第8話 とらネコ先生 濡れる(後編)SST「周りをよく見よう」での涼太

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私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

とらネコ先生とレインボー塾の子供たちアイコン

レインボー塾での涼太

数日後、涼太がレインボー塾にやってきました。

今日は涼太のいる3年生のグループSSTを行う日です。

涼太はお父さんに連れられて来ました。

今日のお父さんは、にこやかで優しい眼差しです。

レインボーばあば
レインボーばあば

こんにちは、涼太。元気?

涼太
涼太

こんにちは、レインボーばあば。元気だよ!

と言いながら、涼太はいつもの弾むような足取りではありません

やはり何か悩んでいるのでしょうか?

お父さんには「レインボーサロン」で他の保護者の方達と待っていてもらうことにしました。

涼太のグループは、悠人(第3話 とらネコ先生 ずり落ちる)渉・勝利・飛馬・匠がいます。

(第3話 とらネコ先生 ずり落ちるをご覧になりたい方は→こちらをクリック))

ウォーミングアップでの出来事

今日のウォーミングアップは、サーキット・トレーニングです。

サーキット・トレーニングというのは、平均台や跳び箱、マット・トランポリンなどをつなぎ合わせてサーキットを作ります。そこを順番に回っていくゲームです。何回でも回ることができます。

今日は跳び箱からスタートして、マットで前回り、平均台を通り越して雲梯を越えて最後はトランポリンでジャンプです♪

涼太はこれが得意です。

跳び箱も難なく飛び越え、マットでは側転🤸‍♀️まで披露して、平均台をスイスイ渡り、雲梯は3段飛ばしで乗り越え、最後のトランポリンでは、ただ飛ぶのではなく、大きく両手両足を開いてジャンプしたり、後ろ向きに倒れて起き上がったり、凄い技を見せていました。

見ているこっちはハラハラドキドキ💓もし怪我をしたらどうしよう。

首の骨が折れたら大変!やめさせようかと思って一歩足を踏み出したら、ジュンヤさんが、そーっと合図をしてきました。

大丈夫だから見守っていてって。

そうよね。作業療法士のジュンヤさんがついていてくれるんだもの。ばあばがしゃしゃり出ることないわね!

何周目かした時、涼太は早く行きたくて、平均台でゆっくり歩いていた渉を突き飛ばしてしまいました。

渉は平均台から落ちて膝を抱えています。

すぐにジュンヤさんが横に行って、怪我がないか確かめました。

幸いウレタンマットの上だったので、怪我はありませんでした。

涼太は気づかずにそのまま進んで、雲梯を終えようとしていました。

ジュンヤさんは、笛を吹いて、トレーニングをストップさせました。

笛が聞こえたらその場で止まるというルールがあるのです。

みんな何事かと訝りながら、その場で止まってサーキットの外に出ました。

涼太はトランポリンを飛んでいましたが、すぐにはやめないで飛び続けています。

タロウさんが、涼太の側に行って、

タロウさん
タロウさん

涼太笛が鳴ってたよ!聞こえなかった?

と声をかけました。

涼太はタロウさんの声で、トランポリンをやめて、出てきました。

ジュンヤさんが、集合の合図をしました。みんなジュンヤさんの所に集合しました。

ジュンヤさんは、

ジュンヤさん
ジュンヤさん

みんなサーキットトレーニングの途中で、笛を吹いて中断させてしまってごめんな。

でも渉が平均台から落ちてしまったので、そのことを話したくて集合をかけたんだ。

飛馬
飛馬

渉は何で平均台から落ちたの?

飛馬が心配そうに聞きました。

渉

それは、涼太が突き飛ばしたからだよ!

