個別指導の必要性
レインボー塾は、発達障害(神経発達症)の子ども達が通っています。
発達障害(神経発達症)といっても、その特性は広範囲にわたります。
ASD(自閉症スペクトラム)ADHD(注意欠如・多動症)LD(限局性学習症)発達性協調運動症、常同運動症・・・など沢山の種類があります。
また、ASDとADHDを両方持っている子ども、ADHDとLDを併せ持つ子、ADHDが原因で愛着障害になってしまっている子、など1つの障害だけではなく2つ以上の障害を合わせて持っている子も少なくありません。
それぞれの特性に合わせた指導をするためには、集団のSSTだけでは十分ではありません。
LD(限局性学習症)の子どもは、集団生活ではうまく適応できていても、学習で躓きます。
LD(限局性学習症)の子どもは、知的障害や視聴覚に問題がないのに、聞く・読む・書く・計算する・推論するなど、特定の領域で学習の遅れが見られる状態です。
よく喋って、色々知識もあるのに、漢字が書けない、覚えられないなどという特性を持つ子は学習障害の疑いがあります。
知的には問題がないので、通常の学級に在籍しますが、他の子ども達と一緒に同じ学習方法で学習をすると、難しい場合が多くあります。
担任や保護者は、
何でこの子は漢字が書けないんだろう。他のことはよく知っているのに。
学習をサボっているのではないか。もっと練習させなければ。
と思って、同じ漢字を何回も書かせる方法を強要します。
目と手の協調運動が苦手、あるいは眼球運動に問題がある場合は、ノートのマスの中に字を書くことが難しい子どもがいます。
でも、大人から見ると
また、乱暴に字を書いてる。もっと丁寧に書きなさい。
と注意することになります。
やろうと思っていても出来ないものを、非難されて、もっともっとと言われ続けると、自尊感情はどんどん下ります。
勉強なんて嫌いだ。
何をやってもうまく出来ない。
どうせやっても無駄なんだ。
やる気が出ない。
と言う風に意欲がなくなり、ますます学習が進まなくなります。
学習障害(限局性学習症)の子どもは、脳に特性があるため、一般的な学習方法では、学習内容を理解することが難しいのです。
この認識が、残念ながらまだ周知されていない(教師や保護者に)ので、みんなと同じ学習方法を、みんなと同じ教材で強要されている状態なのです。
通常学級に在籍しているから、このような誤解や弊害が及んでいると思います。
特別支援学級に在籍していたら、その子の特性をよく分析して、その子に合った学習方法で、その子に合った教材を使って学習を進めているでしょう。
ですが、現状では特別支援学級の対象にはなれません。
知的には遅れがないし、情緒障害でも自閉症でもないのです。肢体不自由・病虚弱にも当てはまりません。
でも、通級指導などはできると思います。
ですが、本人は苦しんでいても、担任や保護者の理解がないと、教育相談をしたり、発達検査をしたりして、通級指導に繋げることが難しくなります。
LD(限局性学習症)の子どもは、一見普通の子どもに見えます。
よく喋る子などは、頭が良いなあと思われていることさえあります。
目に見えない障害とも言われます。(発達障害の子どもについても同じです)
だから、
あんなに色々なことを知っているのに、何故漢字が書けないんだ?
と疑問に思ってしまいがちです。
一口にLD(限局性学習症)といっても、種類があります。
読字障害(ディスレクシア)
文字を正確に読めない、読めたにしてもタドタドしくて片言のようになってしまいます。
読解力が著しく低いこともあります。
でも、文字で見るのではなくて、同じ内容を耳から聞くとすんなり理解できることがあります。(聴覚優位)
書字表出障害(ディスグラフィア)
「てにおは」が使いこなせない、文字が鏡文字になるなどの特徴があります。
文字の大きさを揃えたり、マスの中に文字を収めることが出来ないこともあります。
算数障害(ディスカリキュリア)
簡単な計算が出来ない。
数字の感覚がうまく掴めない。
数値を覚えるのが苦手。
図形が理解できないなどの特徴があります。
読み書きには全く問題がないのに、計算・推論だけが極端に苦手で、そもそも数字の概念がなかなか身につかないなどの困難を抱えているケースが多く見られます。
LD(限局性学習症)といっても、様々な状態を表し、その支援方法も多岐にわたります。
社会性を培うためには、グループでSSTを行うのが効果的であると思いますが、LD(限局性学習症)の子どもに対しては、個別指導が有効だと考えます。
LD(限局性学習症)だけではなく、言葉の問題(発音・構音障害・吃音など)を抱えている子ども(特に幼児・小学校低学年)も個別指導でなければ、改善していくことは難しいです。
