SST 他者理解について(教材入り)

周りの人はどう思ってる?

人は何かをする時に、周りの人の目を意識する場合が多いです。

身だしなみもその一種です。

汚れた服を着ていたり、髪をとかずに人前に出ると、不潔な人だとかだらしない人だとか言われることが多いです。

また、癇癪を起こして大声で泣きわめいたり暴言を吐いたり暴力を振るったりすると、周りの人は驚き、警戒し、関わり合いになりたくないと思います。

幼児の頃ならまだ大目に見られますが、小学校に入ってからは、そのようなことは周りの友達から批難される行動となります。

発達障害などで『生き辛さ』を感じている子ども達の中には、周りの目など全く眼中にない子どもが多いです。

自分の言動が、周りにどのように映っているのかを意識することができない場合が多いです。

状況の把握をすることが苦手で、共感することが難しいので、周りの人の感情を推測すること高度なスキルを必要とします。

周りがどう思っているのかなど全く意識の中にありません

心の理論を通過していない子どもは、相手の気持ちを推し量ることが困難です。

自分の周りの人を認識すること自体が難しい場合もあります。

特に絆が深い人には意識が向く場合もありますが、その他の人には関心があまりないのです。

しかし、人間関係を構築するためには、自分の言動が周りの人に与える影響を理解することが必要不可欠です。

特に学校での狭い人間関係の中では、その子の特性とは思われず、自分たちと違うというだけで、排除しようとする傾向が強いです。

これが『いじめ』に繋がって、不登校、引きこもり、ニートの道を歩んでいく子どももいます。

周りの環境を変えるのは難しいです。

理解と協力がないと、なかなかわかってもらえないのが現状です。

だからと言って、特性を変えるのはもっと大変です。

自分を変えろと言われても、人は簡単には変わらないものです。

ですから、どちらも少しずつ変えることが可能であれば変えていく必要があると思います。

発達障害などで『生き辛さ』を感じている子ども達が、周りの人の存在を認識し、他者を理解できるようになると、状況は変わってくるのではないかと考えます。

今まで関心のなかった他者を意識するようにして、行動を少しずつ変えていけば、周りの理解も得やすくなると思います。

相互に歩み寄ることも可能だと考えます。

特性を大切にしながら、他者の理解もできるように支援していくことが大切だと思います。

他者理解には、心の理論を通過していることが必要不可欠です。

共感することが難しい場合は、「相手は嫌だと思っています」というように、相手の気持ちを代弁することも大事です。

「相手はどう思ってると思う?」とよく聞いていますが、相手の思いなど「わからない」ことが多いです。だから返答に困って黙ってしまうのです。

はっきりと言ってあげると、「そうなのか!」初めて気づくことがあります。

相手が怒っていても、何故怒っているのかを理解できない場合もあります。

「あなたが『その髪型変だよ』と言ったから、相手は怒っているんだよ。」と言ってあげると、「僕は本当のことを言っただけだ。」と言うかもしれません。

その時は「本当のことでも、相手にとっては言われたくないこともあるんだよ。」と教えます。

そのようなことが多々あります。

1つの課題がクリアできても、また違う課題ではつまずいてしまう場合が多いです。

繰り返し教えていく必要があります。

テンプレート集を作っていくようなものです。

SSTで他者の気持ちを教える!

SSTでは、自分の行動が他者にどのような影響を与えるのかを教えていきます。

1回のSSTではなく、何回も繰り返し違う場面を設定して教えていく必要があります。

ロールプレイを見よう

スタッフがロールプレイを見せます。

場面

A君が漢字テストをしています。どうしても思い出せない漢字があったので、漢字テストをビリビリに破いて机を倒し、椅子を振り回して怒りました。

ヨシオさんがA君です。マリコさんとジュンヤさんが見ている人です。

ヨシオさんが、みんなと一緒に漢字テストを受けています。
ヨシオさんはどうしても思い出せない漢字があるようで、しきりに首を振りながら考えています。
そのうち、漢字テストの用紙をビリビリに破いて、机を倒し、椅子を振り回します。
マリコさんとジュンヤさんは呆然としてそれを見ていました。
タロウさん
タロウさん

場面を見た感想は?

