第2話 とらネコ先生 カムバックをご覧になりたい方は→こちらをクリック
私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!
こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」(通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。
レインボー塾の子ども 悠人
私は住宅地の塀の上を歩いていました。だって私ネコですもの🐈
そりゃあ塀の上に乗っかるのは、ちょっと苦労しましたけどね。何しろ10キロを超える巨体ですからって、なんてこと言わすの!ダイエットしなくちゃ。
塀の上をシャナリシャナリ歩いていると(実際はドタドタ)、何やら聞き捨てならない音が!
シャーシャー、バキバキ、グチャって何事?
下を見ると👀1人の男の子が、棒を振り回しているではありませんか!
道沿いの家の生垣を、なぎ倒しています。
生垣の木はボキボキ折られ、葉っぱが飛び散っています。
本人は顔を真っ赤にして、憤怒の様相です。
チキショウ、チキショウ、ぶっ殺してやる!
何だか物騒な言葉を怒鳴っています。
ヒエー!怖いよお。
えっちょっと待って!
この男の子何処かで会ったような🤭
ワオ!この子レインボー塾の悠人じゃない?
悠人は確かこの辺りの住宅街に住んでいたよね。
小学3年生の悠人は、小柄でちょっと浅黒くて、動くことが大好きな男の子です。
とっても頭が良くて、計算も得意です。
でもジーッとしてることが苦手で、すぐに気が散ってしまうところがあります。
まあカーッとなってやりすぎるところもあったっけ🤭
でもこんなに怒っている悠人を見たことがなかったので、私はビックリしてしまいました。
悠人どうしたの?何があったの?
私は塀の上から話しかけました。
でも!聞こえてくるのは、
ニャーニャニャーンにゃお!
えー🤨まさかの展開って私ネコだった🐈
そりゃそうだよねえ。ネコが「悠人」なんて呼びかけたら、それこそビックリ‼️ですよね。
ウームどうしたもんか?
どうやってアプローチをしよう?考えあぐねていると、
悠人がふと上を見ました。
ジーッと私を見上げています。
「レインボーばあばだよ👵」って言う思いを込めて
ニャーニャニャーン
猫語解読は無理があるよね。
すると悠人が棒を置いて近づいて来ます。
おまえネコ?随分太っちょだなあ。たぬきみたい。
何ですって?太っちょはまあ許せたとしても、タヌキって!そりゃひどすぎる!
決してタヌキさんを嫌ってるわけではないけど、
純粋なネコ🐱をタヌキ呼ばわりされたら、そりゃあ傷つきますよ!
まあ良いか❗️ここは心を広く持って。
私は塀の上から飛び降りました。(ドタ!)
やっぱり身体の重みが・・・
悠人はしゃがんで、私の頭を撫でたり、顎の下をくすぐったりしました。(そこよそこ。ナデナデされるととーっても気持ちいいのよね❣️)
ニャーオゴロゴロ
気持ちいいのか?ゴロゴロ言ってる。それにしてもぶっといなあ。
何食ってんだ?
何って、マイダーリンが作ってくれる美味しい食事よ♪
ちょっと食べすぎることもあるけどね!
悠人は私の脇を抱えて抱き上げようとしました。
すげー重い。本当にデブッチョだなあ!
そう言いながらも何とか抱くことができました。
落っことされたら大変なので、私も必死でしがみつきます。
悠人はソロソロと私を抱いて歩いて行きます。
どこに行くんだろう?このままじゃ私ずり落ちるわ!
悠人は、時々私を抱き直しながら、住宅の端にある神社の階段まで歩いて行きました。
神社は、この住宅街ができる前から坂の上にあって、階段からは住宅が見渡せるようになっています。
お前、重すぎ!ダイエットしたら?何キロあるんだよ?
ブツブツ文句を言いながら階段に座りました。
私は悠人の膝の上に丸くなって座りました。
悠人の膝は小さいので、多分にはみ出してるけどね。
悠人は私の首の下を撫でながら、しばらく黙って住宅の方を見ていました。
ゴロゴロゴロゴロ。
私の意思とは無関係に身体が勝手に反応して、思わず喉を鳴らしてしまいます。
やっぱ気持ちいいんだな。
悠人はちょっと嬉しそうに、はにかんだ笑顔を見せてくれました。
住宅の灯りがオレンジ色に光っています。
一軒一軒家族が楽しい時間を過ごしているのかもしれません。
そろそろ悠人も帰った方が良いんじゃないかなあ、なんて思っていると、
俺さあ、サッカー部、クビだってさ。
ポツリと悠人が呟きました。
えーっ!どういうこと?学校のサッカーってクビになるの?それはビックリ!!
コーチがさあ、俺はチームワークができないから、メンバーに迷惑かけてるって言うんだ。そりゃ勝手にボールを1人で蹴ってパスしなかったのは悪いけど、得点を取ったのは俺だぜ!なのにクビって・・・
なるほど、1人で全部やろうとするからみんなが嫌がってるんだね。
それにさあ、ドッジボールの時だって、俺、絶対真ん中の線を超えて投げてないのに、みんなが線を超えてたからせっかく当てたのに、なしだって言うんだ。そんなのズルイだろ。だから、言ったやつをぶん殴って、ボールを遠くに蹴ってやったのさ。そしたら、先生が、俺が悪いから謝れって。俺悪くないのに。順が鼻血を出したのは確かだけど、あいつが悪いんだから仕方ないじゃないか。
悠人は堰を切ったように次々に話し始めました。
私は悠人の胸にもたれて前足を腕にかけました。
悠人の顔を下から見上げて
ニャーン!
お前、わかってくれてるの?なんか話したいことがいっぱい。
他にもさあ、お前は嘘つきだってみんな言うんだ。嘘なんかついてないのに。遊びにも入れてくれない時があるし、嫌なことばっかり!
そりゃあ大変だよね。みんなに気持ちをわかってもらえないのは辛いよね。
悠人の手をナメナメしました。
お前の舌ってザラザラしてるんだなあ。くすぐったいよ。
悠人はまんざらでもない顔で言いました。
俺、みんなに嫌われてるんだ。俺の味方なんか1人もいない!
父ちゃんは『お前が自分勝手だからいけないんだ』って言うし。
母ちゃんは先生に『ちゃんと家庭で躾けてください』って言われるし。
兄ちゃんは、学校の勉強と塾とサッカーで忙しそうで話を聞いてくれないし。
先生も学校もみんな大っ嫌いだ!
私はドキドキしている悠人の心臓の音を聴きながら、悲しみが伝わってくるのを感じました。どうしたら良いのかなあ?何かできることはあるのかな?
第3話 とらネコ先生 ずり落ちる「後編」をご覧になりたい方は→こちらをクリック