第11話 とらネコ先生 探し回る(前編)負けるとすぐキレる俊哉の場合

第10話 とらネコ先生 レインボーばあばに をご覧になりたい方は→こちらをクリック

私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

とらネコ先生とレインボー塾の子供たちアイコン

再びマンション群へ

このところ、小春日和が続いて、昼間は随分暖かく、日向ぼっこに最適な陽気です。

でも、夜になると、どんどん気温が下がって、10度以下になることもあります。

夜の外出は避けたいところですが、そこはやはりネコですから、パトロールに出かけないといけません。ニャオー!寒いよお。

犬はこんな寒い夜にも、元気に散歩をしていますが、ネコはコタツで丸くなるではないけど、なるべく部屋の中でぬくぬくしていたいものです。

今夜は、巨大マンション群が立ち並ぶ素敵な所に来ています。

前回ここを訪れたのは、レインボー塾のキッズSSTに通っている俊介の所に行った時です。

第4話 とらネコ先生 挟まる をご覧になりたい方は→こちらをクリック

この巨大マンション群には、いくつかの公園があります。

何棟ものマンションがコの字に立ち並ぶ、中庭に広い公園があります。

昼間は、遊具で遊ぶ子ども達の歓声が賑やかに響きます。

ベンチではその様子を見ながら、笑顔でおしゃべりをしているお母さん達がいます。

芝生がフカフカな絨毯のように敷き詰められた場所では、家族連れがピクニックをしている時もあります。

でも、今はさすがに誰もいません。

星が瞬く夜ですものね。

みんなおうちに帰ってるわよ。

街路樹に囲まれてひっそりしています。オレンジ色の街灯が当たる所だけ、所々ぼんやりシルエットのように浮かび上がっています。

巨大マンション群のネコ仲間

夜の公園で集まっていたのは、巨大マンション群のネコ達です。

マンチカンのターシャが、可愛い服を着て、ベンチに座っています。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

こんばんは、ターシャ。

可愛い服ね!

ターシャ
ターシャ

こんばんは、マダムM。

服なんか着たくないわよ。

ちゃんと毛皮があるのにね。

どうして私に服を着せたがるのか、気がしれないわ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

まあまあ。可愛いと思って着せているんでしょ?

それだけ愛されてるってことよ。

ターシャ
ターシャ

そうかなあ。

まあ、いつも私を大切にしてくれてるのはわかるけど・・・迷惑な話よね。

 

サブ
サブ

また、服の話かい?

良い加減諦めろよ。

ベンチの上にヒョイっと登って、メインクーンのサブが言いました。

ターシャ
ターシャ

そんなこと言って、あんたが服を着せられたらどうするのよ?サブ。

サブ
サブ

絶対ないね。

この綺麗な毛並みを見てくれ。

シャルタン
シャルタン

毛並みなら負けないわよ。

ペルシャ猫のシャルタンがブランコの影から、しゃなりしゃなり出て来ながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

本当にねえ。

綺麗な毛並みね。

ツヤツヤしてるわ。

シャルタン
シャルタン

ありがとう!マダムM。

あなたもふくよかさが増したわねえ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そ、そうかしら?

最近運動不足かも。

スルー
スルー

いつものことだろ。

敏捷さのかけらもないぜ。

いきなり、ドスドス心に刺さる言葉を投げかけてきたのは、まだら猫のスルーです。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そりゃあ、あんたはどこでもスルーできるスリムさだけどね。

言われたくないことだってあるのよ!

私は怒って、スルーに猫パンチをしようとしたのですが、素早い動きでサッと逃げられてしまいました。

スルー
スルー

あはは、やっぱりね。

スルーは笑いながら、ベンチの下に逃げました。

サブ
サブ

マダムM。

無理だよ。

スルーに勝てるわけがないよ。

サブまで一緒になって笑っています。

レインボー塾の俊哉の話

スルー
スルー

まあまあ、そんなにむくれないで!

ところでさ、俊哉って確かレインボー塾の子どもだったよな?

スルーが、のそのそとベンチの下から這い出してきて言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

俊哉なら、レインボー塾の4年SSTに通っているわよ。

俊哉がどうかしたの?

