第11話 とらネコ先生 探し回る(後編)SST「周りの人の気持ちは?」での俊哉

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私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

とらネコ先生とレインボー塾の子供たちアイコン

レインボー塾にやってきた俊哉

数日後、巨大マンション群に住んでいる俊哉が、レインボー塾にやってきました。

今日は、SSTグループ学習の4年生が集まる日です。

俊哉の他に、潤子、茉莉花、直人、謙、それに最近入った優也がいます。

優也については、第9話 とらネコ先生 登る に登場しています。

第9話 とらネコ先生 登るをご覧になりたい方は→こちらをクリック

優也はあれから何回か、カウンセリングを受けて、少しづつ落ち着いてきたので、SST4年グループに入って学習することになりました。

玄関ホールに入ってきた俊哉は、前にあった時(マダムMとして)より、少し元気になったみたいです。

レインボーばあば
レインボーばあば

こんにちは、俊哉。元気だった?

俊哉
俊哉

こんにちは、レインボーばあば。

まあまあ元気だよ。

今日もレゴして良い?

レインボーばあば
レインボーばあば

もちろんよ。

ウエイティングルームに用意してあるわよ。

俊哉
俊哉

やったー!

今日は、巨大なビルを作るんだ!

俊哉は笑顔で、ウエイティングルームに入って行きました。

ウエイティングルームについて

ウエイティングルームとは、子ども達が、SSTが始まるまでに待っている部屋です。

子ども達が好きな、図鑑や時刻表、レゴ、ドミノ、パズル、おもちゃなどが置いてあります。

子ども達は、各々自分の興味があることや、好きなことに没頭して遊んでいます。

パソコンには、ビジョントレーニングのアプリが入っているので、ゲーム感覚でそれを楽しんでいます。

俊哉はレゴが大好きで、毎回色々な物を作っては、見せてくれます。

俊哉のお母さんが少し遅れて入ってきました。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

こんにちは、レインボー先生。

俊哉がいつもお世話をおかけしています。

レインボーばあば
レインボーばあば

こんにちは。

俊哉はレゴをしに行きましたよ。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

俊哉はレゴが小さい頃から大好きなんです。

家でもたくさん作って、街を作り上げています。

時々癇癪を起こして、せっかく作ったレゴを壊してしまう時があるんですけどね。

レインボーばあば
レインボーばあば

そうですか。

思うように作れなかったのが悔しいのかもしれませんね。

でも、きっとまた、作り直して、納得のいく作品を作っているんでしょうね。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

そうなんです。

暫くすると、黙々と作っているんですよ。

前より素晴らしい物が出来ているんです。

それじゃあ、俊哉のこと、よろしくお願いしますね。

そう言いながら、俊哉のお母さんは、レインボーサロンに入って行きました。

レインボーサロンについて

レインボーサロンというのは、保護者の方が、SSTをしている子ども達を待っている部屋のことです。

ソファーとテーブルが置いてあります。

コーヒー、紅茶、ハーブティーなどの飲み物がある、ドリンクコーナーが設置されています。

発達障害やビジョントレーニング、SST等の書籍もあって、誰でも自由に読んで良いことになっています。

療育などの情報誌やパンフレットなども壁に貼ってあります。

パソコンでは、新しい療育や感覚統合などの情報がすぐに検索できるようになっています。

サロンでは、同じ年齢の子どもを持つ保護者が集まっているので、お互いの苦労や悩みを話す機会もあります。

年上の子どもを持つ保護者に相談したり、家庭での苦悩や、学校での出来事など、毎回話が尽きません。

学校の保護者会と違って、非難されることも、加害者の親という偏見も無しに、本音が出せる唯一の場所かもしれません。

レインボーサロンが、保護者の方の癒しの場となれば良いなと、私は思っています。

ウォーミングアップでの出来事

今日のウォーミングアップは、ペットボトルボーリングです。

ウォーミングアップは、プレイルームで行います。

フローリングの床に、ペットボトルを10個置いて、ボールを転がして倒すゲームです。

ペットボトルに色を塗ったり、キャラクターの絵を貼ったりして、子ども達が製作活動の時に、廃材を使って作った作品です。(底の方に少しずつ水を入れて、安定できるようになっています。)