レインボー塾の個別指導スタッフ
レインボー塾では、専門のスタッフが働いています。
言語聴覚士のユウヤさん、元通級指導教室(言語)担当のヒデトシさん、ビジョントレーナーのアケミさんなど、その道のプロが指導に当たります。
言語聴覚士のユウヤです。
主に幼児期から小学校低学年の言語に課題がある子どもを指導しています。
ヒデトシです。元通級指導教室(ことばの教室)を担当していました。
主に言葉の遅れがある子どもの指導をしています。
ビジョントレーナーのアケミです。
主に眼球運動で問題がある子どもの指導をしています。
元進学塾講師のトシカツです。
主に算数障害の子どもの指導をしています。
大学生のヨウコです。大学では心理学を研究しています。
読字障害や書字障害の子どもを指導しています。
この他にも、元特別支援学級の教師だった方や、大学院で特別支援教育を研究している学生が、ボランティアやパートで入っています。
レインボー塾の個別指導へのアプローチ
レインボー塾の個別指導対象の子どもは、幼児(5歳児)、小学校1年生から6年生です。
レインボー塾には、専任のカウンセラーが2人います。
公認心理師のキョウコです。
公認心理師のテツロウです。
入塾への流れ
教育相談
保護者から依頼があった場合、まず教育相談をします。
最近では、インターネットのホームページを見て来られる方が増えています。
教育相談は、カウンセラーと私で行う場合が多いです。
主訴(何で困っているのか?)
家族関係(同居の家族関係)
生育歴(生まれた時の様子・発語・寝返り・歩行・人見知りなど)
学校での様子(人間関係・集団行動・学習・運動など)
保護者の要望(何を願っているのか?どうしてほしいのか?など)
などを聞いていきます。
また、本人が話せる場合は、別室で本人のから話を聞きます。
主訴:どんなことで困っているのか?
学校での様子:学校ではどんなことが楽しくて、どんなことが辛いか?
家庭生活:家庭ではどんな風に過ごしているのか?兄弟関係など
本人の希望:どうしてほしいか?どんな風になりたいのか?・・・など
発達検査
カウンセラーが発達検査をします。
年齢によって、行う検査は様々です。(WISC・新版K式・KーABC・田中ビネー・・・など)
(いくつかの検査を行って、テストバッテリーにかけます。
学校生活を観察に行く場合もあります。(どこに躓きがあるのか?学習方法の不適応はないか)
質問紙で、保護者に答えてもらいます。
結果を分析します。
視覚優位か、聴覚優位か。
眼球運動はどうか?
手先の不器用さ、目と手の協調運動、発達性運動障害の有無なども調査します。
小さな子どもの場合は、絵カードなどを使って発音や構音障害について調べる方法もあります。
カルテ(個別の教育指導計画)の作成
カルテ(個別の教育指導計画)を作成します。
主訴・子どもの特性・長期目標・短期目標・支援方法・教材などを記入していきます。
カウンセラーが中心になって、スタッフと保護者・本人(可能であれば)と一緒に作成していきます。
カルテは適宜更新していきます。(指導を始めてからも本人の状態像に合ったものにしていく必要があります)
指導方法の検討
スタッフ会議で、指導方法及び教材の検討を行います。
カウンセラーが、各種発達検査の結果・分析を説明をします。
カルテを元に、指導方法を話し合います。
LD(限局性学習症)の場合は、読字・書字・算数障害では指導方法が異なります。
同じ書字表出障害でも、音韻処理不全(文字が音と結びつかないなど)視覚情報処理不全(文字の形を認識できないなど)発達性協調運動不全(手先が不器用・マスからはみ出すなど)等原因は様々です。
原因によって、当然指導方法も変わってきます。
ですから、この見極めは非常で重要です。
指導教材の選択
指導方法が決まったら、教材を選択していきます。
例えば、視覚優位の子どもなら、視覚教材が有効でしょう。
聴覚優位の子どもなら、聴覚教材(音声で教材を読んでいるのを聞くなど)が有効です。
眼球運動に問題がある場合や、目と手の協調運動に課題がある場合は、ビジョントレーニングをすることで、改善できることがあります。
その子の特性をよく観察して、適切な教材を使用することが大切です。
中には、タブレットを使うことで、うまくいく場合もあります。
今では、学校の教室でタブレットを使って学習することも少しずつ浸透してきました。
視力に問題がある人が、眼鏡やコンタクトレンズをつけて、視力の問題を解決しているように、書字や読字に問題がある人が、タブレットを使って問題を解決できるのです。