凄い勢いで後ろから迫ってきて、僕が恐々わたっているのに、邪魔だって言って突き飛ばしたんだ。

涼太
涼太

えーっ!僕、邪魔だったからどかしたんだよ。

渉

邪魔って、順番を守れよ。僕が前に居ただろ。

涼太
涼太

だってノロノロしていてすごくイライラしたんだよ。

さっさと歩かない渉が悪いよ。

渉

でも、僕平均台の上を歩くのが怖いんだよ。

落ちそうでさ。

怖くてそろりそろりって渡ってたのにひどいよ。

悠人
悠人

そうだよ。

渉いつでも頑張って最後まで歩いてるんだから、少しぐらい待ってやれよ。

飛馬
飛馬

自分が行きたいからって、突き飛ばすのはやりすぎだよ。

みんなが口々に涼太を責め始めました。

涼太
涼太

そんなこと言ったって、サーキットトレーニングはグルグル回るんだから、早く行ってくれないと回れないじゃないか!

初心者コースを別に作ったらどうだ?

匠

みんなでやるから良いんじゃないかな。

みんなで譲り合ってさあ。

それまで黙ってみんなの話を聞いていた匠が言いました。

悠人
悠人

そうだよな。

前に僕も遅いやつがいたら、イライラして、そいつさえいなかったらもっと早く回れるのにって思ってたけど。

今はそれぞれに苦手っていうのがあることがわかったんだ。

だから、みんなで譲り合っていかなきゃなって思う。

悠人が自分を振り返って言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

涼太はどう思うかな?みんなが言ってることわかる?

涼太
涼太

うん。今まで渉のことノロイなあぐらいにしか思ってなかったけど、怖くてゆっくり歩いてたんだなあ。

ごめんよ渉、僕つい調子に乗っちゃうから。

怪我してなくて本当に良かったよ。

渉

まあ良いよ。

涼太はスイスイできるもんなあ。

羨ましいよ。

匠

そうだよ。

涼太が先生になって、平均台の渡り方教えてあげたら良いじゃないか。

それから、2人は平均台のところに行って、渉に涼太がアドバイスしていました。

渉も必死で歩いています。少しずつ早く渡れるようになってきました。

一件落着で良かったこと。私はホッと胸をなでおろしました。

最後はリラクゼーションタイムです。音楽を聞きながら、それぞれリラックスしています。

涼太と渉は近くで寝転んで目をつぶっています。

コミュニケーションタイムでの1コマ

プレイルームから教室に移動して、コミュニケーションタイムを始めました。

今日のコミュニケーションは、サイコロトーキングです。

サイコロを振って、出たところに書いてある質問に答えるゲームです。

みんなで作ったサイコロです。質問もレインボー塾の子ども達で考えました。

順番を決めて、サイコロを振ります。

匠がサイコロを振りました。

質問は、「好きな動物は何ですか?」

匠

僕はジャガーが好きだな。

カッコいいもんな。

次は飛馬です。

質問は、「行ってみたいところはどこですか?」

飛馬
飛馬

僕はアフリカに行ってみたいな。

サバンナとかで野生の動物を見てみたいよ。

象とかキリンとかね。ライオンも見たいなあ。

みんなは、次々に質問に答えていきました。

涼太の番です。涼太がサイコロを振りました。

質問は、「悲しかったことは何ですか?」でした。

涼太
涼太

えーっ!難しいなあ。

悲しかったことなんてないよ!

涼太が急に怒り出したので、みんなはびっくりしました。

タロウさん
タロウさん

そうなんだ。わかった、次は誰の番?

タロウさんは無理に聞き出そうとせずに、さらっと流して次に進もうとしました。

涼太
涼太

でも、本当はあるんだ。っていうか、いつも悲しいことが続いてるかな。

さっきも渉に悪いことしちゃったしね。

悲しいっていうか、自分が嫌になる時が。

悠人
悠人

自分が嫌になる時って、僕もあるよ。

カーッとなってやっちゃった時なんか自分にうんざりするよ。

渉

僕も自分が嫌になる時がいっぱいあるよ。

ヘタレだし何をやってもうまくできないし。

スーパーヒーローからは程遠いもんな。

匠

そんなこと言ったら、みんな何かしら嫌だなって思ってるんじゃないか?