どんなことに気がついたかな?

思ったことを発表しよう。

子どもA
子ども

ヨシオさんはテストができないからって、怒ったらダメだと思う。

子どもB
子ども

でも、悔しいから仕方ないと思うよ。

僕もそんな時ある。

子どもD
子ども

私も悔しい時あるけど、怒って物に当たったらいけないと思うよ。

子どもC
子ども

きっと気持ちが収まらなかったんだよ。

やり方はともかく・・

タロウさん
タロウさん

ヨシオ君の周りの人はどう思っていると思う?

子どもE
子ども

びっくりしたと思う

子どもB
子ども

なんで?と思った

子どもC
子ども

危ないじゃないかって思ったよ。

物が飛んできたら怪我をする。

子どもA
子ども

迷惑だなって思った。

考えてみよう

タロウさん
タロウさん

A君はどうしたら良かったと思う?

子どもB
子ども

怒らなかったら良かった

子どもA
子ども

悔しいけど我慢する

子どもC
子ども

我慢するなんて無理だよ!

だって腹が立ってるんだもん。

子どもD
子ども

そんな時は、クールダウン。

その場を離れると良いと思うわ。

周りの人の気持ちを考える

A君の周りの人の気持ちがわからない場合は、吹き出しなどで書くワークシートを使います。 

顔を書いて表情を考える吹き出しに言葉を考える

周りの人の気持ちになって考える練習

わからない時は、表情カードから選んだり、気持ちを表す言葉を言ったり、やって見せて自分がどう思ったか考えたりします。

こんな時は、周りの人はどんな気持ちになるかを考えます。

周りの人の気持ちを考慮した上で、A君はどうしたら良かったかを考えます。

その時に、A君の行動が周りの人にとって不快な行動であることを理解できるようにします。

周りの人が嫌な気持ちになったり、心が傷ついたりする場合自分と周りの人とがうまく人間関係を築くことができるかを検討します。

SST教材(ワークシート)

SST「みんなのことも考えよう」

SST「みんなのことも考えよう」2     

やってみよう

ロールプレイをしてみます。

A君の役の人以外は、みんなでA君を見ています。

A君がテストを破って机を倒したり椅子を振り回します。

ユウコさん
ユウコさん

見ていた人は、感想を言いましょう。

子どもE
子ども

やっぱり、いくら腹が立っても、物に当たったらいけないよ。

子どもD
子ども

こわ〜って思った。

子どもB
子ども

なんか、小さな子が癇癪起こしてるみたいだった。

子どもA
子ども

そうだね。

ちょっと引くよね。

子どもB
子ども

周りの目って、こういうことか!

ユウコさん
ユウコさん

それじゃあ、A君がどうしたら良かったのかな?

子どもE
子ども

やっぱり、席を離れたら良いよ。

クールダウンできたら戻って続きをやれば良いよ。

子どもA
子ども

難しいけど、テストを破ったり、椅子や机を滅茶苦茶にするやり方はNGだよね。

子どもD
子ども

そうだね。

できれば、我慢できたら良いよね。

子どもC
子ども

出来るかどうかわかんないや。

でも、周りの人が嫌な思いをしていることはわかったから、努力はすると思う。

A君の役の人は、話し合った結果をやってみます。

ユウコさん
ユウコさん

周りで見ていた人は、感想を言いましょう。

子どもE
子ども

今度は、頑張って我慢していたから良かったね。

子どもD
子ども

でも、黙って出ていくのは、ビックリするよね。

なんか合図があった方が良いかも。

子どもA
子ども

チョッとタイムみたいな?