レインボー塾では、1人1台タブレットを用意しています。WIーFIなどのインターネット環境も完備しています。
教室には電子黒板もあり、タブレットで作成しながら電子黒板で一緒に見ることもできます。
必要であれば、タブレットを使っての指導も行っていますが、タブレットに頼ることなく、その子に合った教材を使って指導をしています。
担当者を決める
レインボー塾では、ほぼ同じ学年の子ども(5人)を同じ曜日で指導しています。
個別学習のスタッフは、その子の特性に合わせて指導していきますので、自分の得意な分野を中心に指導していくことが多いです。
例えば、眼球運動に課題があるA君(小学校2年性)は、ビジョントレーナーのアケミさんが担当する方が、専門的知識や技能があるので、指導がうまくいきます。
言語発達に課題があるB君(幼児)は、元通級指導(ことばの教室)担当のヒデトシさんが担当する方が良いでしょう。(発音・構音障害などに専門的な指導が必要です。)
なるべく担当者は、専門の知識や技能が生かされる子どもを指導するのが理想ですが、人数の関係などで、うまくいかない場合もあります。
担当が決まっても、週に1度スタッフ会議を開いて、指導方法の再検討や、教材の開発などを行っています。
個別指導でもSSTを
個別指導でもSSTを行う場合があります。
感情のコントロールができなくて、集団での指導に適応できない子どもには、個別指導でSSTを行います。
絵カードや場面カードを使って行う場合もあります。
ソーシャルストーリーの手法を使う場合もあります。
最近では、VR(ヴァーチャルリアリティー)を使用したSSTも取り入れています。
レインボー塾の教材紹介
レインボー塾の個別指導で使用している教材をいくつか紹介させていただきます。
個別指導 教材
漢字カード
この漢字カードは4枚セットになっています。
1枚目は漢字が書いてあります。
2枚目は、漢字足し算が書いてあります。
3枚目は読み方、4枚目は意味や使い方が書いてあります。
漢字足し算というのは、例えば葉という漢字だと
「草冠➕世➕木」という風に分解できるわけです。(もちろん他の分解方法もあります)
これを、子どもが考えて分解します。自分が覚えやすいように分解していくわけです。
その時に、漢字をよく観察?しなければなりません。
この漢字はどんな部品(彼らの言葉です)で成り立っているのか?
こうゆう風にじっくり漢字と向き合うことで、一本線が抜けてるとか、形は似てるけど違う字になっているとかのミスを防ぐことができます。
部首の名前も一緒に覚えていくと効果的です。
次に漢字の読みを覚えていきます。その時に、漢字をイメージしやすいように写真や絵をつけておきます。
最後に漢字の意味と使い方を見ます。熟語になっているので、それを使った文章を考えることもできます。
漢字カードを使った指導例
マッチングゲーム
漢字カードの「漢字カード」「読み方カード」をバラバラに並べて、マッチングをしていくゲームです。
例
「葉」という漢字カードと「は、よう」という読み方カードをマッチングします。
最初は、漢字カード5組ぐらいから始めて、だんだん枚数を増やしていきます。
慣れてきたら、時間を計ってやっても盛り上がります。
楽しみながら、漢字と読み方を学習することができます。
部首と漢字をマッチングさせるゲームもできます。
部首カードと漢字カードをバラバラにしてマッチングさせても良いし、部首カードだけをバラバラにして、漢字カードを見て、どの部首が隠れているのかを当てるゲームでも良いでしょう。
何回かやるうちに、部首に詳しくなっていきます。(得意なことが増えますね)
熟語で文章を作る
「意味・使い方」カードを使って、簡単な文章を言っていくのも面白いです。
書かせては負担が大きくなるので、辛くなります。口答で良いのです。支援者がホワイトボードに書いても良いです。
例えば「葉」という感じで、「落葉」という熟語について学習する場合、
「落葉」の「落」って落ちるだよね。葉っぱが落ちるって意味だよ。
葉っぱが落ちるのか!見たことがあるよ。ひらひらって落ちてた。
じゃあそれを使って言ってみて。
ひらひらと落葉したってのはどう?
良いんじゃないかな。様子もわかるしね。どこの葉っぱだった?
公園の木から落ちてたよ。
じゃあ、続けて言ってみて。
公園の木から、ひらひら落葉していた。かな?
凄いよ。目に浮かぶようだな。どんな色だった?
そうだな、赤や黄色だったかな。
きれいな色だね。それも付け加えてみてよ。
公園の木から、赤や黄色の葉っぱがひらひらと落葉していた。
完璧だね!パーフェクト!