うまくいかないことばかりだし・・・

飛馬
飛馬

そうだよ。悲しいことっていっぱいあると思うよ。

僕はテレビドラマでも悲しくなって泣くことがあるもん。

勝利
勝利

はは、そうなんだ。

ペットの熊五郎(犬)が死んじゃった時は、一週間ぐらいずーっと泣いてたよ。

あの時は本当に悲しかったなあ。

勝利が思い出すように言いました。今にも泣きそうです。

そうよね。ペットが死んじゃった時は本当に辛いよね。ミューニャーン!!天国で楽しく暮らしてね!って思い出にふけってる場合じゃないわ。

次は勝利の番です。

質問は「びっくりした時は?」でした。

勝利
勝利

僕がびっくりした時は、渉が平均台を今までよりズーッと早く歩いて渡っているのをみた時です!

さっき。

まさかまさかの展開。

涼太のコーチが良かったんだね。

涼太
涼太

でへへ、照れるなあ!

涼太のおどけた表情を見て、みんなドッと笑いました。

サイコロの作り方教材→お話サイコロづくり

SST  テーマ 周りをよく見てみよう!

ロールプレイを見よう

ロールプレイ

チャイムがなりました。
スタッフのタロウさんが教室を走っています。
ユウコさんの席で筆箱を落としてしまいました。
でも、タロウさんは気が付きません
そのまま走って、今度はマリコさんにぶつかってしまいました。
マリコさんは倒れて床にしゃがんでいます。
でも、タロウさんは気にしないで走って行きました。

考えてみよう

ヨシオさん
ヨシオさん

みんな今のロールプレイを見て気がついたことや、考えたこと、感想などを発表しよう。

今日のT1のヨシオさんがみんなに聞きました。

渉

チャイムが鳴ったってことは、休み時間になったんだね。

急いで運動場に行こうとしてるんだ。

匠

そうそう、1分でも早く運動場に出ないと、ドッジボールの陣地を取られちゃうからな。

飛馬
飛馬

でも、マリコさんを突き飛ばすのはどうかと思うよ。

悠人
悠人

だけど、急いでたから仕方ないよ。

渉

ユウコさんの筆箱も落としたよ。

ごめんって言って、拾わなくちゃ。

涼太
涼太

そんなことしてたら、遅くなるじゃないか。

匠

マリコさんは倒れて怪我をしてたかもしれないよ。

ちゃんと大丈夫か見てあげないと。

涼太
涼太

でも、行こうとしてた所に突っ立ってるんだから、邪魔だったんだよ。

渉

邪魔って、マリコさんは立ってただけじゃないか。

ぶつからないように走れば良いじゃん。

涼太
涼太

だって急いでたから、そんなの無理だよ。

ヨシオさん
ヨシオさん

なるほどね。

では、筆箱を落とされたユウコさんはどんな気持ちだったと思うかな?

飛馬
飛馬

すごく嫌だと思うよ。

大事な筆箱を落とされて。

もしかしたら壊れてるかも。

涼太
涼太

ちょっと落ちたぐらいで壊れないよ。

それで壊れるなら、安物の筆箱だよ。

勝利
勝利

ひどいなあ。

落とした方が悪いと思うけど。

渉

マリコさんだって、すごく嫌だったと思うよ。

立ってただけなのに突き飛ばされて、ごめんも無しで行っちゃうなんて酷すぎる。

涼太
涼太

だって、勢いよく走ってたら、急には止まれないよ!

渉

そもそも、教室で走ってるのがおかしいよ。

廊下でもそうだけで、走っちゃいけないルールがあるよ。

渉が珍しく怒りながら言いました。さっきのことを思い出してるのかもしれません。

涼太
涼太

そうだけどさ。

早くいかないと、休み時間がもったいないじゃないか。

ドッジボールの陣地だって、高学年に取られちゃうかもしれないし。

そうなったらどうしてくれるんだよ!

飛馬
飛馬

どうしてくれるんだって。

それは仕方ないよ。

周りをよく見てないから、物を落としたり、人にぶつかったりするんだよ!

飛馬が怒って言いました。飛馬にしては珍しいです。何かあったのかもしれません。

勝利
勝利

そうそう。

急いでると、周りなんて全然見えてないよなあ。

僕もよく言われるよ。

周りを見て行動しろって。

勝利も身に覚えがあるのか、神妙な顔で言いました。

涼太
涼太

周り??

