第7話 とらネコ先生 飛ぶ(前編)女子の人間関係に悩む莉奈の場合

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私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

とらネコ先生とレインボー塾の子供たちアイコン

商店街のネコの仲間達

今夜はお月様が空にぶら下がっているような三日月です。

この頃暗くなるのが早くて、綺麗な夕焼けを見ていたと思ったら、すぐに黄昏時になってしまいます。

私は商店街のシャッターが閉まってしまったアーケードの下を歩いていました。

この商店街は、昔はたくさんのお店が並んで、人も賑わっていました。

商店街主催の夏祭りには、屋台が並び、家族づれの人々が縁日を楽しんでいました。

でも数年前、近くに大型ショッピングモールが出来てからは、人通りも少なくなって、今では数件のお店が細々と営業を続けているのみです。

駄菓子屋さんやコロッケ屋さん、パン屋さん、美容院などが今でも頑張って営業しています。

呉服屋さんや和菓子屋さんも少し前までは開いていたのですが、コロナ禍で営業が難しくなってきて、とうとう先月閉めてしまいました。

パン屋さんは商店街の角にあって、最近では米粉パンや低糖質パンなども売っていて、この頃の健康志向ブームに乗ってお客さんが列をなす勢いです。

 

タバコ屋さんがあった所の横に細い路地があります。

そこを抜けると、商店街の駐車場に出ます。

商店街のねこ達の集会所になっています。

今夜も車の陰にいるいる!こんな時は暗いところがよく見えるネコの目って便利ですよね!

私が近づいて行くと、

マリエ姉さん
マリエ姉さん

あら、マダムM久しぶりねえ。今日は美味しそうなお月様がクロワッサンみたいに空にぶら下がっているわよ。見た?

マリエ姉さんが白い車の下から這い出してきて言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

本当にね。クロワッサンか。上手いこと言うわね。この頃すぐに暗くなってしまうわ。

ショーマン
ショーマン

そりゃ、つるべ落としって言うからなあ。今時の子はつるべなんて、鶴瓶師匠だと思うだろうよ。何のこっちゃってね。

トラックの荷台で背中を舐めながら、ショーマンが言いました。

今時のネコはテレビも見るのかしら?

シロタビ
シロタビ

この商店街もすっかり寂れてしまったなあ。

前は餌がその辺中に転がっていたのに、今じゃ必死で探さないと見つけられないよ。

ぼやきながらやってきたのは、夜の闇よりも黒いのに、足だけ真っ白のシロタビでした。

シロタビと一緒に連れ立ってきたのは、茶トラのチャームです。

チャーム
チャーム

でも、パン屋さんの新しいパンは美味しいよ。あのお店の近くを通るとすごく美味しそうな匂いが漂っていて、食べた気になるもん。

チャームはシロタビに尻尾を振りながら言いました。本当に仲が良い2人じゃなくて2匹です。

ジューン
ジューン

こんばんは、マダムM。いつもに増して・・・元気そうだね。

失礼なことを言いかけて、私に睨まれたので慌てて訂正したのは、サビトラのジューンです。

前に飼っていた飼い主が、6月生まれなのでジューンと名付けたそうです。

でも、飼い主が病気になって入院しなければいけなくなったので、今ではジューンも立派なノラ猫に成長しました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

こんばんは、ジューン。

今夜はどの辺りをパトロールしていたの?

ジューン
ジューン

えーっと。商店街の裏を歩いていたんだ。餌があるかと思ってね。

前はレストランとコンビニの裏に行けばすぐに調達できたんだけどなあ。

今はレストランもコンビニも閉まってるから。

パン屋の裏で良いものを見つけたんだ。

チャーム
チャーム

何を見つけたの?ジューン。私にも分けて!

マリエ姉さん
マリエ姉さん

もう!お行儀が悪い子だね。でっ何を見つけたんだい?

ジューン
ジューン

何って、これだよ。ハムとウインナー、それから卵、凄いお宝だろう!!

チャーム
チャーム

すごい!ワクワクするわ。

ありがとう、ジューン。

シロタビと一緒にいただくね!

