第5話 とらネコ先生 驚く(後編)SSTで感情のコントロールを学ぶ徹哉

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私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

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レインボー塾 徹哉のお母さんの話

数日後、レインボー塾に徹哉がやって来ました。

今日は、徹哉のグループ6年生のSSTがある日です。

徹哉はお母さんと来ましたが、目を合わせることなくウエイティングルームに入って行きました。

徹哉のお母さんは、

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

ちょっとお話が・・・SSTの後でも構いません。

と伏し目がちに言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

そうですね。でも、今すぐの方が良いみたいね。

レインボーサロンは他の保護者の方がいらっしゃるから、ダイニングルームに行きましょうか?

スタッフがいるので、SSTは大丈夫よ。

私はお母さんの憔悴しきった様子を見て、早く話を聴く方が良いと判断しました。

私は、スタッフのまりこさんと太郎さんSSTをお願いしてお母さんと一緒に階段を上がりました。

ダイニングルームは2階にあります。

2階は、個別指導の部屋が5つキッチン、ダイニングルーム教材室スタッフルームなどがあります。

キッチンはイベントなどで調理する時に使います。

キッチンの横にダイニングルームがあります。広いテーブルには8人が座れる椅子が用意されています。

食器棚には、お皿やグラスやカップなどが入っていて、調理した後に盛り付けられるようになっています。

レインボーばあば
レインボーばあば

何か飲み物は入りますか?コーヒーか紅茶かハーブティーがありますよ。

私はドリンクバーでハーブティーを入れながら尋ねました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

それじゃあ、ハーブティーをお願いします。

お母さんはか細い声で言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

カモミールティーが気分を落ち着かせてくれます。

私はダイニングテーブルにティーセットを置いて座りました。

レインボーばあば
レインボーばあば

徹哉は元気がないようでしたが、どうしました?

お母さんはカップを見つめながら、ずーっと黙っているので、話しにくいのかもしれないと思って尋ねてみました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

徹哉、先生を殴ってから、学校に行っていないんです。

お母さんはポツリとそれだけを言って、また黙り込んでしまいました。

レインボーばあば
レインボーばあば

先生を殴ったんですか?徹哉が?

私は、本当は知っていたんですが、知らないふりをして驚きました。だって、ネコの時に聞いた話だもの。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

学校に呼び出されて、校長先生に話を聞いたんですが、徹哉が先生を殴ったとしか・・・

何か事情があると思ったんですが、校長先生の話では、徹哉はいつも問題を起こして教師に対しても日頃から反抗的で、暴言や暴力が絶えなかったと・・・

徹哉のせいで学級は乱れていて、授業が成り立たないとか・・・

お母さんは堰を切ったように話し始めました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

父親は、その話を聞いて激怒して、徹哉に酷いことを言ったんです。

そうしたら、徹哉が暴れ出して、自分の部屋の中にある物を次々に壊して、ついに玄関ホールに飾ってある飾り棚までメチャクチャに壊してしまって・・・

父親は、徹哉を施設に預けた方が良いと言うんです。

親では手に負えないからって・・・

お母さんはそう言うと、泣きじゃくってしまいました。

事は深刻です。施設に預けてうまくいくのでしょうか?

お母さんにティッシュの箱を渡してから、私は窓の方に行きました。

窓からは、芝生が植えてある庭が見えます。

今日のウォーミングアップは、外でフリスビードッジをしているようです。

芝生に丸くロープで境目を作って、外野と内野でフリスビーを投げあいます。

フリスビーはスポンジで出来ているので、当たっても痛くありません。

6年生は女子が3人います。チカ・マユミ・スズカです。

男子は、徹哉・ジュンヤ・ショウの3人です。

6人が2対4で外野と内野に分かれてゲームをしています。

スタッフのまりこさんと太郎さんの他に、作業療法士のジュンヤさんも一緒に見守っています。

私は、しばらく窓の外を眺めていました。

お母さんが少し落ち着いてきたので、ダイニングテーブルに戻りました。

レインボーばあば
レインボーばあば

徹哉は何て言っていましたか?