そんなの気にしたことなかったよ。

自分が急いでたら、周りなんか見てる余裕ないしな。

そんなの気にしてたら、間に合わないよ。でも・・・

涼太は初めて気がついたようにしばらく考えていました。

悠人
悠人

僕も周りは見えてないかも。

だってよく人にぶつかるし、靴箱でも取ろうとしたら、靴が前の人の頭にぶつかってトラブルになったことあるし・・・

悠人も思い出すように言いました。

匠

それ、僕はすごく苦い経験があるんだ。

廊下を走ってて、1年生の子にぶつかっちゃって、その子鼻血を出して保健室に連れて行かれたんだ。

1年生って小さいから僕がぶつかって吹っ飛んだんだって。

後ろ見てなかったから知らなくて・・・後で先生にメッチャ怒られたし、母さんと一緒に謝りに行ったり・・散々だったよ。

匠が当時を思い出すように言いました。

ヨシオさん
ヨシオさん

色々な経験があるんだね。

それじゃあ、どうしたら良かったと思う?

みんながそれぞれに意見を言ってから、ヨシオさんがおもむろに聞きました。

渉

まず、教室で走らないことだね!

ルールは守らなくちゃ

1番最初に意見を言ったのは渉でした。

匠

そうそう、廊下も走ったらダメだ。

じゃないと、とんでもないことになるよ。

匠が苦笑いをしながら言いました。

ヨシオさん
ヨシオさん

そうだね。

基本のルールは守らないとね。

でも、もし走って筆箱を落としたり、人にぶつかっちゃったりしたら、どうしたら良いかな?

悠人
悠人

そうだな。ブレーキが効いたら、謝るかな?

飛馬
飛馬

ブレーキが効かなかったらどうすんだよ?

ブレーキをかけなくちゃダメだよ。

飛馬が呆れて言いました。

悠人
悠人

やっぱり、やっちゃったことは、謝らないとな

自分のことだけ考えてたもんなあ。

悠人が自分を振り返って言いました。

涼太
涼太

そうだよな。

自分のことだけ考えて

周りに人がいるって思ってもみなかったし・・・とにかく謝るのが先だよな。僕いつもそんなことでしくじってばかりだよ。

給食で牛乳飲んでる時も、いきなり横を向いたら、隣の子の牛乳に当たって、そこらへん中、牛乳だらけになったこともあるんだ。

掃除の時も箒を振り回してて、ガラス割ったし・・・

まあ僕が悪いんだけどね。

涼太がしみじみ思い出すように言いました。

匠

気がついて良かったよ。

周りを気にしないといけないってさ。

なかなかできないと思うけどさ。

涼太
涼太

そうだな。

すぐに忘れちゃうんだよな。

そしてまた繰り返す

いつものパターンだよ。

でも、気がつくのと知らないのでは大きな違いがあるよね。

涼太は、いつも失敗するのは何故なのか少しわかってきたようです。

やってみよう

ヨシオさん
ヨシオさん

今度は自分たちでやってみようか。

走っている子と、筆箱を落とされたりぶつかられたりする子に分かれてロールプレイをしよう。

さっきみんなで考えた方法を使ってやってみて。

涼太と匠がユウコさんとマリコさんの役をしました。

勝利が走っていて、涼太の筆箱を落としました。

勝利
勝利

ごめんな。

筆箱壊れなかった?

涼太
涼太

大丈夫だよ。

でも走らないでくれるかな。

勝利
勝利

うん。わかった。

飛馬が走っていて、匠に当たりました。匠は床にしゃがみこみました。

飛馬
飛馬

おっとごめんな。

前が見えてなかった。大丈夫か?

匠

ちょっと痛かったけど大丈夫だよ。

でも走るなよ。

飛馬
飛馬

うん、そうするよ。

みんなが代わり番こにロールプレイをやりました。

ロールプレイが終わって、

ヨシオさん
ヨシオさん

みんな、ロールプレイをやった感想を発表しようか。

何か意見がある人は?

匠

僕、飛馬が当たってきて初めて、嫌だなあと思ったよ。

1年生の子は本当に怖かったと思う。

その時の気持ちがよくわかったよ。

涼太
涼太

僕も。筆箱を落とされて初めて本当に嫌だなあと思った。

役だから許したけど、本当は勝利のことぶっ飛ばしてやりたかったよ!