始めに、順番を決めます。

番号が書いてある棒を1人ずつ引いていきます。

潤子、直人、茉莉花、優也、俊哉、謙の順番でボールを投げることが決まりました。

5回戦です。

得点方法は、1回に倒した数を5回足していって、点数が多い人の勝ちです。

ガーターはありません。取り敢えず、ペットボトルに当たって倒せば得点になります。

ルールは

①順番を守る

②スタートの線を超えない

③倒したペットボトルは自分で直す

④ボールは次の人に渡す

⑤負けても怒らない

審判はSSTスタッフのジュンヤさん、記録はSSTスタッフのユウコさんです。

私はいつものように、プレイルームの後ろから見学していました。

潤子
潤子

ボウリングって久しぶりよね。

潤子がニコニコして言いました。

茉莉花
茉莉花

本当にね。

前に作ったキャラクターが貼ってあるペットボトルを狙うつもりよ。

茉莉花も笑顔で言いました。

潤子がスタートラインに立って、ボールを転がしました。

わずかに右に逸れて、当たったのは3本でした。

それを、ユウコさんがホワイトボードの表に書いて行きます。

次は、直人の番です。

直人
直人

よっしゃ!やったろうじゃないか!

直人は気合を入れて転がしました。とても強かったけど、7本でした。

直人
直人

あーあ、残念。ストライクならず。

茉莉花も頑張って転がしましたが、狙っていたピンには当たらず、4本のみ倒れました。

優也は、初めてのペットボトルボウリングで緊張している様子です。

謙

大丈夫だよ!優也。

絶対ガーターになることはないから。

だって溝がないもんね。

優也
優也

それもそうだな。

一丁やってみるか!

優也が転がしたボールは、ど真ん中に当たり、10本全部倒してしまいました。

直人
直人

すご〜い!優也。

カッコいいなあ。

茉莉花
茉莉花

本当に!

転がすポーズが決まってるよね。

みんな口々に優也を褒めます。

優也は照れて、

優也
優也

それほどでもないよ

と言いながら、自分のところに帰りました。

次は俊哉の番がやってきました。

俊哉は比較的ボウリングが得意です。

優也のストライクを見ていて、自分もストライクを取るぞ!と勢い込んでいるのでしょう。

スタートラインを少し出てしまいました。

審判のジュンヤさんが、

ジュンヤさん
ジュンヤさん

俊哉、ラインを超えてるよ。

次に越えると一回お休みになるよ。

と注意しました。

俊哉
俊哉

なんだよ!

みんなには言わなかったくせに、なんで俺だけ注意するんだよ!

俊哉はジュンヤさんに食ってかかりました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

他の人は、線を出てなかったんだよ。

審判だからちゃんと見ているんだ。

次は気をつけてやってみようね。

ジュンヤさんが言うと、俊哉はカッとなった目つきのまま、ボールを転がしました。

ボールは、大きく左に逸れて、1本も当たらずに終わってしまいました。

俊哉
俊哉

なんだよ!

ジュンヤさんがケチつけるから、ボールをうまく転がすことができなかったじゃないか。

おかげで0点だぞ!

俊哉はジュンヤさんを睨みながら、ペットボトルを蹴り飛ばしました。ボールも遠くに蹴ってしまいました。

謙

俊哉、やめろよ!

次は僕の番なのに、メチャクチャじゃないか!

謙が怒って言いました。

俊哉
俊哉

そんなの知るか!

俊哉は怒ってプレイルームを出て行ってしまいました。

スタッフの太郎さんが俊哉を追いかけました。

謙

やれやれ、1回戦でこうなったら、後はどうするの?

謙が心配そうに言いました。

ペットボトルを直していた茉莉花と潤子が心配そうにジュンヤさんの方を見ました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

大丈夫だよ!

続きをやろうな。

直人
直人

でも、俊哉がいないぜ。

続けて良いのかなあ?