私は穏やかな声でお母さんに尋ねました。

お母さんは、目を真っ赤に泣き腫らしてこちらを見ました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

徹哉は、先生に『お前はこのクラスをメチャクチャにした元凶だ。クラスから消えろ』と言われたから、カーッとなって殴ったと言っています。」

レインボーばあば
レインボーばあば

先生がそんなことを・・・

私が驚くと(モチロン徹哉に聞いて知っていたんだけどね。何しろネコだったから・・・)

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

徹哉の話は本当だと思います。

徹哉が学校に行かないものですから、友達が毎日学校の帰りに家に寄ってくれるんです。

その友達の話では、先生は授業ができない状態だそうです。

みんながおしゃべりをして、先生の話を聞かないとか。

先生が注意しても反抗的な態度でワザと大声で話をしたり、教室を歩き回ったりしているそうです。

徹哉だけではないそうで、みんなが先生を嫌ってやっているそうです。

でも先生は、クラスがこうなったのは、徹哉がみんなを扇動しているせいだと思っているそうで。

だから、あの日先生は『お前はクラスの元凶だ。クラスから消えてしまえ。』と言ったのも事実なんだそうです。

徹哉はあんな性格ですから、カーッとなって手が出たのもわかるような気がします。

決して良いことではないけど、そんなことを言われたら、怒って当然だと思うんです。

ですが、学校側は、徹哉の暴力だけを取り上げて、その原因は全く考慮に入れようとしません。

このままでは、徹哉は学校に行けないし、主人は施設に入れるって言うし・・・どうしたら良いのか途方に暮れています。」

私は涙でいっぱいのお母さんの目を見つめました。

レインボーばあば
レインボーばあば

ご主人には、その話をしたんですか?徹哉が暴力を振るった原因の話です。

お母さんはティッシュで涙を拭きながら首を振りました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

それが、徹哉が家で大暴れした時から、話を聞こうとしないんです。

主人は弁護士をしています。

息子が不良になったら仕事にも影響が出ると言ってます。

頭から徹哉が悪いと決めつけているんです。

私の言葉なんて耳に届いていないように思います。

お母さんは、下を向いて唇を噛み締めています。

夫婦で話し合えないことがどんなに辛いことか!

意見の違いがあっても、とことん話し合える関係であれば、一時は喧嘩みたいになっても、最後には解り合えるものです。

でも、話ができない状態では、進展がありません。

聞く耳を持たなければ、お互いに信頼して本音が言える関係にはなりません。

お母さんはとても辛い思いをして、今日まで頑張ってきたんだなあと心から思いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