シロタビ
シロタビ

ありがとな、ジューン。

チャームあっちの車の下で食べようぜ。

二匹は仲良く連れ立ってワゴン車の下に入っていきました。

ジューン
ジューン

そう言えばマダムM。

パン屋の子供って、レインボー塾に行ってなかったっけ?

ジューンはハムをむしゃむしゃ食べながら言いました。

多少不明瞭でしたが、レインボー塾だけは、はっきり聞こえました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

パン屋さんの子どもなら、5年生の莉奈だと思うわ。莉奈がどうかした?

ジューン
ジューン

そうか、莉奈って5年生なんだ。

いやね、パン屋の裏をウロウロしてたらさ。

あの家って表側はパン屋だけど、裏は家になってるだろ。

部屋の窓から京子が見えたんだよな。

携帯を壁に投げつけて、多分泣いてたと思うんだ。

何か嫌なことがあったんだろうか?

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうなの。それは心配ね。どうしたんだろう?

莉奈はいつもニコニコしてる優しい子なんだけどな。

マリエ姉さん
マリエ姉さん

学校で何かあったんじゃない?

この頃の小学生は携帯電話を持ってるから心配ね。

あれは、悪魔の贈り物だよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

どうしてそう思うの?マリエ姉さん。

マリエ姉さん
マリエ姉さん

だって、あれを見ていて泣いている莉奈を前に見たことあるよ。

お店の裏のベンチでさ。何か嫌なことがあったんだと思うよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そんなことがあったの?

携帯電話って便利だけど、使い方によっては確かに悪魔の贈り物にもなるわね。

ショーマン
ショーマン

全く、人間ってやつは。

くだらないものを持ってるもんだ。

メールっていうのがあるだろ。あれでいろいろ話すわけだけど、相手の顔が見えないから誰と話してるのかまーったくわからないじゃないか。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

よく知ってるわね。ショーマン。ビックリだわ。

何でそんなこと知ってるの?

ショーマン
ショーマン

俺の飼い主にも、子供がいてさ。茉里っていう中学2年生なんだけどな。

これが携帯好きで、1日中携帯とにらめっこさ。

SNSっていうのか。あれで、自分の写真を撮って送ったり、友達とメールしたり、知らない男とチャットで話したり・・・ホントマリエ姉さんが言うように、あれは悪魔の贈り物だな。

だって、誰かわからない奴に自分の写真送ってるんだぜ。

マリエ姉さん
マリエ姉さん

すごい世界だねえ。知らなかった。本当に怖いねえ。

中学生がハマってるんなら、小学生にも影響するだろうね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

本当ね。ショーマン、詳しい説明ありがとう。

さて、莉奈はどうしてるかしら?

何か辛いことがあったんだろうね。

ちょっと行って様子を見てくるわ。

ショーマン
ショーマン

行くんなら、気をつけなよ。

莉奈の部屋の窓には、窓のそばに生えている木の枝に登ってサッシに飛び移るんだよ。

マダムM、その身体じゃ無理だな。木の枝に登って見るだけの方が良いよ。

どうせ太っちょの私には、枝から窓に飛び移るなんて芸当は出来っこないわよね!フン。って何を言ってるの?曲がりなりにも私は猫よ!猫が飛び移れないなんて、猫の風上にも置けないわ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

心配してくれてありがとうね。ショーマン。

だけど私も猫よ!頑張ってみるわ。

ジューン
ジューン

ヤメときなよ。枝から落っこちて怪我でもしたらどうするんだよ!

猫が骨折なんてシャレにもなんないぞ!

ジューンも心配してくれました。ってこれも侮辱じゃない!こうなったら意地でも飛んでやるわ!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ご心配無用!ちゃんと飛んで見せるわよ。

「飛び猫」のようにね!

マリエ姉さん
マリエ姉さん

くれぐれも気をつけておくれよ。

ネコは救急車呼べないんだから。

張り切って怪我をしたんじゃ何にもならないよ!

マリエ姉さんがだめ押しをしてくれました。全くみんな私の能力を軽く見てるわ!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

それじゃあね。行ってくるわ。みんなまたね!

