第2話 とらネコ先生 カムバック(前編)の続きです。
第2話 とらネコ先生 カムバック(前編)をご覧になりたい方は→こちらをクリック
私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!
こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」(通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。
とらネコ先生の仲間達 港町のネコ
今夜は月が綺麗。月明かりが静かな海の水面を照らしています。
えーっ!海?
そうなんです。今日はダーリンの車で、港の方にお散歩に来たのです。
漁船がシルエットになって、あちこちに網が干してあります。
魚は落ちてないかしら?
クンクン匂いを嗅ぎながら、堤防の上を歩いていると、向こうから颯爽と歩いてくる茶トラのネコに会いました。
堤防の切れているところを、かっこ良くジャンプして近づいてきました。
おや〜誰かと思えば、太っちょのマダムMじゃないか。ここのところズーッと見なかったから、もう空の上に行っちまったのかと思ったよ。
このネコもミューニャンの知り合いなの?こんな遠くまで来てたの?
驚いて見ていると、干してある網の下から、グレーの薄汚れたネコが出てきました。
ジャガー、久しぶりだなあ。縄張り争いは済んだのか?
ああ、俺には勝てないよ、ためぞうおじさん。それより、この珍しいネコを見てくれよ。なんと!マダムMだぜ。
ためぞうおじさんは、そろりそろりと近づいて、しげしげと私を見ました。
こりゃあたまげた!あの伝説のマダムMじゃないか。ますますふくよかになって、元気だったのか?随分長い間姿を見せなかったなあ。
ちょっと長い旅行に行っていたのよ。ためぞうさんも元気そうね。
私は取り敢えず返事をして、ためぞうさんとジャガーを見ました。
マダムMがカムバックしたんだな。良かった。いつもレインボー塾とやらの子ども達の話をしてくれて、楽しかったからなあ。子どもは嫌いだけど、お前さんの話に出てくる子どもはみんな面白いからなあ。また聞かせてくれよ。
ためぞうおじさんは、網の下から小魚を咥えて行ってしまいました。
俺も一回りパトロールをしてくるよ。マダムMまた今度な。
ジャガーは颯爽と、テトラポットの間を飛びながら行ってしまいました。
ふう。随分遠いところまで友達がいたのねえ。ここでもレインボー塾に通っている子ども達の話をしていたなんてビックリ!!
私は堤防から降りて(ドサッ)小舟をひっくり返して干してあるところまでブラブラ歩いて行きました。潮風が気持ちいい!
港の海は内海なので、波も穏やかです。ゆっくりした波の音を聞いていると眠くなって・・・
ちょっとあんた。そんなとこで寝ていると風邪ひくよ!
大きな声で目が覚めました。
眠い目を開けて見ると、目の前に三毛猫が座って首を傾げていました。私よりはほっそりしてるけど、同じぐらい年をとっているみたい。
なんだ。マダムMじゃないか。随分久しぶりだねえ。元気だったのかい?もうあちらの世界からお迎えが来たんだとばっかり思ってたよ。もうすぐ私も呼ばれそうだけどね。
何を言ってるんだよ。たま姉さん。まだまだしぶとく生きられるよ。毛並みもツヤツヤじゃないか。
そう言って夜の闇より真っ黒なネコが小舟の下から履い出てきました。
ブルーの目、しなやかな動き。カッコ良いネコは港にもいるんだなあと変なところに感心してしまいました。
ヒエー!!マダムMの亡霊かい?えっまさか本物?化け猫並みに太ってるもんなあ。生きてたのか?まさに生きる化石だよなあ。ある意味すごい!
このクロネコ、カッコ良いけど、めちゃくちゃ口が悪いわ。なんてこと言うのよ。化け猫並みに太ってるってどういう意味よ!ひどすぎる。生きた化石はないでしょう。
私はムッとしてクロネコを睨みました。
シャー。それは言い過ぎよ。マダムMが睨んでるじゃないか。早く謝りな!
タマ姉さんがクロネコに猫パンチをするふりをしながら言いました。
ごめん。マダムM。あまりにビックリしたから、思わず・・・
良いのよ。ちょっと長い旅行に行ってたから本当に久しぶり!
またよろしくね!
私は笑顔で言いました。
それにしても、本当に久しぶりのカムバックだね。またレインボー塾の子どもの話聞きたいと思ってたんだ。
シャーは興味深げに私を見ました。
そうね。また今度ね!
そこに正に『お魚くわえた野良猫』って歌の通りに、私と同じキジトラのもっと細いネコが、魚を咥えながら走って通り過ぎようとしました。
鉄!どこでそれ見つけたんだい?教えてくれよ。
シャーが声をかけると、そのネコは魚を落としそうになりながら近づいてきました。
慎重に地面に魚を置いてから、口の周りをペロペロ舐めてこっちを向きました。
シャーじゃないか。たま姉さんもいたのか。おや!これはこれは、伝説のマダムMじゃないか。もうズーッと姿を現さないからとっくに・・・
みんな私は天国に行ってると思っているのね。そりゃあそうよね。実際ミューニャンは天国に旅立ったしね。ミューニャーーン!
鉄!ひどいこと言うんじゃないよ。こうして元気に姿を現してくれたんだからね。見事なカムバックだよ。
たま姉さんが鉄の方を見て言いました。
おかえり、マダムM。この魚はあげるわけにはいかないが、歓迎するぜ。またあの話してくれよな。なんだったか・・・そうそうレインボー塾に来ている子の話さ。
歓迎してくれてありがとう。またよろしくね。
お魚は誰かと分けるの?
ああ、寝ぐらの缶詰工場の裏には、ノラのちびっこ達がいてな。そいつらに持って行ってやる途中なんだ。それじゃ、またな。
鉄は再び魚を咥えて、シッポをピンと立てて、急いで走り去って行きました。
それじゃあ、そろそろ私も行くね。また今度ね。
私は、港のネコ達に別れを告げて、駐車場で待っているだろうダーリンの所に戻って行きました。
ダーリンの車だけ一台ポツンと止まっている駐車場は、昼間は釣りをしたり、新鮮な魚を買いに来たりするお客で賑わっているのだろうけど、今は静かです。
「おかえり。何だか魚の匂いがするなあ。夜の潮風の匂いも。お腹空いたかい?」
ダーリンは私を抱きあげながら言いました。
「ニャーニャーニャオーン。」
ダーリンの胸は暖かで安心できます。ゴロゴロゴロ。気持ちいいなあ!
まだまだミューニャンの仲間達はあちこちにいそうです
それにしても、どこででもレインボー塾の子どもの話をしていたなんてビックリです。
他のネコの仲間については、これから続く「とらネコ先生物語」の中でおいおい出てくると思いますので、楽しみに待っててくださいね!