もちろんやめたけどな。

勝利
勝利

良かった!

涼太に殴られたら痛いもんなあ。

ふう助かった。

勝利がおどけて言いました。みんな笑ってセーフのポーズをしています。

匠

自分がやられて初めて気づくことがあるよね。

それがわかって本当に良かったよ。

匠が神妙な顔をして、言いました。

涼太
涼太

そうそう。初めて気がつくことだらけだよ。

相手の気持ちってあんまり考えたことないからなあ。

今度から気をつけようっと。

まあ、また忘れるかもだけどな・・

勝利
勝利

良いじゃん、忘れたって。

また思い出せば良いよ。

これからは、心の何処かにあるからさ。

ふっと思い出すよ。

前は全然なかったんだから、凄い進歩だよ。

匠

いよっ!

良いこと言うねえ、勝利。

さすが!

匠が大げさに褒めあげたので、また、みんなで大笑いしました。

SST教材「周りの様子を見てみよう」→SST「周りの様子を見てみよう」

練習してみよう

今日は「周りが見えてない時は?」というお題で、どんな時に周りがよく見えていないかを見つけるゲームをしました。

それぞれのカードに、自分が思う「周りが見えていない状況」を書きます。

たくさん見つけられたら、何枚でも書いて良いです。

以前のことを思い出して、自分はどんな時に失敗したかを参考に書いていきます。

全員が書き終わったら、カードを山札にして、1人ずつめくっていきます。

カードに書いてある状況を読んで、同じことがあった子は自分の体験談を話します。

話したくない時は話さなくて良いです。

失敗例を話して、今度はどうしようかを話します。

わからない時は「ヘルプカード」を出して、「お助けマン」を呼びます。

一緒に解決方法を考えて発表します。

みんなは、その意見が良かったら「良いね👍カード」を出します。

SST教材

周りをよく見てみよう場面カード

いいねカード

ヘルプカード

お助けマンカード

チョコっとアドバイスカード

振り返ってみよう

ヨシオさん
ヨシオさん

きょうのSSTを振り返ってみよう。

どんなことがわかった?

気がついたことや考えたことを言ってみよう。

涼太
涼太

僕は、初めて気がついたことだらけだったよ。

今までうまくいかなかったのは、僕が周りを見てなかったせいだとわかったよ。

匠

僕もそうだな。周りって見えてなかったな。

悠人
悠人

僕はロールプレイをやってみて、相手が嫌な気持ちになるって実感できたよ。

勝利
勝利

そうそう、僕も超嫌だった。これから気をつけようと思ったよ。

渉

僕は気がつかないことって多いなあと思ったよ。

他にも気がついていないことがたくさんあるような気がする。

渉が心配そうに言いました。

匠

良いじゃないか、渉。

その時はその時でまた考えれば良いじゃないか。

失敗を繰り返すことを恐れちゃダメだ

エイエイオー!

悠人
悠人

匠、良いこと言うなあ。

本当に匠?

誰か中に入ってない?

モシモーシ?

悠人がふざけて言うので、またみんなで大爆笑です。

本当にいい子達ですこと。私は見ていて心があったかくなってきました。

レインボータイム

今日のレインボータイムは、輪投げです。

みんなでワイワイ言いながら、楽しくゲームをしていました。

さよならの時間での出来事

みんなで後片付けをして、玄関の方に行きます。

涼太のお父さんが玄関で待っていました。

涼太のお父さん
涼太のお父さん

先生、ちょっと良いかな?

涼太のお父さんが私の近くで小さな声で言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

涼太、お父さんとお話ししてくるから、マリコさんとタロウさんと一緒に待っててくれるかな?

涼太
涼太

うん良いよ。

僕チャンバラしたい。

タロウさんとマリコさんも行こうよ。

涼太はプレイルームに2人と一緒に入っていきました。

私はお父さんと一緒に、レインボーサロン(保護者が待っている部屋です)に入りました。

レインボーばあば
レインボーばあば

何か飲み物を入れましょうか?