スルー
スルー

やっぱりそうか。

いやね、昼間公園で遊んでいる時だよ。

小さい子が砂場で山を作っていたんだけど、俊哉がそれを足で潰してしまったんだ。

何故かはわからないんだけど、凄く怒っててさあ。

小さな子はワンワン泣くし、俊哉は他の物も壊すしで大騒ぎになったんだ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

それは大変だったのねえ。

何で俊哉は怒ってたの?

チャミー
チャミー

ああ、それなら、私が説明するわ。

マンションの情報通のチャミーが珍しく顔を見せて言いました。

チャミー
チャミー

俊哉が、横の芝生公園で、友達とサッカーをやっていたのよ。

俊哉がゴールを決めようとした時、6年生の子がブロックして、ゴールできなかったの。

結局そのシュートが決められなかったから、俊哉のチームは負けちゃったんだ。

それで、俊哉がキレて、6年生に殴りかかったんだよね。

でも、6年生の方が強くって、ヒョイと躱された挙句、俊哉がそのまま転んでしまったらしいんだ。

悔しくて、砂場で遊んでいる小さな子の所で、大暴れしたってわけ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ヒエー!それじゃあ、砂場で遊んでいた小さな子は、何の関係もないのに、壊されたってわけ?

チャミー
チャミー

そうよ。

どうも俊哉はカーッとなったら、見境ないみたいだね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ワオ!それで、どうなったの?

チャミー
チャミー

その後のことは、友達ネコに聞いたんだけどさ。

見ていたお母さん達が俊哉を砂場から連れ出して、叱ってたんだって。

シャルタン
シャルタン

そりゃあそうでしょうねえ。

シャルタンがため息をつくように言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

それから、どうなったの?

チャミー
チャミー

友達ネコが言うには、俊哉は真っ赤な顔をして、公園から走り去って行ったんだって。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうなの。さすが、情報通よねえ、チャミーは。

その後、俊哉はどうしたんだろう?

チャミー
チャミー

わからないけど、家には帰ってないみたいだよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

それも、その友達ネコから聞いたの?

チャミー
チャミー

そうよ。その友達ネコが、俊哉の住んでいるマンションにいるから、聞いたんだ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

でも、それは昼間の話よねえ。

もう夜だから、帰っているかもね。

私は、俊哉が帰っててくれることを願って言いました。

とらネコ先生 俊哉を探し回る

サブ
サブ

俊哉の家は、E棟の3階だからなあ。

ちょっと、行けないよなあ。

サブが心配そうに言いました。

ターシャ
ターシャ

そうよね。エレベーターで上らないとねえ。

いつもエレベーターを使っているターシャが言いました。

ターシャ
ターシャ

エレベータを使うのは、コツがいるのよね。

住民の様子をよく観察して、さっと隠れるようにして乗らないとね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

簡単に言うわね。

さすが、いつもエレベーターに乗ってるターシャらしいわ。

隠れるようにねえ。

スルー
スルー

隠れるようにって、そりゃあ無理だよ。

マダムMが隠れられるわけないよ。

その巨体だぜ!

スルーが大笑いしながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

失礼しちゃうわね。

巨体って何よ!

確かに体重は10キロぐらいあるけど、隠れようと思ったらできるはずよ!

サブ
サブ

いやあ、それはかなり無理があるね。

それに、マダムMはここに住んでいるわけじゃないから、不審ネコだよ。

きっと住人も不審に思うよ。

ズケズケとまあ、次から次に!悪気はないんだろうけど、サブの言葉が胸に刺さります。

でも、確かにサブの言う通りです。

エレベーター作戦は諦めた方が良いかも。

さて、どうやって俊哉に会おうかな?と考えていました。

チャミー
チャミー

ねえ、ちょっと危険だけど、マンションの横の木に登って、3階のベランダに飛び乗るのよ。

それから、ベランダの手すりを伝って、俊哉の家のベランダに出るって言うのはどう?

何か嫌な予感。何処かでそれみたいなことをやって、危うく下に落ちる所だった記憶が・・・

第7話 とらネコ先生 飛ぶ をご覧になりたい方は→こちらをクリック

スルー
スルー

ダメダメ。

まず、マダムMが木に登るところから、無理だから。

スルーが笑いながら言いました。

サブ
サブ

そうそう。

その後、木からベランダの手すりに飛び乗るんだろ?

絶対無理だよ。死んじゃうよ。

サブも笑いながら、首を振りました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

何ですって?