みんなは心配そうに私を見ています。

やっぱり誰の目にも無謀に映るのかしらね?そんなことを考えながら、細い路地を商店街の方に向かっていきました。

商店街を通り抜けて、角にあるパン屋をぐるりと回ると、莉奈の家に着きます。莉奈の家は2階建です。

莉奈の部屋は確か1階だったわよね。木が茂ってるから、まず木に登らないといけません。

そんなあ。木登りなんてもう長いことやってないわ!子猫の時以来よ。あの時はもっとスリムだったし、動きも敏捷だったもの(多分)ヒエー大変だわ。

それでも少しずつ木に登り始めました。何と言っても私は猫よ!しなやかに動くことだってできるはず。

木に登ったら、枝に移動よ。

この枝私が乗っても大丈夫かしら?

ポキっと折れたりしないわよね!

恐る恐る枝にしがみつくようにして進んでいきます。

枝はミシミシ不吉な音を出して揺れています。

キャー怖い!どうしよう?

戻ることもできず、かといって進むことも出来ずに立ち往生をしていると、

ジューン
ジューン

やっぱりな。こんなことだろうと思ったぜ。

その身体でここまで登ってきた努力は認めてやるけどな。

そこから、どうやって窓のサッシに飛び移るつもりなんだよ。

何と!向かいの枝にジューンが軽やかに飛び移りながら言いました。

きっと私のことを心配して来てくれたんでしょう。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

どうやってって。ここまで登るのが必死で、後のことは考えてなかったのよ。どうすれば良いの?

ジューン
ジューン

全く無茶をするなあ。その横に少し長い枝があるだろ?そこに移ってなるべく窓のそばまで行くんだ。できるか?

私は何とかジューンの言っていた枝にしがみつきました。

なるべく窓の近くって、枝は先に行くほど細いのよ!

私の体重で枝がしなってユラユラと揺れています。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ヒエー!どうしよう。

もうこの先には進めないわ!

ここからジャンプするしかないわね。

ジューン
ジューン

やめとけ。ジャンプなんて絶対無理だ。

見てられない。

自分の身体わかってんのか?

相当でぶっちょだぜ!

でぶっちょだって?酷い言いようね。こうなったら、意地でも飛んでやるわ。見てなさい。

 

私は精一杯身体を縮めて、お尻フリフリ。

弾みをつけて窓のサッシに向かって飛びました!

ジャンプは成功よ!ちゃんと飛んでる。

後は窓のサッシに掴まって着地すれば良いだけよ!

見たかジューン。どんなもんだい!って・・・問題発生!

窓のサッシがツルツルしてるって知ってた?滑るのよ。

爪を引っ掛けようとしたけど、漫画のように縦に爪痕を残しながらズルズル滑ってベランダに落ちてしまったんです。

ジューン
ジューン

だから言っただろう。無理だって。怪我はないのか?どこも骨折してないか?

ジューンは軽やかに枝から窓に飛び移って、ベランダに降りてきて言いました。

アイタタ!ちょっと爪が欠けちゃったけど、大したことはないわ。

それより、プライドが大きく傷つきました。だって出来るって思ってたんだもの。

何度も言うけど、曲がりなりにも私はネコよ!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

心配してくれてありがとうね。大丈夫よ!

ジューン
ジューン

それは良かった。

身体に気をつけてくれよ。

歳も考えないとな。

もう若くないんだから無理しないでな。

心配して言ってくれてるのはわかるけど、いちいちグサグサ胸に突き刺さる言葉だこと。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ありがとう、ジューン。またね!

ジューン
ジューン

ああ、またな!

ジューンは颯爽と帰って行きました。やっぱり動きが敏捷です。

ベランダから、どうやって窓まで行こうかと考えていると、

 

莉奈
莉奈

誰か落っこちた?ドサって音がしたけど・・・

窓が開いて、莉奈の心配そうな声が上から降ってきました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

莉奈、私はここよ!ベランダよ!