お母さん、辛かったですね。1人で悩んでいらっしゃったのですね。

どうしたら良いか一緒に考えましょうね。

私はお母さんの手に手を重ねて言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

まず、ご主人と話をしなければいけませんね。もし良かったら私がお話しますよ。

私はお母さんの手を見つめながら言いました。

お母さんがハッと顔を上げました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

主人が聞く気になるかどうかわかりません。あの子のことはもう諦めているみたいなんです。

お母さんは自信なさげに言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

一人っ子の息子さんを諦めるなんて、そんなことできるのでしょうか

どんなに難しい問題があったとしても、我が子なんですから・・・

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

でも主人は『もうあの子は自分たちの手に負えない子どもになっている』って言ってました。

レインボーばあば
レインボーばあば

今はそう思えるかもしれませんが、だからこそ今が大事だと思いますよ。

徹哉は小さい頃から人に責められて苦しい毎日を過ごしてきたんです。

何をしても、お前が悪いと言われ続けていれば、どんな子だって落ち込みますよ。

自尊感情がズタズタになって、そういう弱いところを守るために、心にトゲトゲの鎧を着けているんです。

だから反抗的になったり、攻撃的になったりしていると思います。

苦しくて辛いから、大人を信頼できないんです。

だからこそ、徹哉の話を聴いて気持ちに寄り添う味方が必要だと思いますよ。

お母さんが、あの子の気持ちを分かってくれているではないですか

お母さんがいるからあの子も救われるんだと思いますよ

お母さんは大きく目を見開き、ポロポロと涙を流しました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

あの子は本当はとても優しい子なんです。

近所の小さな子どもたちとも一緒に遊んであげたり、家事を手伝ってくれたり、父親が不在がちなので、本当に助かっているんです。」

お母さんは少し明るい声で嬉しそうに話してくれました。

レインボーばあば
レインボーばあば

そうですよね。私もそう思いますよ。

本来の徹哉が今は少し隠れているんですよ。

でも、毎日来てくれる友達は、本当に徹哉のことが好きなんだと思いますよ。

徹哉が優しい子なのを知っているんですよ。

お母さんはウンウンと頷きながら、ティッシュで涙を拭いていました。

しばらくお母さんは窓の方を見ていました。

私も黙って窓の景色を見ていました。

木々が2階にも伸びていて、緑の葉が陽の光を浴びて輝いています。

お母さんが何かを決意したようなキリッとした目で言いました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

私、主人ともう一度話をしてみます。

今度はもっと私の意見を聞いてもらうように努力します。

学校の先生たちとも、もう一度話し合ってみます。

このままじゃ、学校に行かないまま卒業なんてことになってしまいます。

施設に入れるなんて冗談じゃない!

私がお腹を痛めて産んだ、たった1人の息子です。

命を懸けてでも守ってみせます。

私は、凄く勇ましくなったお母さんを、呆然と見つめていました。

何が彼女を変えたのか全くわかりませんが、今のお母さんは自信に満ちています。

徹哉を思う気持ちが、お母さんを強くしたのかもしれません。

1階に降りて、お母さんはレインボーサロンに入って行きました。

レインボーサロンは保護者の憩いの場

6年生の保護者たちは、それぞれに悩みを抱えていますが、今ではみんなとても仲が良いです。

悩みがあれば、みんなで一緒に考えて、解決の方法を見つけようとして話し合います。

色々な経験をしてきた保護者です。

学校とのトラブルや担任とのいざこざや、親戚とのバトルなど、辛酸を舐めてきた、つわものです。

きっと徹哉のお母さんにも良いアドバイスをしてくれるものと信じています。

レインボー塾 SSTでの徹哉

私はSSTをやっている教室に入って行きました。

今日のSSTのテーマは『怒りのコントロール』です。

丁度、ロールプレイが終わって、みんなでどうやったら怒りをコントロールできるのかを話し合っているところでした。

私はいつものように後ろの方で見ていました。

私はSSTには直接参加せずに、オブザーバーとして観察しています。

考えてみよう

太郎さんがリーダーをしています。

タロウさん
タロウさん

どうしたら怒りをコントロールできると思う?

徹哉
徹哉

そんなの無理だよ。カーッとなったら頭が真っ赤になって突っ走ってしまうんだもん。

徹哉が当然のことのように言いました。

翔

それで失敗するんだよね。俺も

翔がデヘヘと笑いながら言いました。

千佳
千佳

笑ってる場合じゃないでしょ。ショウは失敗するって言うけど、その後どうしてるの?

