思春期って?
思春期になると、子ども達は身体の成長に伴って心も成長します。
身体のは第二次性徴期を迎えます。
思春期の身体の変化
男子は、声変わりをしたり、精通を経験したりします。
女子は、身体が丸みをおびてきて、月経が始まったり、乳房が発達したりして女性的な身体になってきます。
男女共、生殖器の変化を伴い、生殖能力を持つようになります。
身体の変化に心が追いつかない?
男女共、子どもから大人に成長する段階で、大きく変わる身体の変化に対して精神面はまだ未熟で追いつかない状況です。
この身体と精神面のアンバランスが不安や困惑を引き起こします。
自分に起こっている変化についていけないので、大きな不安を抱え込むわけです。
思春期は反抗期?
不安があると、チョットしたことでもビクビクします。
そんな自分が嫌でイライラします。
自分の中の変化を認めたくないと思うかもしれません。
それが他人に向けた反抗という形に表れる場合もあります。
イライラするのは、ホルモンのバランスが一定しないために起こることもあります。
子ども達は性に目覚めたり、異性や同性を意識したりするようになります。
今までとは違った目で、世界を見るようになります。
「自分はいったい何者?」とアイデンティティーの危機を感じることもあるでしょう?
不安やアイデンティティーの危機などを抱えると、心にトゲトゲの鎧をまとって自分を守ろうとします。
それが、反抗という形で表れるのです。
不安定な精神状態になるため、チョッとしたことでイライラします。
イライラが募って感情をコントロールすることが難しくなります。
大人が介入してこようとすると、攻撃をして介入を防ごうとします。
思春期の反抗は成長の証
思春期にイライラして、親や大人に反抗するのは、成長している証拠です。
思春期に性的なものに興味を持ったり、異性や同性に関心を示すのは順調に成長しているからだと思います。
思春期の我が子をもつ親の戸惑い
順調に成長しているからといって、思春期の子どもをもつ親の困惑は尋常ではありません。
今まで素直で明るく育っていた子どもが、突然牙をむき始めるのですから、平和だった家庭に嵐が吹き荒れるようなものです。
何を聞いても「べつに」と答え、何を言っても「関係ないだろ」と言われ、ちょっと説教しようものなら「お前なんか大嫌いだ」と心にグサッとくる言葉を浴びせられ、挙句に物を壊したり大暴れをされてりして、親の精神もボロボロになります。
ついつい親も感情をコントロールできなくなって、普段には絶対言わないことも言ってしまう。
その言葉に傷ついた子どもは、更にエスカレートして収拾がつかないほどの混乱を招いてしまいます。
親子の険悪な空気は、家庭全体を覆い、他の家族も巻き込んで「家庭が崩壊」してしまいかねない状態となる場合もあります。
レインボー塾に通っている子どもの思春期
発達障害などで『生き辛さ』を感じている子ども達にも、第二次性徴期は訪れます。
身体の成長に、心が追いつけない状態も同じように感じています。
元々精神的に不安定で、感情のコントロールが苦手な子ども達にとっては、思春期は更に混乱を招く引き金になります。
感情をコントロールすることが難しいので、更に沸点が低くなり、何が原因なのかわからないまま、暴言や暴力に訴えることが多くなります。
人との関係を築くのが苦手な子どもは、異性に興味を持った時に、異常に相手に接近したり、後を追い回したりして、ストーカー行為に発展しかねない状況になることもあります。
自尊感情が低く、自分に自信がない子どもは「自分なんか消えてしまえば良い」と思い込み、自分を傷つけようとする場合もあります。
第二次性徴期と重なって二次的な障害がある場合は、本人の精神状態は自分でもコントロールできないほど荒れ狂います。
攻撃が自分に向かった場合は、拒食症や過食症、リストカット、薬物摂取・・・などの自傷行為となります。
攻撃が他者に向かった場合は、暴言・暴力、器物破損、万引き、飲酒・喫煙などの犯罪行為に結びつく行為障害になっていきます。
また、最近ではインターネットを使った犯罪、ハッカーになったりSNSで他人を傷つけたりする行為もあります。
思春期の子ども達への対応はデリケート
子ども達が大人になろうとしてもがいている思春期に、大人はどうやって接していったら良いのでしょう?
