暗黙のルールは難しい!

学校生活では、「学校のルール」というものがあります。

学習のやり方のルールや生活のルールなどです。

例えば、「チャイムがなったら席に着く」というルールは、教室でも表示されていますので、見ればわかるルールです。

でも、「友達が注意されている時は笑わない」などは、何処にも書いてありません

ルールとしては明確にされていませんが、何となく経験上、笑ってはいけないことだと思われています。

 

これが『暗黙のルール』です。

給食の時間に、隣の子どもが牛乳をこぼしたとします。

同じグループの子は、雑巾を持ってきて一緒に拭いてあげます。

何処にも一緒に拭きましょうとは書いてありませんが、こういう時は手伝ってあげるのが良いとされています。 

でも『生きにくさ』を感じている子ども達の中には、こういう状況の時「牛乳はこぼしたら臭いんだよ。早く拭いてよ。」などと言いながら、悠然と給食を食べ続けている子どもがいます。

周りの子ども達は唖然とします。顰蹙を買っているのに本人は気が付きません。

「それなら手伝ってくれたら良いのに。」と思って言います。

でも、「僕がこぼしたわけではないのに、何で手伝わなければいけないのさ。」と言う返事が返ってきて、また唖然とするわけです。

当然人間関係を構築するのは難しくなります。

しかし、この子どもに「そんなの常識だ」とか「一緒に拭くのが当たり前だ」と言って、注意しても、本人は何故注意されるのか理解することができないので、理不尽に叱られたと感じるわけです。

 

「牛乳をこぼしてしまった子はとても困っています。自分が牛乳をこぼしたらどうしてもらいたいと思いますか?」

このように、相手の気持ちを考えさせるのではなくて、相手の気持ちを言ってあげる方がわかりやすいのです。

自分だったらどうか?という視点を考える根拠にすると、少しは理解できるようになります。

 

「僕は牛乳をこぼしたりしないからわからない。」と言うかもしれません。

そういう時は、この子が失敗した前例を取り出します。

「この前、掃除の時にバケツをひっくり返して、廊下に水が流れて困っていたことがあったね。覚えてる?あの時、みんなが拭くのを手伝ってくれたよね。その時どう思った?」

それでも「そんなことあった?忘れた。」というかもしれません。

 

「自分が困った時に、みんなが手伝ってくれると、とても嬉しいものです。だから、みんなは手伝っているのです。」と他の人の行動を説明します。

「そんな時に、『牛乳は臭いから早く拭いてよ。』と言って、手伝わないで給食を食べ続けていると、みんなは嫌な気持ちになります。」

その子の行動に対しての他の友だちの気持ちを説明します。

 

「友だちになるためにはどうしたら良いと思いますか?」

このように聞いてみると、手伝おうとする子どももいます。

 

友だちなんかいらない」と言うかもしれません。

でも、内心みんなに責められるよりも、仲良くしたいと思っているかもしれません。

その時は手伝えなかったとしても、次は、もしかしたらできるようになるかもしれません。

 

『暗黙のルール』は何処にも書いていないしだれも教えてくれないからわからないのです。

『暗黙のルール』は日常生活の中に沢山あります。

11つ説明していてはキリがありません。

 

SSTで『暗黙のルール』を教えよう!

SSTでは、始めに『暗黙のルール』というものがあることを教えます。

1ロールプレイを見る(場面)

スタッフのロールプレイを見ます。

A君が自分の席で本を読んでいます。A君が本を開いたままトイレに行きました。B君はA君の席に座ってA君の本を読み始めました。A君が帰って来ました。A君が「僕の本だから勝手に見ないで」と言いました。B君は「A君が本を開いたまま何処かに行っちゃったからもう見ないと思ったんだよ。」と言いました。「トイレに行ってたんだよ。僕の席に座って僕の本を読まないでよ。」とA君が言いました。

 

2考えてみよう

ロールプレイを見た感想を言います。

A君の席なんだからB君はおかしいよ。」

A君はいなくなったんだから本を読んでも良いと思う。」

B君は本が置いてあって人がいなかったから読んだんだと思う」

色々な意見が出ます。

「席にいないときでも、人の本を勝手に読んではいけない」というルールは何処にも書いてありません。

でも、一般常識としては、人の物に勝手に触ってはいけないというルールがあります。

B君はどうしたら良かったと思う?」と聞いてみると

A君がいなくても、勝手に読んではいけない。」という意見が出て来ました。

A君に聞いてから読んだら良い」という意見も出て来ました。

 

3やってみよう

スタッフがやったロールプレイを、今度は子ども達同士でやってみます。

A君の役の人は、席で本を読んでいます。その後、席を立って出て行きます。

B君の役の人は、どうするのか?話し合った通りにやってみます。

B君はA君が帰ってくるのを待っていて、「本を貸して欲しい」ということもできます。

A君がいなくなったので、本は諦めて違うことをしても良いです。

勝手に本を読む行動でなければ良いわけです。

自分たちでやってみると気がつくことがあります。

例えば、勝手に本を読むのをスタッフがやって、A君を子どもがやってみた時に、「すごく嫌だった」と感じて、自分がやっていたことは人に嫌な思いをさせるということに初めて気が付いた子どももいます。

 

4練習してみよう

色々な場面を設定して、その時どのような行動をしたら良いのかを考えていきます。

場面の書いてあるカードを提示します。

その時どのような行動をするのか2人1組でロールプレイをします。

どんな暗黙のルールなのかを考えて発表します。

例えば

場面:A君とB君が公園で遊ぶ約束をしていました。でもA君は用事ができたので、公園に行きませんでした。

ロールプレイでは、B君が公園で待っているところをします。

B君はどんな気持ちで公園で待っていた?」

「何でA君は来ないんだろうって思った。」

A君はどうしたら良かった?

B君に行けなくなったと連絡すれば良かった。」

暗黙のルールは?

「約束した時に行けなくなったら連絡をする。」

 

5ゲームをしよう

「暗黙のルール」すごろくをします。

すごろくの中で「暗黙のルール」が出て来たら「暗黙のルール」カードを1枚引いて質問に答えます。

 

6振り返り

「暗黙のルール」の学習でわかったことを発表します。

 

暗黙のルールを全部教えるのは無理

世の中にある「暗黙のルール」を全部教えるのは無理です。

あまりに沢山あって、多岐にわたっています。

何処までを教えたら良いのかは、ケースバイケースですが、最低限友達や周りの人と仲良く生活していく上で必要と思われることは教えていかなければいけません。

人に嫌な思いをさせること

人に迷惑をかけること

自分勝手だと思われないようにすること

無責任だと思われないようにすること

人との関係を壊してしまうこと・・・などなど

 

どんな言動が、人に嫌な思いをさせるのかも教えていく必要がありますが、その時々で教えていくしかないと思います。

 

今回は「暗黙のルール」をどのように指導したら良いのかを紹介しました。

とても難しい課題なので、1回の指導で身につけようとするとうまくいかないかもしれません。

何回も、繰り返し、場面を変えて指導していく必要があります。

「暗黙のルール」で使用した教材は、教材のコーナーでご紹介します。