出来ないとでも?

曲がりなりにも私はネコよ!

私は憤慨して言いました。

スルー
スルー

出来るわけないじゃん。

どう見たって敏捷さから程遠いのに、そんな危険なこと。

俺だって難しいと思ってるんだから。

スルーが可笑しくてたまらないと言うように、ニヤニヤして言いました。

ターシャ
ターシャ

そうよ、無理することないわよ。

それに、俊哉が家に帰ってるかどうかわからないのに、そんな危険なことしてはダメよ。

それもそうです。まず、俊哉がどこにいるのかを確かめないと。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ねえ、チャミー。

さっき、その友達ネコは、俊哉のマンションに住んでるって言ってなかった?

チャミー
チャミー

そうだけど、もう帰っちゃったかも。

でも、ちょっと行きそうなところがあるから、見てくるね。

もし居たら、聞いてみる。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

わかった。

ありがとね!

チャミーは走って行ってしまいました。

どうしようか?

どちらの選択肢も私には向いてなさそうです。

エレベーターは運任せだし、木登りに至っては、さすがの私もビビります。

サブ
サブ

俺、俊哉のマンションに偵察に行ってくるわ。

もしかしたら、俊哉のマンションの近くの公園にいるかも。

サブがベンチの上からヒラリと飛び降りて、走って公園を出て行きました。

本当にカッコいいわ!って感心している場合じゃないわ。

スルー
スルー

そうだな。

俺は自転車置き場に行って見てくるよ。

俊哉は前にも自転車置き場にいたことがあったからな。

スルーもベンチの下から抜け出して、別の方角に走って行きました。

こっちも随分すばしっこいです。さすがスルー。

シャルタン
シャルタン

みんな、俊哉を心配してくれてるのね。

シャルタンが感心するように言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

本当にね。

口は悪いけど、心は優しいのね!

私は、遠くに見える俊哉のマンションがある辺りを、ぼんやり見ながら言いました。

待っていても仕方ないので、取り敢えず俊哉のマンションまで行ってみることにしました。

俊哉のいるマンションには、自転車置き場があります。

さっき、スルーが、前に自転車置き場で俊哉を見たことがあるって言ってなかった?

私はマンションの横を通って、自転車置き場を覗いて見ました。

もしかしたら、家に帰らずにここで落ち込んでるかも・・・

俊哉の姿はどこにもありません。やっぱり家に帰ってるのかも・・・

その時、スルーがやって来ました。

スルー
スルー

マダムM、探したよ。

俊哉はここにはいないよ!

俊哉のマンションのそばにある公園のベンチに座ってるのを見たよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ありがとう、スルー。

本当に嬉しいわ。

早速俊哉のところに行ってみるね。

スルー
スルー

そうした方が良いよ。

だって、こんな時間だぜ。

うちの人も心配してると思うんだ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうよね。

とにかく行ってみるわ。

スルーは自転車置き場からサーっと走り出ました。

私も、急いで公園に向かいました。

俊哉がいる公園はマンションに向かう道にあります。

私は、反対側から来たので、ベンチを見てなかったのね。

ベンチに来て見たけど、俊哉はいませんでした。

さっきスルーが見た時はいたのに、何処へ行ってしまったのでしょう?

心配で心配で、道を走って探し回りました。

はあはあはあはあ。心臓バクバクだわ。

止まってしまうんじゃないかってぐらいにドックンドックンいってます。

もう1つの公園に行ってみました。

暗くてよく見えないけど、あのベンチの陰にいるのは?

そうです!俊哉の違いありません。

俊哉の住んでいるマンションからは少し離れた公園です。

私はそーっと俊哉の後ろに近づきました。

俊哉はうずくまって、しょんぼりしています。

俊哉の思い

やっぱり、砂場で暴れたことを後悔しているんでしょう。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャーオ。

私はそっと声をかけてみました。

俊哉
俊哉

なんだ、誰かと思ったら、デブネコか。

こんなところで何してるんだ?

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

いきなりデブネコはないでしょう?

あなたを心配して探し回ったのよ!

ニャーニャーニャン。

俊哉
俊哉

ほら、こっちへおいで。

抱っこしてあげような。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

抱っこは好きだけど、重いわよ!