難しいですよね!
何を言っても剣もホロロで突っかかってきます。
攻撃は最大の防御と思って、必死で抵抗してくるのですから、どうしたら良いのかわからなくなっても仕方がありません。
でも我が子です。
今まで愛情を込めて大切に育ててきた自分の子どもなのですから、きっと分かり合えることがあると信じることです。
まず、自分の子どもは順調に成長していることを喜びましょう。
喜んでなんていられないと思うでしょうね。
他人のことだから、そんな悠長なことを言ってられるんだ!と怒りを感じる方もいらっしゃるでしょう。
でも、自分の子どもが全く成長せず、いつまでも素直で明るかったら、それはそれで心配になるのではないでしょうか?
私は「柳に風」状態で「嵐が過ぎ去るまで待つ」作戦が良いのではないかと思っています。
「何を言っているんだ?」と怪訝な顔をしている人も多いかもしれません。
思春期の子どもが攻撃をしてきた時には「柳に風」状態で攻撃を躱すのです。
感情的にならずに「またやってる。」と思って、スルーするんです。
何に対してもイライラして、反抗的な態度で接してくるので、こちらもつい感情的になって、声を荒げたり、抑え込もうとしたりすることは、返って逆効果です。
彼らの「反抗という怪物」に餌をやっていることになります。
彼らが暴言を吐いたり暴力を振るったりしている時には、そばにいないで、他の仕事をしたりして見て見ぬふりをするのです。
もちろん、危険が及ぶ場合はすぐに止めさせなければいけません。
攻撃が収まって、落ち着いてから、ゆっくり話をします。
どうしたの?何かあった?
これだけ聞きます。
さっき暴れてガラスを割ったことには触れないことです。
話してくれることもあるかもしれませんが、「関係ないだろ」と突っぱねてくることもあるでしょう。
その時に、しつこく話を迫っては喧嘩になってしまいます。
そうなの。相談したいことがあったらいつでも聞くからね。
と言って、その場では追求しない方が良いです。
本人も何故暴れたのかわからずに戸惑っている場合が多いです。
自分がしてしまったことを後悔して、心が傷ついているのです。
そうっとしておくことです。(傷口には触れない方が良いです)
暴れた後は、散らかった部屋をしばらく放っておきます。
もしかしたら、割れたガラスを片付け始めるかもしれません。
もちろん、部屋に籠って出て来ない場合も多いです。
本人が、ガラスを片付けていたら、さりげなく一緒に片付けて、
助かったわ、ありがとう。
と言うと、逃げ出すかもしれませんが、心の中では良かったと思っている場合もあります。
とてもデリケートな問題です。
相手に通じているのかどうかわからない場合が多いです。
でも、わかってくれていると信じて接することが重要です。
「柳に風」と言うのは、相手とガッツリ向き合わないで、見て見ぬ振りをしたり、さりげなく声をかけたりして、柔軟な対応をすることです。
悩みが何かわかっていたら、まだ対処もできるのですが、思春期の悩みは本人もよくわからないモヤモヤしたものが多いです。
本人も「これこれで困っているんだ」と明確に言えないので、ますますイライラが募って、自分でもどうしようもないブラックホールに落ち込んでいるのです。
具体的なことが問題である場合もあります。
その場合は、本人が話をする気になるまで待ちましょう。
こちらから「悩みがあるんでしょう?話してみて」と先に言ってしまうと、逃げてしまいます。
本人がその気になって話してくれた時は、じっくり聴きましょう!
「友達に嫌なことを言われた」とか「テストで思うような点数が取れなかった」とか「相手に振られた」とか、何かわかるような悩みなら、じっくり聴いてあげることです。
途中で口を挟まず、とにかく聴くことです。(傾聴)
話しただけでも気持ちが落ち着くこともあります。
でも、解決策を望んでいる場合は
どうしたいと思う?