直人が俊哉を心配して言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

俊哉には、タロウさんがついてるから大丈夫だよ。

きっとクールダウンしてるんじゃないかな。

ジュンヤさんは、にっこり笑って言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

それじゃ、次は謙だね。

謙

うん、頑張ってみるよ。

謙が転がしたボールは8本倒しました。

このようにして、4回戦までいった時、太郎さんに連れられて、俊哉が戻ってきました。

俊哉
俊哉

みんな、ごめん。

俺また、カーッとなっちゃって。

本当に悪かったよ。

直人
直人

良いよ、もう。

優也
優也

俺、実は自分を見ているようだったんだ。

同じようなこと前にあったから。

茉莉花
茉莉花

悔しくて怒るのはわかるけど、ゲームをメチャクチャにするのはねえ。

潤子
潤子

そうだよ、みんなのことも考えてよね。

直人
直人

まあまあ、そんなに責めるなよ。

反省して謝ってくれたんだから良いじゃないか。

茉莉花
茉莉花

でもねえ。

俊哉、周りの私たちが、どんな思いをしたか、わかってる?

俊哉
俊哉

それは・・あんまり考えてなかったなあ。

俺カーッとなると、周りが全然見えなくなるんだ。

嫌な思いさせてごめん。

優也
優也

わかるよ!それ。

俺もカーッとなると、周りなんて全然見えない。

頭の中真っ赤になって、自分が何をしてるのかもわからなくなっちまうんだ。

優也が何かを思い出すように言いました。

謙

俺もそう言う時あるけど、でも後でメチャクチャ後悔するんだよな。

そんでもって、自分が大っ嫌いになる。

直人
直人

凹むよなあ。

でも、周りにいた俺は、今回ちょっとわかったことがあるんだ。

俊哉には悪いけど、めっちゃカッコ悪いことしてるよな。

俊哉
俊哉

カッコ悪いかあ。

確かになあ。

出来なかったからって、自分の怒りを爆発させて、ジュンヤさんに文句を言って、自分が下手だったのにジュンヤさんのせいにして・・・

本当にカッコ悪いよなあ。

ジュンヤさんごめんなさい。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

もう良いよ。

俊哉はカーッとなってしまうけど、クールダウンしたら、ちゃんとわかってくれてるじゃないか。

後はカーッとならない練習をするのみだね。

ジュンヤさんが笑顔で言いました。

俊哉
俊哉

そのカーッとならない練習ってのが、すごく苦手だよ。

茉莉花
茉莉花

誰でもそうよ。

前にSSTでやったじゃん。

クールダウンの方法とか、怒りのコントロールとかさ。

俊哉
俊哉

そうそう、忘れることが多いけど、また頑張ってみようかな。

直人
直人

そうだよ!お互いに頑張ろうな。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

続きをやろうと思うけど、俊哉は2回戦から参加してないけど、どうする?

俊哉
俊哉

俺ゲームを台無しにしちまったから、失格だと思うな。

直人
直人

そんなこと言うなよ。

復活戦で、3回続けて転がしても良いことにしたらどうかな?

直人が提案すると、みんなもOKしました。

俊哉
俊哉

えっ!やって良いの?

みんな優しいんだね。

こんな俺なのに・・・

潤子
潤子

ラッキーなんだから、頑張ってね。

この後も、ワイワイ言いながら、ボウリングは続きました。

誰が優勝したかって?

やっぱり、優也が抜群に上手くて、500点満点で優勝しましたよ!

でもね、私は、みんな優勝だと思います。

だって、俊哉の癇癪を受け止めて、敗者復活戦までやってくれたんですからね!💮

コミュニケーションタイムの1コマ

ウォーミングアップが終わって、プレイルームからSSTルームに戻ってきました。

今日のコミュニケーションタイムのテーマは、もうすぐあるイベント(秋祭り)の内容を話し合うことです。

レインボー塾では、月に1回は、イベントをすることになっています。

今月は、秋真っ盛りなので、秋をイメージした『秋祭り』をすることになりました。

秋祭りの構想を子ども達で話し合います。

司会はSSTスタッフの太郎さん、書記はSSTスタッフのマリコさんがやることになりました。

タロウさん
タロウさん

今月のイベント、秋祭りにどんなことをやりたい?

直人
直人

やっぱり、紅葉している木の葉を使って、何かゲームを作るっているのはどうかな?

潤子
潤子

そうよね。

木の葉のしおりや、壁掛けなんかを作っても良いかも。

謙

ダンボールで、迷路を作るのは?

葉っぱやどんぐりを途中に入れて作るんだ。

俊哉
俊哉

面白そうだなあ。

大きな迷路にしてさあ。

みんなで歩くってのはどうかな?