千佳が呆れ顔で尋ねました。

翔

そうだな。大抵は俺が怒られて、またキレて、また怒られて、またキレてってこんな感じ。

鈴香
鈴香

本当にしょうがないねえ。キリがないじゃない。怒られないためにも怒コン(怒りのコントロール)できるようになっておいた方が良いんじゃない。

鈴香が千佳と真弓と顔を合わせながら言いました。

潤也
潤也

俺もそう思う。結局ブチ切れても、最終的には自分が損するわけだから、キレない方法を身につけた方がだと思うな。

潤也が落ち着いた声で言いました。

潤也は翔や徹哉と違って、感情を表に出さないタイプなのです。

怒りもカーッとなることはなく、フツフツとたぎらせるような形で現れます。

それはそれで心配ではありますが。

今日のテーマを客観的に見ることができる子どもです。

徹哉
徹哉

俺はいつもキレてばかりだな。この前も家で暴れてガラスを粉々にしたし。

徹哉が少しションボリして言いました。

翔

そりゃーやっちまったなあ。後でガラスを片付けるの大変だったろう。

ショウは同情するように言いました。

あんた、気にするのそこ?私は内心呆れていましたが、後ろで静かに見ていました。

千佳
千佳

やっぱり怒コンが大事だよ。特に徹哉にはさあ。

チカがサバサバ言いました。

徹哉
徹哉

そうだな、俺も内心もうヤバイと思ってるんだよな。

徹哉が下を向いて言いました。

千佳
千佳

私は、落書き帳に嫌なことを書いて、その上から鉛筆で塗りつぶしていくの。ページが真っ黒になるまで塗り続けるの。

翔

うわーなんか怖~。

ショウが大げさな声を上げて怖いジェスチャーをしたので、みんなが笑いました。

鈴香
鈴香

そんなに怖くないわよ。私はとにかく電車に乗りまくるな。地下鉄にも色々あるからね。

さすが鉄女の鈴香です。電車大好きっ子なので、駅名から路線図までみんな頭に入っています。

真弓
真弓

私は世界史の本を見るかな?無いときは、歴史上の人物を思い浮かべるの。アレキサンダー大王とかクレオパトラとかね。そうすると気持ちが収まって、大したことじゃなく思えるの。

歴女の真弓がうっとりした顔で言いました。

タロウさん
タロウさん

良いねえ。他にないかな?

太郎さんがホワイトボードに書きながら言いました。

潤也
潤也

俺は、深呼吸するな。リラックスできるしね。

潤也が深呼吸をしてみせました。

タロウさん
タロウさん

それも良いねえ。他にはない?自分だけのとっておきを言ってくれたら嬉しいな。

太郎さんがみんなを見渡して言いました。

翔

俺は、とにかくそこから離れるようにしてるな。

翔が今度は真面目な顔で言いました。

翔

徹哉はどうしてる?

ショウが聞きました。

徹哉
徹哉

そうだな、今まであんまり考えたことなかったな。

俺もその場を離れれば良かったんだな。

深呼吸して気持ちを落ち着かせていれば、あんなことしなかったかもしれない・・・

徹哉は何かを思い浮かべているような、遠くを見る目で答えました。

翔

おーい徹哉。どこへ行っちゃったんだ?帰ってこーい。

翔が徹哉の目の前で手をヒラヒラさせて言いました。

徹哉
徹哉

真剣に怒コンするよ!どうしたら良いのか教えてよ!

徹哉がキッパリと気持ちを決めたように言いました。

タロウさん
タロウさん

どんな方法だって良いんだ。

自分の心の中にゲームのコントローラーのような物をイメージしてみて。

怒りを感じた時に、そのコントローラーを使って怒りを鎮めるんだ

自分が深呼吸が良いと思えば、それがコントローラーになる。

その場を離れるのが良いと思えば、それもコントローラーなんだ。

自分に合った方法を考えて欲しい。

ウォーミングアップの最後にリラクゼーションをやってるだろ?

あれだってコントローラーになるよ。

太郎さんが色々な方法を説明しています。

マリコさんがそれをホワイトボードに書き出しています。

タロウさん
タロウさん

大事なのは、自分に合った方法という所だよ。

太郎さんが赤線を引きながら言いました。

まりこさんがワークシートを配りました。

マリコさん
マリコさん

これに、自分に合ったコントローラーを書いてね。

たくさん見つけてね。

怒りを感じるのは、色々な場面があるから、美味しいものを食べるって思っても、学校だとできないでしょ?

だから、どんな場面でも使えるように、たくさん見つけてほしいの。

まりこさんは、みんなが書いているのを見ながら言いました。

タロウさん
タロウさん

書けたら、1つで良いからみんなにも教えてあげて。

太郎さんが言いました。

マリコさん
マリコさん

みんなは友達のコントローラーを参考にしても良いけど、自分に合っているかどうか考えてね

まりこさんが付け足しました。

SST心のコントローラー

やってみよう

それぞれの心のコントローラーを発表した後、ゲームをしました。

怒りを感じる場面が書いてある場面カードを読んで、その時にどうやって怒りをコントロールするのか実際にやってみます。

徹哉が引いたカードには

そうじの時間にA君とB君がほうきを 振り回していたら、ガラスに当たって われてしまった。B君は『ぼくはやっ ていない。A君が勝手にほうきを振 り回していてガラスがわれたんだ。』 と言ってにげた。結局A君だけが先 生から怒られた。

と書いてありました。

徹哉はじーっとカードを見つめていました。

翔

俺 B君をやろうか?

