SST ターゲットスキル 本当のことだけど、言わなくても良いこと

本当のことだけど言わなくても良いことって?

日常生活の中で「本当のことだけど、言わなくてもいいこと」というのがあります。

人は自分で内心思っていても、人からは言われたくないことがあります。

例えば、体重を気にしている人は、自分では「最近太ったみたい」と冗談めかして言いますが、他の人に「あなたこの頃太ったんじゃない?」と言われたら深く傷つくかもしれません。

人には言われたくないことがあります。

『生き辛さ』を感じている子ども達の中には、相手の感情を推し量ることが苦手な子どもがいます。

相手が嫌だと感じていても、全く気がつかない子どももいます。

心の理論という課題を通過していない子どもは、相手の立場になって考えることができないので、人と共感することができません。

相手の気持ちを考えてごらん」とよく言いますが、彼らは相手の気持ちを考えることができないのです。

こんなことを言われたら嫌な気持ちになる」ということがわからなければ、平気で言ってしまいます。

共感することができなければ、何を言ったら傷つくのかもわかりません。

本当のことなのに、何故言ってはいけないの?

日常生活の中で、状況を把握して、自分はどのように行動すれば良いのかを、人は瞬時に判断して行動します。

周りの状況が見えていれば、相手への対応もスムーズにできます。

でも、周りの状況が見えていなければ、自分中心の判断になり、相手のことなど考えずに行動してしまうのです。

『生き辛さ』を感じている子ども達は、周りの状況をうまく把握することができません

他者理解の部分が非常に未熟である場合が多いです。

相手がどんな人か?どんなことが好きで、どんなことを嫌がるか?そんなこと考えたこともないかもしれません。

自分と繋がりのある人は(家族など)よくわかっているかもしれませんが、その他の人には関心がないので、みんな同じように見えるのかもしれません。

ある子どもは、毎日教室で会っている先生と、スーパーマーケットで会った時に、相手が誰かわからなかったという例もあります。

ですから、「太った人だね」とか「あの人髪の毛薄いね」などと悪気もなく言ってしまうのです。

勉強のできる子(IQが高い子も意外と多いです)は、テストの点数の悪い子に対して「こんな簡単なテストでそんな点数をとるなんて頭悪いね」と平気で言って反感を買ってしまうのです。

彼らは本当のことだから言っても良いと思っているのです。

自分は嘘をついているわけではないのに、何で怒られるのかわからないと思っています。

自分が言ったことは間違っていないと信じ、自分は悪くないと思っているので、注意されたり責められたりすると、理不尽な思いを抱くのです。

そういうことが重なって、自尊感情が低下して、二次的な障害に進んでしまうケースもあります。

SSTで「本当のことだけど言わなくても良いこと」を何故教えるのか?

SSTでは、「本当のことだけど言わなくても良いこと」を教えます。

色々な場面があります。

1つの場面で「そうなんだ!」と思っても、違う場面になると、また同じ失敗を繰り返してしまうこともあります。

でも、『本当のこと=言って良いこと ではない』ということは、わかってきます。

心に浮かんだことを考えなしに口にしてしまう特性がありますが、少しずつ気をつけようとするかもしれません。

すぐに忘れてしまうかもしれませんが、回数を重ねるうちに身についてくることもあるでしょう。

SSTのテーマ 「本当のことだけど言わなくても良いこと』

ロールプレイを見る(問題提示)

ロールプレイはスタッフでバッド例を提示します。

A君が宿題を忘れてきたので、先生に注意されています

B君が

ヨシオさん
ヨシオさん

A君て忘れ物が多いよな。昨日も宿題を忘れていたよね。

と言いました。

考えてみよう

A君はどんな気持ちになると思いますか?と聞いてもよくわからないかもしれません。

ロールプレイを見た感想を聞きます。

ユウコさん
ユウコさん

どうだった?どんなことを思った?

レインボー塾の子ども達
レインボー塾の子ども達

自分もB君のように言う

自分はB君のように思うけど、その場では言わない

A君が宿題を忘れたのが悪い

ユウコさん
ユウコさん

A君はどんな気持ちだったと思う?

わからない子どもがいるので、スタッフとロールプレイをしてみます。

子どもにAになってもらいます。

やってみるとA君の気持ちがわかる子もいます。

レインボー塾の子ども達
レインボー塾の子ども達

嫌な気持ちだった。

そんなこと言うなよと思った。

ユウコさん
ユウコさん

あなたがB君だったら、どうしますか?

A君の気持ちがわかると、B君の言動に対する考えが変わってきます。

レインボー塾の子ども達
レインボー塾の子ども達

B君は思っていても黙っていたら良いと思う

B君は家に帰ってから、お母さんに言ったら良いと思う

その場で言うのは良くないと感じる子どもも出てきます。

ユウコさん
ユウコさん

A君の周りの人はどう思ったと思う?