優也
優也

巨大迷路か、凄いなあ。

直人
直人

松ぼっくりのストラックアウトなんかも面白いかも。

謙

なるほどね!

大きな葉っぱを集めてきてさあ。

ストラックアウトの的にしても良いよなあ。

茉莉花
茉莉花

ねえ、チョッと違うけど、お芋が美味しい季節だからさあ。

スイートポテトを作るってのはどう?

直人
直人

良いねえ。

美味しいもんなあ、スイートポテト。

潤子
潤子

芋羊羹や、芋団子なんかもできるよ!

直人
直人

秋祭りに出そうよ。

そうだ!模擬店みたいなのを出すのはどうかな?

茉莉花
茉莉花

お店を出すの?

潤子
潤子

そうそう、秋の小物とか、ゲームとかを作ってさ、お店にするの。

茉莉花
茉莉花

レインボー塾には、たくさんの子ども達がいるでしょ?

それぞれで、お店を開くのよ。

キッズSSTの子や、個別指導の子をお客さんに呼ぶの。

保護者の方を呼んでも良いかも!

謙

凄いなあ、それじゃあ1大イベントになるよなあ。

茉莉花
茉莉花

タロウさん、他のSSTのグループも、この話し合いしてるんでしょ?

4年SSTグループからの提案ってことで、伝えてもらえるかなあ?

タロウさん
タロウさん

良いよ。他のSSTグループも、色々な意見があるから、4年SSTグループの提案も知らせておくね。

優也
優也

レインボー塾って、凄いことやってるんだなあ。

俺、塾って勉強するところだと思ってた。

そんな楽しいことが出来るんだったら、もっと早く入ってれば良かったよ。

優也が感慨深く言うので、みんなはニコニコしながら優也を見ていました。

優也にとっては、このようなイベントは初めての体験でしょう。

イベントは、話し合いから始まって、企画、立案、活動計画、実践まで子ども達の意見を中心にして進めていきます。

それぞれの発達段階に合わせて、学年ごとにやるときもあるし、今回のように学年の壁を超えて、レインボー塾全体でやることもあります。

優也にとっては、初めてだらけで、ビックリしていますが、レインボー塾が彼の寂しさを癒して、少しずつ今の生活に馴染めるように願っています。

SSTでの出来事

今日のSSTのテーマは、「周りの人の気持ちは?」です。

小学校の低学年では、周りの人がどんな気持ちかなんて、わからないのが当たり前?でしょうが、中学年以上になったら、少しは周りの気持ちを考えることも必要です。

他者理解は、発達障害などで「生き辛さ」を感じている子ども達にとって、非常に難しい課題です。

他人も自分と同じように感情があることを理解することが出来るようになるのは、「心の理論」を通過してからだと言われています。

自分と同じように感情はあるけれど、1人1人感じ方は違うということも、理解しがたいことかもしれません。

自分は平気でも、他の人にとっては、非常に嫌なことだと感じることもあります。

人それぞれに感情は違うんだということを理解することは、本当に難しいと思います。

でも、少しずつでも、気づいて、考えていくようにすることはとても大切です。

レインボー塾では、SSTで他者理解を学習します。

ロールプレイを見る(問題提起)

スタッフがロールプレイを見せます。

ヨシオさんは漢字テストで、100点ではありませんでした。

ヨシオさんはタロウさん(先生)の所に行って、

ヨシオさん
ヨシオさん

どうして100点じゃないんだよ

と言いました。

タロウさんは、

タロウさん
タロウさん

ここがハネてないから✖️なんだよ。ここもちゃんと閉じてないから✖️がついたんだよ。丁寧に書いたら、⭕️なんだけどね。

と言いました。

ヨシオさん
ヨシオさん

そんなことで✖️にするなよ!

ヨシオさんは怒って、テストをビリビリに破いてしまいました。

それから、机を倒して、椅子も投げ飛ばして、教室から出て行ってしまいました。

マリコさん
マリコさん

みんな、今のロールプレイを見て、どう思った?

気がついたことや感想などでも良いよ。

意見を言ってね。

直人
直人

テストが100点取れなかったからって、そんなに怒らなくても良いじゃん。

潤子
潤子

そうかな。

でも、自分は100点取れたって思っていたのに、ハネてないからとか閉じてないからって✖️にされたら、腹が立つかも。

優也
優也

俺だったら先生をぶん殴ってるかも!