ニャーン、ニャン。

俊哉
俊哉

予想はしてたけど、こんなに重いなんて!

何食ったらこんなにデブるんだよ!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

失礼しちゃうわね!

そんな言い方ないんじゃない?

ニャーン、ニャーン。

俊哉
俊哉

ほら、ここに座ろう。

膝に乗っかるかなあ?

デブだからずり落ちるかも。

俊哉は私を抱いて、ベンチに座りました。そして、私を膝の上に乗せながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ひどいわ!

ちゃんと膝に乗ってるでしょ!ニャーゴ。

私は俊哉の膝の上で丸くなりながら、抗議の声をあげました。

俊哉
俊哉

お前案外あったかいなあ。

俊哉は、私の背中を撫でながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

気持ちいいわあ!

もっと撫でて。ニャーン。

俊哉は、ゆっくりと私の背中から尻尾にかけて撫でながら、しばらく、ぼんやりとした街灯の向こうを眺めていました。

公園は、木々に囲まれ、シーンとして静かです。

時々、木々の葉が、風に吹かれて、さやさやと音を立てています。

このままでは、眠ってしまいそう・・・と思っている時に

俊哉
俊哉

俺、今日も失敗したんだ。

いっつもそうさ。

ヘマやっちゃうんだよな。

サッカーで負けて悔しかったけど、砂場で暴れたのは、本当にまずかった。

小さな子が、怯えたような目で、俺のこと見てた。

街を踏み潰すゴジラだと思ったのかも。

お母さん達は、目を三角にして俺を責めた。

そりゃあそうだよな。

俺、頭が真っ赤になっちまって・・・

お母さんたちが、俺の家に電話して、母ちゃんが怒り狂った。

『もう、お前なんか知らない。』って言われたよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ワオ!それは、大変だったね。

後悔しているんだね。

カーッとなって、見境なく暴れても、怒りが鎮まると、落ち込むんだよね。

可哀想に。ニャーゴ、ニャーゴ、ニャーン。

私は、俊哉の胸に前足を当てて、肉球でモミモミしました。

俊哉
俊哉

くすぐったいなあ。

でも、何か話がわかってるみたいだなあ。

不思議だ。

俊哉は、私の前足をそっと触りながら言いました。

私は、俊哉の胸に頭をすり寄せました。

俊哉の心臓の音が聞こえてきます。ドクドク、ドクドク。

俊哉
俊哉

俺、学校でもいつもヘマしちゃうんだよな。

テストの点数が悪いと、カーッとなって、テストを破いたり・・・

わざと相手が嫌がること言っちまったり・・・

勝負事は勝たないと気が済まないんだ。

だから負けると悔しくて悔しくて・・・

怒りが爆発しちゃうんだよな。

で、自分が嫌になって・・・

こんな俺なんか、母ちゃんも見捨てるよなあ。

父ちゃんが帰ってきたら、また怒られるよなあ。

自分が悪いのは、わかってるんだけど・・・

どうしたらいいのかわからないんだよ!

俊哉は思いを吐き出すように、大声で言いました。

私の頭と肩に、温かいものが・・・俊哉の涙の雫が落ちてきたのです。

私は、俊哉のほっぺを舐め舐めしました。うう塩っぱい!

俊哉
俊哉

お前、慰めてくれてんだろうけど、ザラザラの舌で舐め回すなよ!

痛いよ!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうだった!私猫舌だった。

ネコの舌は、ザラザラしてるんですよね。

いっつも忘れちゃうんだよね。

ごめんね。

ニャーゴ、ニャン。

俊哉
俊哉

俺、こんなに慰められたことないんだよな。

友だちも、俺のことジャイアンって呼ぶんだ。

教室でもよく暴れてるからなあ。

遊び時間も、ちょっとしたことで喧嘩になって、相手を殴っちゃうし・・・

先生も『何度言ったらわかるんだ!』って怒鳴ってばかりだし・・・

理由を聞かれてもどう言っていいのかわからなくて、いつも黙ってるんだ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

可哀想に!