レインボー塾の子ども達
レインボー塾の子ども達

A君がかわいそう。

A君に言わなくても良いのに

B君はひどい

やってみよう

2人1組でロールプレイをします。

A君が先生に宿題を忘れて注意されています。

ユウコさん
ユウコさん

B君になった人はどうしますか?

レインボー塾の子ども達
レインボー塾の子ども達

黙っている

下を向いている

知らん顔をしている 

練習してみよう

色々な場面の「言わなくても良いこと」を探してみます。

場面

Aさんが、新しい洋服を着て登校して来ました。

 B君が『その服全然似合ってないね。」と言いました。

A君が鉄棒で逆上がりの練習をしていましたが、なかなかできません。

 B君が『A君下手だなあ。』と言いました。

A君が図工の作品を一生懸命作っていますが、うまくできません。

 B君が『A君不器用だなあ、変なのを作ってる』と言いました。

A君の家に行きました。

 B君が『この家臭いよ』と言いました。

A君のお母さんに会いました。

 B君が「おばさんまた太った?ダイエットした方が良いよ。」と言いました。

A君が漢字テストで悪い点をとって隠そうとしました。

 B君が「A君、漢字テストの点数が悪いから隠しているんだろう。」と言いました。

様々な場面を見つけることができました。

ゲームをしよう

「どんな風に言う?」ゲーム

色々な場面が書いてあるカードを用意します。(場面カード)

山札から1枚引いて、場面を右隣の人に見せます。

右隣の人は、場面カードを見て、言い方を考えて言います。

みんなでその言い方はどうか見ていて、良かったら「いいね👍カード」を出します。

右隣の人が次に山札からカードを引いて自分の右隣の人に見せます。

振り返り

SSTの振り返りをします。

『本当のことだけど言わなくても良いこと』を理解しているのかを確かめます。

ユウコさん
ユウコさん

今日のSSTでわかったことや気がついたこと、感想などを発表しましょう。

レインボー塾の子ども達
レインボー塾の子ども達

本当のことだけど言ってはいけないことがあるってわかった。

僕は今まで随分言ってたな。

言われたら嫌だなって思うこともあるんだ。

ついつい言っちゃうけど、今度から黙っていようと思った。

 

「相手の気持ちを考えて行動しよう」と言われても

『生き辛さ』を感じている子どもたちに、相手の気持ちを考えて行動しようと教えるのは難しいことだと思います。

まず、「相手がいる」ということを認識することから始めます。

次に、「相手にも自分と同じように感情があるということを教えます。

さらに、「自分の言動で相手の感情が変わるということを少しずつ教えます。

ケースバイケースなので、1つの場面がクリアできても、次もできるかというと必ずしもそうはならない場合が多々あります。

彼らは応用が効きません。11場面毎に教えていく必要があります。

相手の感情を代弁することが必要です。

A君はあなたにこう言われてすごく嫌な気持ちだったと思うよ」というようにはっきりと事実を伝えることが大切です。

相手の気持ちを代弁して伝えることで、「そうだったのか!」と初めて気づく子どももたくさんいます。

あなたがA君だったらどう思いますか?」と聞いてもわからない場合は、ロールプレイをして、A君になってもらうと良いかもしれません。

自分がその立場になって初めて実感できるのです。

「あなたが悪い、謝りなさい」は自尊感情がボロボロ(二次的な障害へ)

言葉でいくら説得しようとしても難しいかもしれません。

頭から「あなたはA君にひどいことを言ったのよ。謝りなさいという指導は、彼らを混乱させてしまいます。

何故A君にひどいことを言ったことになるのかを丁寧に説明する必要があるのです。

本人は悪いことを言っているという自覚がないのですから、「僕は悪くないのに叱られた」と思うわけです。常に理不尽な思いをしているのです。

何で僕ばかり叱られるのか?

僕が悪い人間だからだ。

僕はダメだ。

と言うように考えが進んでいきます。

自尊感情はどんどん低下して、ボロボロになります。

自尊感情がボロボロになると、弱い自尊感情を守ろうとして、心の中にトゲトゲの鎧を着ます。

自分を守るために、攻撃的になったり反抗的になったりします。

これが、二次的な問題行動に繋がり、トラブルの絶えない日々になっていきます。

また、自傷行動に走ったり、引きこもってしまったりすることも考えられます。

二次的な問題行動が起きないように、小さなことではありますが、トラブルがあった時の対処は、丁寧にしていくことが大切です。

 

今回は、SST「本当のことだけど、言わなくても良いこと」について紹介しました。

SSTのターゲットスキルはまだまだたくさんあります。

少しずつ説明していこうと思っています。

SST「本当のことだけど言わなくても良いこと」の教材

SST「本当のことだったら言っても良いの?」

ワークシートです。

記入しながら考えていく学習方法では、考えをまとめるためにワークシートを使います。

SST本当のことだけど言わなくても良いこと場面カード

ゲーム方式で、こんな場面だったらどう言うか?考えてやってみます。

使い方は自由です。

素材として提供しますので、子ども達に合った方法で使ってください。

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