謙

えーっ!それはNGでしょ。

でも、悔しい気持ちはわかるな。

茉莉花
茉莉花

そう?

だからって、テスト破ったり、机倒したり、椅子を投げたりは、やっちゃダメでしょ。

直人
直人

そうだよね。

椅子が当たったらけが人が出たかも。

潤子
潤子

だいたい自分がキレたからって、授業を中断させないでほしいわ。

茉莉花
茉莉花

そうそう、迷惑な話よね。

潤子
潤子

この後、先生が追いかけて行ったりしたら最悪。

また授業が進まないことになるよね。

マリコさん
マリコさん

今、迷惑って言葉が出たけど、周りの友達はどんな気持ちで見ていたんだと思う?

茉莉花
茉莉花

嫌だなあと思ってるよね。

潤子
潤子

また授業が遅れるって思ってるかも。

謙

本当に迷惑だなあって思ってるよ。

直人
直人

すぐにキレるやつだなあって思ってる。

優也
優也

俺はヨシオさんの気持ちよくわかるよ。

すごく悔しかったんだよな。

でも、今のロールプレイっていうの?見てたら、他の友達が全然眼中にないなあっていうのがわかった。

俺もそうだからなあ。

こんな風に見えてるのかって、初めて知ったよ。

俊哉
俊哉

俺も優也が言ってること、すごくよくわかる。

自分ではそんな気持ちなくても、結局周りに迷惑っての?かけてるよなあ。

自分しか見えてなかった。

いや、自分の姿も見えてなかったよ。

俊哉がしみじみして言いました。

優也
優也

そうだよな。

周りが見えてないって、本当によくあることだよな。

でも、ロールプレイを見てたら、周りの人の気持ちもわかるよな。

めちゃくちゃ迷惑だよ。

正直、小さい子の癇癪に見える。

もっと大人になれよって言いたい。

自分にだけど・・・

優也が、何かを思い出すように言いました。

謙

他人の身になって、初めて気づいたり、分かったりすることってあるんだな。僕も時々カーッとなってやっちゃうことがあるから。

ゲームごときでキレたりして、本当にカッコ悪いよ。

謙も、その時を思い出しながら言いました。

マリコさん
マリコさん

それじゃあ、ヨシオさんはどうすれば良かったと思う?

マリコさんがみんなの顔を見ながら言いました。

直人
直人

やっぱり、悔しいのは確かだけど、テストをくしゃくしゃにしたり、机を倒したり、椅子を投げたりするやり方はマズイと思うな。

謙

クールダウンが必要なら、タロウさんに言って、廊下に出るのも良いかも。

茉莉花
茉莉花

深呼吸をして、気持ちを鎮める。

潤子
潤子

そうだよね。

考え方を変えるっていうのもあるよ。

今回はハネや閉じるところで引っかかったから、次からはそれに気をつけようって思うの。

直人
直人

まあ、難しいかもだけど、考え方を変えるっていうのは良いかも。

茉莉花
茉莉花

周りの人がいるんだぞって心の思い浮かべるの。

迷惑かけるぞって。

優也
優也

そんな余裕ないよ、多分。

怒りを鎮めるだけで、いっぱいいっぱいだと思うな。

潤子
潤子

そうだけど、周りから見た図っていうか、自分がどう見えてるかを意識することが、ストップをかけると思うよ。

俊哉
俊哉

そうだよな。

超カッコ悪いって心の中で呪文を唱えたら良いかもしれないな。

優也
優也

それ、受ける。

超カッコ悪いかあ。

そんなことしたら、超カッコ悪くなるぞ!やめろ!ってブレーキをかけるんだな。

マリコさん
マリコさん

色々な意見が出たね。

超カッコ悪いっていうキーワード良いかもしれないね。

やってみよう

今度は、子供同士でロールプレイをやってみます。

最初は、謙がヨシオさん役、茉莉花がタロウさん役です。後のみんなは見ています。

テストが返ってきました。謙がテストを見て、茉莉花の所に行きました。

謙

このテスト、何で間違ってるんですか?