ニャーンニャン

莉奈
莉奈

ネコなの?まあ驚いた。

なんて大きな猫かしら。

ニャーんって鳴き声が聞こえなかったら、たぬきかと思うわよ。

ちょっと待ってて。

莉奈は一旦窓から離れると部屋の奥に走って行って、しばらくすると玄関から出てきました。

ベランダで寝そべってると(そりゃあ疲れて動くこともできないのよね!)

莉奈
莉奈

猫ちゃん大丈夫?枝から落ちたの?

ドサって音がしてたからゴミかなんかが投げ込まれたんだと思ってた。

怪我してない?

莉奈が心配そうに覗き込んで、私の身体のあちこちを触っています。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

大丈夫よ👌

ニャニャーニャン

莉奈
莉奈

動けるかなあ?

テラスの椅子に座るからね。

抱っこしても大丈夫?

莉奈はそっと私を抱き上げて、テラスの錬鉄製の椅子に座りました。

テラスは板張りになっていて、オシャレな錬鉄製の椅子とテーブルが置いてあるのです。

莉奈
莉奈

こんな身体でどうして木の枝に登ろうなんて考えたの?

全く無茶するんだから。

大怪我をしていたかもしれないわよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

どうしてって、そりゃあ、あなたが心配だったのよ!

だから、決死の覚悟でジャンプしたのよ!

ニャニャニャニャーン。

莉奈
莉奈

でも、無事で良かったわ。

あなた、この辺りでは見かけないネコね。

どこから来たの?

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

レインボー塾のある所からよ。

ダーリンが駐車場まで送ってくれたのよ。

ニャーンニャーン。

莉奈
莉奈

まあ良いわ。

せっかく来てくれたんだから、しばらく一緒にいましょうね。

そう言って莉奈は、私の顎の下をくすぐるように撫でました。

そこよそこ。超気持ちいいの!ゴロゴロゴロゴロ。もっと撫でて!

莉奈
莉奈

まあ、気持ちいいのね。

気に入った?

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そりゃあもう。

ゴロゴロゴロゴロ、ゴロニャーン。

しばらくゴロゴロゴロゴロとなる私の喉の音だけが響き渡りました。

莉奈
莉奈

ねえ、SNSって知ってる?

携帯電話のアプリなんだけど。

 

莉奈がポツリと話し始めました。

莉奈
莉奈

まあ、ネコが知ってるわけないか。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そんなことないよ!

さっきもネコ仲間とその話で盛り上がってたんだから!

ニャオーンニャン。

莉奈
莉奈

私、それですごく悩んでるんだ。

誰かわからないけど、私の悪口を書いて送ってくるの。

絶対学校の友達だと思うんだ。

でも、メールだから、正確には誰かわからないのよ。

今日も私はお高くとまっていて心が冷たいだの、氷の女王だなんて書かれてて。

みんな私を嫌ってるって。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

何てこと!莉奈は心の優しい女の子だよ。

氷の女王なんてひどいじゃない。

しかもみんな嫌ってるなんて。だいたい、みんなって誰よ?

ニャニャニャニャーン!

莉奈
莉奈

学校で女子の仲間に入るのは、とっても大変なの。

トイレに行くのも一緒にいかないと付き合いが悪いって言われるし。

アイドルの話で盛り上がってるけど、私アイドルなんて知らないし。

流行ってる曲や歌手も全然わからないから。

みんなが話してる内容が理解できないのよね。

だから黙ってるとお高くとまってるって言われるし・・・

正直言って私、植物図鑑の方が好きなのよね。

植物の名前を覚えたり、育て方を調べたり、種類が豊富だから飽きないのよね。でも図鑑なんか見てる子いないし・・

莉奈はしょんぼり下を向いて話し続けました。

植物オタクの莉奈は、他の子と趣味や関心が違うのでしょう。

私はそれで良いと思ってるけどね。

実際莉奈は、植物の名前をよく知ってるし、育て方も詳しいので、レインボー塾の野菜畑や花壇についてよくアドバイスをしてくれるんです。

でも、今時の子供たちはネットなどで情報を得るから、図鑑を眺めている莉奈は変わってると思われているのかもしれません。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