と尋ねると良いかもしれません。
本人が自分で考える手助けをするのです。
じっくり話せる機会ができれば少しずつ心を開いてくれるかもしれません。
暴風雨の中には、台風の目があります。
吹き荒れる嵐も通り過ぎれば晴天に恵まれる時もきます。
地味ではありますが、少しずつ話し合う機会をもって、絆を深めていくことが大切です。
大きくなったら、「そんなこともあった。」と思い出すこともあるでしょう。
「そんな先のことなんかわからない。」と言うかもしれません。
思春期の子ども達への接し方で、子どもの将来が変わる?
確かに、思春期の子ども達と向き合うのは本当に大変で、エネルギーをすり減らします。
そして、その時の接し方によっては、いつまでも大人になりきれないで、反抗的な精神が残っている場合もあります。
ですから、思春期の子ども達への接し方は非常に大切なわけです。
レインボー塾の思春期教育は?
小学4年生から小学6年生を対象にした思春期教育は、SSTの中に組み込まれています。
身体の成長を詳しく教えて、自分の身体の変化は自然に起こることだと認識させます。
性に対する関心も取り上げます。
性的なものに興味を持つのは自然なことではありますが、度を超えると心配な状況になることも教えます。
異性への接し方についてもSSTで学習します。
何故なら、彼らは一線を超えてしまいがちで、犯罪に繋がりかねません。
好きな人の家を覗いたり、後をつけたり、思いを伝えようとして行き過ぎた行為をしてしまうことがあります。
そのようなことを未然に防ぐためにもSSTは必要なのです。
中学生にもSSTで思春期教育を!
また、レインボー塾では、小学生を対象にSSTを行なっていますが、卒業生を中心に、中学生に対してSSTをする場合があります。
卒業生の中には、思春期になって苦悩する子ども達がいます。
月に1度、第4土曜日に「中学生コース」を設けています。
卒業生を中心に、その他数名の『生き辛さ』を感じている子ども達が通っています。
SSTの方法は、ソーシャルストーリーやソーシャルナラティブを使います。
ソーシャルナラティブというのは、社会的な関わりや社会的行動に対する適切な反応を、物語を用いて説明したり、教えたりするアプローチ方法です。(マイルズら、2010)
ソーシャルストーリーというのは、社会性に困難のある人に対して、特別に定義された文型によって、その場にふさわしい方法や物事の捉え方を踏まえて、状況や対応方法、その場に応じた考え方を説明する教育技術のことです。(グレイ2006)
ソーシャルナラティブの一種がソーシャルストーリーになります。
ソーシャルナラティブというのは、行動の振り返りに使えます。
*どんなことで困っているのか?(テーマ)
*どんな状況なのか?(状況の把握)
*どんなことを思っているのか?(今の気持ちは?)
*どうしたいと思っているのか?(目標は何か?)