茉莉花
茉莉花

ハネてないし、閉じてないから✖︎だったんです。

丁寧に書けば、次は100点取れるよ。

謙はテストをギュと握りしめました。

それから深呼吸をして、席に戻りました。

マリコさん
マリコさん

今のロールプレイを見てどう思った?

優也
優也

テストを握りしめてた時は、ヤバイなあって思ったけど、深呼吸をしてたから、大丈夫だなって思ったよ。

茉莉花
茉莉花

グッと我慢してるのが伝わってきたよね。

よく頑張ったと思うわ。

俊哉
俊哉

カーッとなっても、抑えられるなんて、凄いよ。

マリコさん
マリコさん

謙は、どんなこと思ってた?

謙

僕は、さっきの言葉、超カッコ悪いを心の中で何回も繰り返して言ってたんだ。

そしたら、テストのことなんかそんなに大したことじゃないやって思えたんだ。

潤子
潤子

凄ーい!そこまで思えるなんて。

直人
直人

本当にね。今のは良かったと思うな。

そんな風にして、次々に代わりながら、ロールプレイを続けていきました。

最後は、俊哉がヨシオさん役で、潤子がタロウさん役です。

テストが返って来ました。俊哉はテストを持って潤子の所に行きました。

俊哉
俊哉

このテスト100点だと思うんだけど、どこが間違っているんですか?

潤子
潤子

ここのハネとここの閉じるところができていないから✖️になったんです。

丁寧に書いたら今度は100点が取れますよ。

俊哉の顔が、赤くなってきました。

目つきも鋭く、手でテストを握りしめています。

みんなは、ハラハラしながら、俊哉を見ています。

俊哉
俊哉

先生、少しの間、廊下に行っても良いですか?

クールダウンしたいんだ。

潤子
潤子

良いですよ。

クールダウンできたら、戻って来てね。

俊哉は、部屋を出て、廊下に行きました。

そして、うろうろと歩き回りながら、何か言っています。

しばらく歩くと、大きな深呼吸をしてから、教室に戻って席に着きました。

マリコさん
マリコさん

今のロールプレイで気がついたことや分かったことは?

直人
直人

俊哉が爆発寸前だったのが分かったよ。

潤子
潤子

でも、クールダウンしてくるってちゃんと言えたよね。

謙

廊下でうろうろ歩き回りながら、何かブツブツ言ってたよ。

なんて言ってたの?

俊哉
俊哉

俺、カーッとなりそうだから、超カッコ悪いって何回も心の中で言ってたんだ。

呪文みたいに。

そしたら、なんか気持ちが静まってきて、大したことじゃないのにキレるなんてバカバカしくなったんだ。

優也
優也

凄いなあ。

自分でそこまで出来たなんて。

俺なら無理かも。

直人
直人

やっぱり、超カッコ悪いは効くのねえ。

俊哉
俊哉

そうだな。これから使おうと思うよ。

俊哉も優也もニコニコしながら、ガッツポーズをしました。

みんなが笑顔でそれを見ていました。

練習してみよう

「周りの人の気持ちを考えようのカード」を使って練習をします。

色々な場面が書いてあるカードを山札にして置きます。

1人ずつそのカードを引いていって、書いてある内容を読みます。

その時の周りの気持ち、どうすれば良かったかを言います。

俊哉の番です。場面カードにはこう書いてありました。

ゲームをしていました。

A君は負けそうになりました。

そこでA君はゲームをメチャクチャにけちらして、「こんなゲーム面白くない」と言いました。

周りの人の気持ちは?

あなたがA君ならどうしますか?

俊哉
俊哉

うーん、難しいなあ。

これとよく似たことが前にあって、A君とよく似たことをしたんだ。

誰か見てたの?

まず、周りの人の気持ちだけど、多分嫌だなあと思ってるよな。

ゲームがむちゃくちゃになっちゃったし、楽しく遊べないもんな。

人のことだから言えるけど。

俺がA君だったら?

前だったらA君と同じことをしたと思うな。

でも、さっきSSTでやったから、クールダウンして気持ちを鎮めるな。

超カッコ悪いって呪文を言ってさあ。

みんなは、「良いね👍」カードを一斉に出しました。

謙

凄いなあ。

俊哉の言葉とは思えないよ。

完璧!