あなたは、あなたの好きな事や興味があることをしたら良いと思うわよ。

ニャーンニャーンニャニャーン

莉奈
莉奈

何だか、私の言ってることわかるみたいね。

そんな訳ないのにね。でも答えてくれているような、励ましてくれてるような・・・優しいネコちゃんね。

莉奈は私を胸に抱きながら言いました。私は莉奈の胸に頭をあずけて、精一杯ゴロゴロニャーンをしました。

莉奈
莉奈

何だか気持ちがすっきりしたわ。

本当は明日学校に行くのが嫌だったのよ。

この頃朝になると頭が痛いし、お腹も痛くなるの。

母さんが心配するから、無理して行ってたけどね。

でも、明日は本当に休もうって思ってた。

だってみんなの顔を見るのが怖いし・・・自分だけ浮いてるのも辛いしね。

でも、ネコちゃんのゴロゴロゴロニャーンを聞いていたら、何だか元気になってきた。明日も頑張って学校に行くわね。

莉奈は私をギュッと抱きしめて、辛いのに頑張ろうとする気持ちを話してくれました。

さっきより笑顔になってきたかな?

莉奈のお母さん
莉奈のお母さん

莉奈、ベランダにいるの?もう遅いから部屋に戻りなさいね。風邪ひくわよ。まあ、何を抱いているの?たぬきが出たの?

莉奈
莉奈

違うわよ、母さん。ネコちゃんよ。

ちょっと太ってるけど、ちゃんとニャーって鳴くし。ゴロゴロ言ってるのよ!

莉奈のお母さん
莉奈のお母さん

なんと!驚いたわ。

こんな太ったネコがいるの?

この辺のネコじゃないわね。みんなスリムだもの。

さあさあネコちゃん。おうちに帰りましょうね。

お母さん、それはないわよ。まあ、みんなスリムなのは確かだけどさ。

でも、私だって昔はスリムだったし、大体好き好んでこの姿になってる訳じゃないわよ!

今夜だってスリムだったらもっとスマートに枝から窓に飛び移っていたはずだしね!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャーンニャーンニャオーンニャン。

莉奈のお母さん
莉奈のお母さん

見かけによらず、可愛い声だこと。

迷わないでおうちに帰ってね!

そう言って莉奈から抱きとった私をそーっとベランダの板の間に下ろしました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

それじゃあ、またね、莉奈。レインボー塾で待ってるわ!

ニャオーンニャーニャーニャオーン。

私は、バイバイと手を振っている莉奈と莉奈のお母さんにしっぽでサヨナラをしながらベランダから降りました。

莉奈の家をグルッと回って、すっかり暗くなった商店街を歩きます。

高学年の女子グループの付き合いはいつも大変そうです。

毎年誰かがこんな風にいじめられたり仲間外れになったりします。

発達障害などの「生き辛さ」を感じている、レインボー塾に通っている子ども達は、思春期非常に苦労します。

他の人とは違う興味や関心、感じ方や考え方などが、なかなか許容されません

変わった子として排除されてしまうことが多いです。

最近は携帯電話という新手のいじめの道具が加わったようで、以前には考えられなかった複雑な問題が浮上してきました。

私はダーリンが待っている駐車場に向かいながら、そんなことを考えていました。

駐車場でライトが付いている白い車発見!

 

ケンゾウさん(ダーリン)
ケンゾウさん(ダーリン)

やあ、おかえり。今夜は綺麗な三日月だね。今日は何をしてきたのかな?

ダーリンが私を抱いて、助手席に乗せてくれました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャオーン。愛してるわ!

 

莉奈のように携帯電話などの問題で悩む子どもは少なくないです。

子どもに携帯電話を持たせなければ良いじゃないかと言う人もいるでしょう。

でも、現実として、小学生でも携帯電話を持っている子は多いです。

使い方の問題だと思います。

匿名性をいいことにして、言いたい放題では必ず傷つく子が出てきます。

どうしたら良いのかな?

莉奈の辛さを、少しでも救ってあげることはできないでしょうか?

そんなことを思いながら、窓の外の三日月を眺めている、とらネコ先生ことマダムMでした。

第7話 とらネコ先生 飛ぶ(後編)に続く→こちらをクリック

 

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