理由なんてなかなか言えないよね。

言葉で伝えるのは難しいよね。

気持ちを抑えるのも苦手だもんね。

自分でもどうしたら良いのかわからないんだよね。

ニャーン、ニャーン、ニャン。

俊哉
俊哉

俺、お母さん達に『周りを見てごらんなさい。みんなあなたのこと、どう思ってるか、わかってる?小さな子をいじめる乱暴な子って思ってるわ。少しは自分の行動に責任を持ったら!もう大きいんだから!』って言われたんだ。

俺、周りがどう思うかなんて考えたこともなかった。

でも、冷静になって考えると、ひどい奴だよなあ、俺って。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうなんだ。

そんなことを言われたんだね。

そりゃあ落ち込むよね。

ニャオーン、ニャン。

俊哉
俊哉

あれっ?もしかして、お前、俺の話わかるの?

何だか聞いてくれてるような気がするよ。

ニャオーンパワーで、何だか元気が出てきたよ。

俊哉はどう言って、私を抱きしめました。

嬉しいけど、苦しいわよ。ムギューってなってるわよねえ。

俊哉
俊哉

お前の身体って、あったかくて、フワフワしてて、気持ちいいなあ。

俊哉は私の脇を持って、お腹に頬を当てながら言いました。

くすぐったいわよ!

俊哉のお母さん

その時です!

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

そこにいるのは、俊哉なの?

心配で探し回ったんだからね!

俊哉のお母さんが、公園の中を走ってやってきました。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

俊哉、良かった。

何処にもいないから、本当に心配したよ。

夕方、あんなことを言ってごめんね。

あれっ?そのぶっとい物は何?

俊哉
俊哉

母ちゃん、心配かけてごめんな。

こいつはデブネコだよ。

何故か俺のそばに居たんだ。

ぶっといけど、あったかいんだ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

全く。

ぶっといだのデブネコだの、散々な言い様ね。

ニャーン、ニャン。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

可愛い声で鳴くのね。

身体は何だけど。

俊哉
俊哉

そうさ。

なんか俺の話を聞いて、返事をしてくれてるように感じるんだ。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

へえ、そうなの?

俊哉の相手をしてくれていたんだね。

ありがとうね。

お母さんはそう言って、私の頭を撫でてくれました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ゴロニャーン。

ニャン。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

まあ、本当にわかってるみたいねえ。

でも、そろそろ家に帰りましょう。

お父さんも帰ってるわよ。

俊哉
俊哉

父ちゃん、怒ってる?

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

はじめは、ちょっと怒ってたけど、『俊哉のやつ、しょうがないなあ』って言ってたよ。

もう怒ってないわ。

心配してたよ。

俊哉
俊哉

そうなんだ。

父ちゃんにも謝らないとなあ。

俊哉のお母さん
俊哉のお母さん

大丈夫よ。

お父さんだって、きっとわかってくれるわよ。

さあ、ネコちゃんとさよならして、帰りましょうね。

俊哉は、そうっと、私を地面に下ろしました。

私は、俊哉の足に頭をこすりつけて、さよならをしました。

俊哉
俊哉

こいつ、まだ一緒に居たいみたいだなあ。

さよなら、デブネコ。

元気でいろよ!

俊哉とお母さんは、マンションの方へ帰って行きました。

お母さんが迎えにきてくれて、本当に良かったわ。

私は、俊哉のいるマンションの横を通りました。

窓の明かりが見えます。

きっと晩御飯を食べているのでしょうね。

そう言えば、お腹が空いたわ!

ダーリン、お待たせ!

私は、急いで、マンション群の端の方にある、A棟の駐車場の方に向かいました。

俊哉を探し回っていたので、随分待たせてしまったわよね、ダーリン。

A棟の駐車場の横の、来客用駐車場で、ダーリンの車を見つけました。

私は、走って、車の方に行きました。

ケンゾウさん(ダーリン)
ケンゾウさん(ダーリン)

ハアハア言ってるよ。

随分遠くまで行ってきたんだね。

お腹がすいたろう?

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャーニャーニャー、ニャーン。

お腹がすいたよお!

ダーリンは私を抱いて、助手席に座らせてくれました。

ケンゾウさん(ダーリン)
ケンゾウさん(ダーリン)

さあ、帰ろうな。

美味しい物、作ってあげるよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

本当に優しいんだから!マイダーリン。

ゴロゴロニャオーン!

それにしても、俊哉は今頃どうしてるかしら?

俊哉の悩みを解決するには、どうしたら良いのかしら?

俊哉の幸せを心から願っている、とらネコ先生ことマダムMでした。

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