こんな感じで、本人の言葉からヒントをつけてどんどん文章を広げていくと、知らぬ間に文章を完成させることができます。作文が苦手な子どもにも有効です。
この時、指導者は、子どもの言葉を大事に拾っていきます。
ホワイトボードにイラストを入れながら書いても良いと思います。
個別指導 教材
ひらがなカード
幼児や小学校低学年の子どもに使うひらがなカードです。
「ひらがな」を表に、「ひらがなカード」と書いてあるカードを裏にしてラミネートします。
ひらがなカードを使ってゲームをします。
ひらがなを読もう
最初は、ひらがなを読んでいきます。
イラストが書いてあるので、それをヒントにして読めるようになっていきます。
発音に注意して読む練習をします。
「あひるのあ」「いるかのい」などのように、具体物とつなげて読んでいくと覚えやすいと思います。
ひらがなの言葉作り
ひらがなカードを使って言葉を作っていきます。
最初は、「あ」というカードを見て、あひる・あめ・アイスクリーム・あそび・などのようにあがつく言葉を言っていきます。
慣れてきたら、「あひる」と言いながら、ひらがなカードの「あ」「ひ」「る」をさがして、並べていきます。
指導者が並べたカードを読む練習もします。「あ」「い」「す」「く」「り」「ー」「む」と並べて、読んでいきます。
わからなかったら、ヒントで絵を描いても良いでしょう。
絵と言葉をマッチングさせると覚えやすいです。
「絵カード」と「ひらがなカード」のマッチング
テーブルにひらがなカードをバラバラに置きます。
山札(絵カード)になっているところから1枚引いて表に向けます。
絵カードが何かを質問します。
これなんの絵かな?
これはりんごだよ。
それじゃあ、ひらがなカードからりんごをさがしてみようか?
すぐに探せない場合はヒントを教えます。
りんごの最初の字は?
あっ!わかった。「り」だよ。
それじゃあ、「り」を探してみよう。
このようにして、絵カードに書いてある物を、ひらがなカードの中から探して並べていきます。
絵とひらがなのマッチングをすることで、言葉をイメージすることができるようになります。
ひらがなポーカー
これは、ひらがなになれた子どもがやるゲームです。(小学校中学年以上が良いと思います)
ひらがなカードを山札のように重ねて置きます。
特別の星印が付いているカード(顔カード・ーカードなど)は、別の山札にします。
1人5枚カードを配ります。
手持ちのカードを使って、言葉を考えます。
例
「ひ」「よ」「る」「さ」「ね」のカードだったとします。
「よる」という言葉と「ひるね」という言葉を作ったとします。
2文字は20点、3文字は30点というように、言葉数で点数をつけます。
カードチェンジは2回できます。
☆印カードは2枚まで引くことができます。
言葉を作ってごらん。
「ひるね」だね。
そうだね。それなら30点だね。
あっ!でも「よるひるね」って言葉もできるよ。それに「?マーク」
凄いなあ。それだと60点だ。最高得点だね。
このようにして、持ち札のひらがなを使って言葉を作っていきます。
少し変な言葉を作ったとしてもOKです。
面白い言葉ができることもあります。
楽しみながら言葉を作ることができるようになります。
ひらがなボックス
これも、低学年以上の語彙が増えてきてからするゲームです。
ひらがなカードで、言葉を考えていきますが、しりとりをしていきます。
1人10枚ぐらいひらがなカードを配ります。枚数は子どもの状態に合わせて決めます。
持ち札の中からひらがなを選んで、ボックス(テッシュの空箱など)にカードを入れていきます。
最初に指導者が
いるか
と言いながら、「い」の文字をボックスに入れます。
子どもは「か」から始まる言葉を考えて
かえる
と言いながら「か」の文字を入れます。
持ち札に「か」がない場合は、☆印カード「動物」を使って、
さる
と言いながら「さ」の文字をボックスに入れます。
指導者は、自分の持ち札の中から「る」から始まる言葉を考えて
ルビー
と言いながら「る」の文字をボックスに入れます。
このようにして、順番にカードを入れていって、持ち札がなくなった方が勝ちです。
個別指導では、指導者と子どもの2人でやりますが、このゲームはグループSSTでも使います。
数人でやる場合は、早く言葉を思いついた人がボックスに入れて良いルールになっています。
自分が言おうと思っている時に他の人が言ってしまって言えなかった時にトラブルが起きやすいです。
感情のコントロールを学習する良い機会になります。
また、勝ち負けに拘る子も同様に学習することができます。
今回は、レインボー塾の個別指導について説明しました。
使っている教材のほんの1部を紹介しましたが、この他にもたくさんの教材があります。
タブレットを使った教材も開発しています。
レインボー塾の取り組みはまだまだたくさんあります。
少しずつ紹介していきますね。