茉莉花
茉莉花

本当よね。

前はこうしてたけどって所が良いよね。

直人
直人

超カッコ悪いが呪文になったんだね。

これだと覚えやすいから、次の時も使えるさ。

俊哉
俊哉

まあ、多分ね。

でも、大抵の場合は、忘れてまた同じこと繰り返すかも・・・

優也
優也

それでも、10回に1回思い出せば良いじゃない。

それだって進歩だよ。

俊哉
俊哉

そうか、10回に1回ね。

楽勝かも!

俊哉の言葉にみんな大笑いしました。

SST教材

「周りの人の気持ちを考えよう」をご覧になりたい方は→SST周りの人の気持ちを考えよう

「良いね👍カード」をご覧になりたい方はこちらをクリック→いいねカード

振り返り

マリコさん
マリコさん

今日のSSTで、分かったことや、気づいたこと、感想などを発表しましょう。

直人
直人

いつも気にしなかったけど、周りの人の気持ちを考えるって大切だって思った。

謙

そうだよな。

他の人の気持ちなんて、考えたこともなかったけど、これからはちょっと気にするようにしようと思うよ。

優也
優也

まあカーッとなってる時にそれは無理だろうと思うけどな。

俊哉
俊哉

10回に1回だよ!

少しでも気がついたら、気持ちを沈められるかも。

直人
直人

話は違うけどさあ。さっきの場面カード見てて思ったんだけど、僕、クシャミする時、全然手で覆ってなかったよ!

ハックションってやってた。

それって周りの人は嫌だったろうなって今日のSSTでわかったよ!

潤子
潤子

そうよね。

身だしなみって結構大切だよね。

特に女子はよく見てるから怖いよ。

茉莉花
茉莉花

そうそう。

怖いよねえ。

直人
直人

たくさんの場面で気をつけることあったよね。

実際にはまだまだあると思うな。

潤子
潤子

凄い気づきだね!

よく理解してると思うわ。

直人
直人

そんなんでもないよ!

茉莉花
茉莉花

それって照れ笑い?

直人
直人

でへへ!

直人が面白い言い方をしたので、みんなは大笑いしました。

レインボータイム

今日のレインボータイムは、久しぶりにレインボーラーをしました。

レインボーラーというのは、同じ大きさ同じ形の木の板を使って色々な物を作っていく遊びです。

誰でも好きな物を作って良いので、それぞれに分かれて作っています。

レゴ好きの俊哉は、まず線路のような物を作っています。

 

謙

駅も作ろうよ!

街を作るのも良いなあ。

潤子
潤子

そうね。

お城も作っちゃおう!

みんなでワイワイ言いながら作っていきます。

平面的な物を作る子どももいますが、立体的な物を真剣に組み立てる子もいて、とても独創的で面白いです。

始めは、バラバラに作っていましたが、だんだん繋いでいって、最後には街が出来ていました。

みんなでガッツポーズをして、レインボータイムは終わりました。

さよならの時間

俊哉
俊哉

レインボーばあば、今日もありがとう。楽しかった!

俊哉がニコニコして言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

良かったねえ。

また今度ね。

そこへ、レインボーサロンから出て来た俊哉のお母さんが言いました。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

今日もありがとうございました。

レインボーサロンで、他のお母さんたちとおしゃべりして、心が癒されました。

元気を貰いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

それは本当に良かったです。

お母さんも色々大変でしょうが、何か困ったことがあったら、いつでも相談してくださいね。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

優しい心遣い、本当に感謝します。

失礼しますね。

レインボーばあば
レインボーばあば

さようなら。

また今度お会いしましょうね。

俊哉は、お母さんと手を繋いで、駐車場の方に向かっていきました。

俊哉のカーッとなったら周りが見えなくなる特性は、まだまだ続くでしょう。

でも、今回のSSTで、周りの人の気持ちを考えることができるようになったら、少しはクールダウンできるかもしれません。

全然気がつかないことと、意識することは、全く違います。

優也じゃないけど、10回のうち1回でも出来るようになれば、少しずつ成長していくでしょう。

俊哉のお母さんが運転する、赤い車を見ながら、そんなことを考えている、とらネコ先生ことマダムMでした。

とらネコ先生とレインボー塾の子ども達の話はまだまだ続きます。

どんな子どもが出てくるのか?

どんなネコ仲間が登場するのか?

次回のお楽しみです!

 

 

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