関係する『ルール』を少しずつ提示していきます。

例えば、髪の毛を散髪してきた友達に対して「変な髪、全然似合ってない」と言うことは、相手に対して大変失礼だし、相手の心が傷つく言葉だと言うことを説明する必要があるのです。

そんなの常識だ」とか「当たり前じゃないか」と言っても、子ども達には理解できないのです。

「自分はその子の髪が変だと思ったし、似合ってないと思ったので、本当のことを言っただけだ」と思っているのです。

 

SSTでは、『本当のことだけど、言わなくてもいいこと』として教えます。

「本当」だと思っていることだけど、相手が嫌な思いをすることは、言わない方が良いことを授業で教えていきます。

 

SSTでは、『言葉の裏にある意味』も教えていきます。

言葉を字義通りにとる子どもは多いです。

言葉の裏にある感情や意味を読み取ることは難しいのです。

例えば、始業のチャイムが鳴っても、運動場で遊んでいる子どもに「もうチャイムが鳴ったよ」と先生が言ったとします。

大抵の子どもは「チャイムが鳴ったから教室に戻りなさい」と「言葉の裏の意味」を読み取って教室に戻ろうとします。

でも、『いきにくさ』を感じている子ども達は、「チャイムは鳴りました」と言いながら遊び続けてしまうのです。

『暗黙のルール』を理解させるには、感情を読み取ったりその場の状況を把握したり共感したりする能力がないと、非常に難しいのです。

 

SSTでは少しずつ、何回も、繰り返して指導していきます

1つの場面での『暗黙のルール』を理解したとしても、それが他の同じような場面で応用できるかと言うと、必ずしもそうではありません。

応用というのも彼らには難しいことなのです。

ですから、1つの場面でできるようになっても、また違う場面では1から教えていく必要があるのです。

1つずつ、何回も繰り返し練習を重ねても、実際の生活で活用できるとは限りません。

 

SSTでは、般化が一番難しい!

SSTの授業の中で、模擬場面を設定して練習をしても、実生活で活用できるようになるには時間がかかります。即効性はないのです。

何回教えても、本人の気づきがないと、定着しません。

あっそうなのか。これだったんだ。」とある日突然気づく場合もあります。

でも、教えていくうちに『これだったんだ』と気づく要素が増えていきます。

気づきがあれば、定着する確率も高くなっていきます。

 

SSTは『アイテム集め』

私はいつもSSTは、ゲームの『アイテム集め』だと思っています。

『アイテム』は沢山あった方が有利です。

「こんな時はこのアイテムを使ったら良いんだ」といつか気が付いて使えるようになってくれることを願って指導しています。

 

『暗黙のルール』はたくさんある

SSTで『暗黙のルール』を教えていくうえで大切なことは、たくさんある『暗黙のルール』の中から何を選んで教えていくかということです。

子ども達の日常生活の中で、友だちや周りの人と仲良く生活していく上で必要な『暗黙のルール』を優先的に教えていきます。

学校生活の中にも『暗黙のルール』はたくさんあります。

私は、子どもの言動を観察して、トラブルが起きた原因に『暗黙のルール』を理解していないと感じたら、SSTで教えていくようにしています。

実生活で困っていることの原因が本人には理解できません。

何故叱られるのか?どうして周りの人は責めるのか?理解できないまま、理不尽な思いを募らせていきます。

その時その時の『暗黙のルール』を教えて、ルールを守らなかったから責められたのだということがわかれば、完全には理解できないながらも、理不尽に怒られたという思いは減るのではないかと考えます。

実際の生活の中でのトラブルに潜む『暗黙のルール』という壁を少しでも理解しやすいように、何回も場面を変えて、繰り返し教えていくことが大切であると思います。

 

今回の教材は『暗黙のルール』

SSTで『暗黙のルール』を教えるときに使った教材を紹介します。

 

SST暗黙のルール1

SSTの授業で使うワークシート

1場面の提示:ロールプレイのシナリオ(文章を読むのではなく、ロールプレイで提示)

2考えてみよう:どうしたら良かったのか、考えて話し合う

3まとめカード:暗黙のルールのまとめ用のワークシート

4チャレンジシート:宿題として日常生活で暗黙のルールを見つける

 

SST暗黙のルールって?ワークシート

『言葉の裏にある意味』を考えるワークシート

『暗黙のルール』を理解するには、言葉の裏にある意味を汲み取ることが大切です。

練習課題として使うワークシートです。

 

SST暗黙のルール

SSTで『暗黙のルール』を教える時の練習問題です。『暗黙のルール』カードを1枚引いてロールプレイを子ども達がします。

*こんな時にどうすれば良いのか?

*この時の『暗黙のルール』はどんなことか?

などを考えていきます。

 

郡山北小学校ことばの教室 中尾和人先生「教材倉庫」です

http://www1.kcn.ne.jp/~nakao/menu.html