子どもB
子ども

そうそう、『クールダウン行ってきます!』ってカードを出すのも良いかも。

子どもE
子ども

そしたら、周りの人も、「そうか!」ってわかるよね。

それで、我慢してるんだってことも伝わるよ。

練習してみよう

様々な場面が書いてある『場面カード』を用意します。

場面カードから1枚引いて、場面を読みます。

自分だったらどうするのかを考えてやってみます。

見ていた人が感想を言います。

SST教材(場面カード)

SST周りの人の気持ちを考えよう

周りの人ゲーム

「場面カード」の山札を真ん中に置きます。

1人ずつ場面カードを引いて場面を読みます。

右隣の人にやってもらいます。

見ていた人は、良かったら「👍」カードを出します。

順番にやってみて、「👍」カードをたくさんもらった人の勝ちです。

もしわからない時は、「ヘルプ」カードを出して、「お助けマン」を指名します。

何かアドバイスがある時は、「チョコっとアドバイス」カードを出して、意見を言います。

SST教材(👍カード・ヘルプカード・お助けマンカード・チョコっとアドバイスカード)

いいねカード

ヘルプカード

お助けマンカード

チョコっとアドバイスカード

振り返り

マリコさん
マリコさん

今日の学習「周りの人の気持ちを考えよう」を振り返って、気がついたことやわかったこと、感想などを発表しましょう。

子どもA
子ども

いつもやってることが、周りの人にはどう見えるかちょっとだけわかった。

子どもB
子ども

今まで、周りの人なんか考えたこともなかったけど、今日のSSTで初めてわかった。

子どもD
子ども

周りの人の目って今まで全然意識したことなかった。

でも、これからはちょっと考えようと思う。

子どもB
子ども

僕くしゃみとかする時、手で塞がないでやってることが多いなあ。

周りはバッチイと思ってたんだなあ。

気がつかなかったよ。

子どもA
子ども

そうだよな。

食べる時だって、口の中に物が入ってても喋ってるよな。

これから気をつけるよ。

周りの人の気持ちを考えよう

今回は「周りの人の気持ちを考えよう」というテーマのSSTを紹介しました。

発達障害などで『生き辛さ』を感じている子ども達は、自分の周囲の人の感情を推し量ることが苦手な場合が多いです。

まず、自分と周りの人たちは同じように感情を持っていることを認識することが大切です。

さらに、自分の言動が周りの人たちに影響を与えるということに気づくことも必要です。

負の感情を惹き起こせば、相手は自分とは仲良くなろうとはしないということを教えることも大事です。

人間関係を構築するためには、自分の行動が周りの人にどう受け止められているのかを意識して、周りの人が嫌な思いを抱かないように気をつけることが必要不可欠であることを教えます。

1度での学習では習得することが難しいです。

感情のコントロールができるように指導することも大切です。

「人の目など気にしない」「周りにどう思われても関係ない」と思っている子どもも多いです。

でも、社会では共同で生活しています。

必ず他者が存在して一緒に生活をしているのですから、周りの人に負の感情を抱かせないようにすることも大切だと思います。

友達や周りの人と仲良く生活するためには、相手がどう思うか?

周りの目も意識できるようにすることが必要だと思います。

SST 周りの気持ちを考えよう 教材

それぞれのパートで紹介しましたが、ここでまとめて掲載します。

SST教材(周りの人の気持ちを考えよう)ワークシート

SST「みんなのことも考えよう」

SST「みんなのことも考えよう」2

ワークシートは、スタッフの覚書として使っても良いし、ワークシートとしても使えます。

場面は、ロールプレイでやって見せた方が、わかりやすいです。(文章を読むことに抵抗がある子が多いです)

顔は◯の中に表情を書かせます。🗯の中に、セリフ(心の中の言葉など)を書かせます。

書くことが苦手な子には、無理に書かせる必要はありません。口頭で言ってもらっても良いと思います。

SST 周りの人の気持ちを考えよう 場面カード

SST周りの人の気持ちを考えよう

日常生活の様々な場面が書いてあります。

その時周りの人はどう思ったのか?

どうすれば良かったのか?

を考えさせるカードです。

代表の子どもでロールプレイをしても良いと思います。

実際にやってみると、見ている人はどんな気持ちになるのかを実感できます。

どうすれば良かったのかを考えることがとても大切です。

SST教材 👍カード・ヘルプカード・お助けマンカード・チョコっとアドバイスカード

いいねカード

ヘルプカード

お助けマンカード

チョコっとアドバイスカード

これらのカードは、万能なカードです。

SSTの時でも、ゲームをやっている時でも使えます。

セットで渡しておくと、いつでも活用することができます。

 

SSTのターゲットスキルは、まだまだたくさんあります。

少しずつ紹介できたら良いなと思っています。

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