*どうしたら良いと思っているのか?(解決策の模索、対処方法)
*こんなこともあるよ(他者の見方や一般的な対応方法などの助言)
*こうすれば良いんじゃない?(解決策、望ましい対応法)
子どもと一緒に考えていきます。
レインボー塾では、ワークシートを使って行います。
テーマ |
異性への関心 |
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状況 |
好きな子がいるんだけど避けられているように感じる |
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気持ち |
いつも一緒にいたい。避けられていて苦しい。 |
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どうしたい? |
一緒に話をしたり、出かけたりしたい。 |
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どうしたら良い? |
相手に近づきすぎると嫌がられるので、近づき過ぎないようにする。 |
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こんなこともあるよ |
相手にあまり近づきすぎると相手は怖くなって逃げるかもしれない。追い回しすぎるとストーカーだと思われるかもしれない |
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解決策 |
相手に近づきすぎないようにする。 一緒に話をしたいことを伝える。 |
状況・気持ち・どうしたいの項目だけ記入してあるワークシートを無記名でグループに配ります。
誰のワークシートかわからないようにします。
みんなで、1枚ずつワークシートを見ていきます。
解決策に向けて話し合いをしていきます。
誰のかはわからくても、自分も同じような経験がある場合は、真剣に考えます。
アドバイスを求められたら、スタッフが一般的な見方や状況の把握の仕方を説明します。
大切な観点
*自分が何について悩んでいるのかを自覚することができる。
*どういう状況なのかを、客観的に見ることができる。
*解決する方法を模索する中で、一般的なものの見方や状況把握を知ることができる。
*友だちと話し合う中で、自分1人が悩んでいるのではないこと、仲間が支えになってくれることを知ることができる。
*自分たちで解決策に到達することで、達成感を得て、問題解決に向けて自信が生まれる。
*解決策を試して失敗したとしても、次にどうすれば良いのかを考える材料を得ることができる。
*モヤモヤしている感情を理解し、他の人も同じように悩んでいることを知ることで、感情のコントロールがしやすくなる。
思春期の子ども達には、教えることより考えさせることが大切
大人は、子どもには教えることが大事だと思っています。
小さな子どもであれば、教えることも大切です。
でも、思春期の子ども達に、教え込もうとすると、必ず反発します。
「自分の足でしっかり立ちたい」と思っているのに、「こうやったら立てるよ」と言っても「自分でするから良いよ!」と反発するわけです。
「自分の足でしっかり立とう」としているのであれば、見守ることも大切です。
後ろからそーっと見守って、転びそうになったら救いの手を差し伸べてあげたら良いのだと思います。(本人が望めば)
「どうしたら良いと思う?」と聞いて、自分で考えさせることが重要です。
考えるうちに、アドバイスを求めたくなるかもしれません。
その時に、丁寧に話をして、「自分だったらこうする」という意見は控えます。
本人が「こうしようと思うけど、どう思う?」と聞いてくれば、賛意を示しながら「自分だったらこうするかもしれない」と言っても良いかもしれません。
大人の考えを押し付けるようなことがあれば、彼らは敏感に察して、もう話し合いなどしたくないと思ってしまいます。
自分で考えさせて、自分で決めさせます。
決まった解決策が、大人の目から見て失敗しそうだと思っても、先に答えを言っては台無しです。
「こうすれば良いんだ」と決めつけてしまうと、親子関係にヒビが入ります。
やってみてダメだった時は、次の手を一緒に考えれば良いのです。
自分で決めたことで失敗しても、次があること、一緒に考えて支える大人がいること、成功することを願っていることに気づくようにします。
思春期を通り越すのは、崖っぷちを歩いているように危険です。
大人が敵ではなく、見方だと感じて欲しいと願っています。
うまく関係を築いていくには、忍耐もいります。
思春期の我が子を持つ親には、支えが必要です。
レインボー塾の思春期の子どもを持つ保護者支援
レインボー塾に通っている子ども達の保護者は、ただでさえ悩みが尽きない毎日を過ごしています。
ましてや、思春期の子ども相手となると、手の施しようもないほど惨憺たる状況になることが多いです。
第二次性徴期と二次的な問題行動が重なった場合は、辛さは10倍以上にも及びます。
家庭生活は壊されて、どこにも行き場のない怒りが渦巻きます。
レインボー塾では、思春期の子どものSSTをやっている間に、保護者へのカウンセリングを行っています。(グループで)
グループカウンセリングを行うことで、悩みを聞いてくれる他の保護者の支えを得ることができます。
カウンセラーが付いているので、タダの愚痴の言い合いではなくて、精神を落ち着かせるとともに、現状を変えるアドバイスも得ることができます。
子ども達がSSTで、自分の問題と向き合う時間に、保護者達は、グループカウンセリングで、家庭の平和を獲得する方法を考えていくことができるのです。
帰りは親子ともすっきりした顔をして帰っていきます。
今回は、レインボー塾の思春期教育について紹介しました。
子どもも保護者も癒される塾を目指しています。(妄想かもしれません)
レインボー塾では、まだまだたくさんの取り組みを行っています。
少しずつ紹介していきますね。