私がドリンクバーの方に行こうとすると、

涼太のお父さん
涼太のお父さん

さっき貰ったので良いです。

お父さんはちょっと緊張気味に言いました。

2人でソファーに座って、暫く沈黙が続きました。

私がお父さんを笑顔で見ていると、何かを決心したようにお父さんが話し始めました。

涼太のお父さん
涼太のお父さん

さっきまでここで他の子ども達のお母さんと一緒にいたんです。

俺はこんなだからお母さん達の話を黙って聞いていたんですが・・・

涼太と同じようなことをする子どもがいるようで、そのお母さんはとても悩んでいるようだった。

お母さんは、ついカーッとして手が出そうになるそうだ。

俺その話を聞いてアッ!と思ったんだ

俺は酒を飲むと心のタガが外れちまって、いつもはやらないことまでしちまうんだ

涼太は俺に似てすぐにカーッとなって学校でも大暴れしている。

女房はいつも謝りに行ってペコペコ頭を下げてる

そんな涼太を許せなくてつい大声で怒鳴ったり時には手を出したり・・・

涼太は、頭が良いし、あんなに優しい子どもなのに、俺は、俺は・・・

お父さんは下を向いて肩を震わせました。

レインボーばあば
レインボーばあば

お父さん、涼太はお父さんは優しいって言っていましたよ。

お父さんのことが大好きなんです。

私はお父さんの肩に手を置いて言いました。

涼太のお父さん
涼太のお父さん

あああ。涼太は俺を庇ってそんなことを言ったんだ。

俺は、涼太にも女房にもアキラにも酷いことをしてきたんだ。

わかっているのに、ついつい酒を飲んでしまうんだ。

飲むと自分が抑えられなくなってすぐに手が出ちまうんだ

お父さんは頭を抱え込んで呻くように言いました。

私はお父さんの苦悩がわかるので言葉も出ませんでした。

暫く沈黙が続きました。

お父さんが、キッと顔をあげました。

私の目をじーっと見つめました。

涼太のお父さん
涼太のお父さん

俺はこれから酒を飲まないようにする。

難しいけど、涼太や女房やアキラには絶対に手をあげないことを先生誓うよ。

ここでお母さん達の話を聞けて良かったよ。

同じ思いをしている親がいることもわかったし。

先生ありがとう!

お父さんはスッキリした顔をして、部屋から出ていきました。

涼太は思いっきりチャンバラをして気分良くプレイルームから出てきました。

涼太
涼太

もう終わっちゃったの?

もっとチャンバラやっていたかったな。

タロウさん
タロウさん

それは、もう勘弁な。

涼太強いのなんのって。

マリコさん
マリコさん

そうそう、タロウさん必死で逃げてたもんね。

涼太のお父さん
涼太のお父さん

涼太、楽しかったんだな。

家でもやってみるか?

涼太
涼太

良いの、父ちゃん。

痛くない刀だから大丈夫だよ!

涼太は嬉しそうにお父さんの大きな手を握りました。

涼太
涼太

レインボーばあば、またね!今日は楽しかったよ!

レインボーばあば
レインボーばあば

涼太、さようなら。また今度ね!

涼太はニコニコして、お父さんと手を繋いで、帰って行きました。

 

お父さんがお酒を止められるかどうかは、まだわかりません。

アルコール依存症というのは、根が深い病気です。

でも、お父さんが気づいて意識したことは、大きな1歩だと思います。

お酒を止めなければと本人が強く思うことがとても重要だと思うのです。

涼太はお父さんが大好きです。

きっと家に寄り付かないというお兄さんのアキラ君も、お父さんを許して分かり合える日が来ると思います。

怒りのコントロールは、大人にもいるかもしれません。

涼太の書いたワークシートをお父さんも見てくれたら良いなと思います。

涼太とお父さんが手を繋ぎながら歩いていく姿が遠くに見えます。

何を話しているのでしょうね!

涼太が笑顔で過ごせる毎日だと良いな!と願っている、とらネコ先生ことマダムMでした。

とらネコ先生とレインボー塾の子ども達の話はまだまだ続きます。

どんな子どもが出てくるのか?

どんなネコ仲間が登場するのか?

次回のお楽しみです!

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