翔が言いました。

千佳
千佳

私、先生をやるわ

千佳が言いました。

3人でロールプレイをしました。

徹哉は、その場を離れて、数を10からカウントダウンしました。

それでも、気持ちが治らないのか、歩き回ってブツブツ言っています。

徹哉
徹哉

大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・怒らない、怒らない、怒らない

言いながら深呼吸をしています。スーハースーハースーハー

それから、みんなの所に帰って来ました。

徹哉
徹哉

まだ、半分ぐらいしか怒りが収まっていない。でも、殴ったりする気はなくなった。

徹哉はまだ肩をいからせていましたが、握りこぶしを固めた手は下に下ろしています。

翔

最初はそれで良いんじゃないか?

ショウが徹哉の握りこぶしに触りながら言いました。

千佳
千佳

そうよ、一気にカーッと突っ走ってないもん。上出来だよ。

千佳が徹哉の肩に手を置いて言いました。

徹哉
徹哉

俺、コントローラー、コントローラーって頭の中で探してたんだ。

色々やってみたけど、呪文を唱えるのが良いみたい。

徹哉はチョッと照れ臭そうに言いました。

タロウさん
タロウさん

自分がこれが効くって思うことをやってみるのが良いと思うよ。

太郎さんが徹哉に近づきながら言いました。

SST感情のコントロール腹が立つカード

レインボータイムでの出来事

今日のレインボータイムは、ジェンガをしました。

順番に木の板を積み上げていくゲームです。

徹哉はこれが苦手です。

手が大きい上に、手先が不器用で、うまく板を引き抜いたり積み上げたりすることが出来ないのです。

前にも失敗して怒ってジェンガの木の板をメチャクチャに投げ飛ばした過去があります。

今日も案の定、徹哉の番で板を引き抜く時に失敗してしまいました。ガラガラガッシャーン。

木の板は脆くも崩れ去りました。

徹哉は、その場を離れて、ウロウロ動き回っています。

ブツブツ呪文を唱えたり、深呼吸をしたり、手をグーに固めてからパッと開いたりしています。

みんなは、ハラハラしながら徹哉の動きを見守っています。

暫くして、徹哉がみんなの元に帰って来ました。

徹哉
徹哉

みんな、ごめん。倒しちゃったよ。

徹哉が言うと、千佳と翔が徹哉に抱きつきました。

真弓と鈴香は、拍手をしました。

潤也がグッジョブと親指を立てました。

翔

凄いや、徹哉が怒コンできた

翔が大声で叫びました。

徹哉
徹哉

そんな凄いことじゃないよ。

徹哉は照れ臭いのか、ぶっきら棒に言いました。

千佳
千佳

だって、ジェンガを放り投げてないじゃん。大きな1歩だよ。

チカが涙ぐんで言いました。

太郎さんもまりこさんもニコニコしながら見ていました。

私も胸が熱くなって、徹哉の顔を見つめていました。

さよならの時間

帰りの時間になりました。

徹哉のお母さんが、私に近づいて言いました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

レインボーサロンで他の保護者の方と話をしていたら、元気をもらいました。

翔君のお母さんが『我が子なんだから、どんなことがあっても、見捨てないで信じて、愛し続けるのが親だ』って言ってくれました。

レインボーばあば
レインボーばあば

お母さん、良かったですね。

あなたは1人ではないのですよ。

話を聞いて一緒に考えてくれる人はたくさんいます。私も応援してますよ。

私は、翔のお母さんに会釈をして、ありがとうの気持ちを伝えました。

徹哉
徹哉

レインボーばあば、今日はあまり見かけなかったなあ。でも俺怒コンできたんだぜ!

徹哉はガッツポーズをして笑顔で言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

ちゃんと見てたよ。部屋の隅でね。今日はよく頑張ったね!嬉しかったよ

私は、徹哉の肩に手を置いて言いました。

徹哉
徹哉

それじゃあ。また来るよ!さよなら。

徹哉はニコニコしてお母さんに近づきました。

徹哉とお母さんは肩を寄せて帰って行きました。

これからの課題

徹哉にはまだまだ試練があることでしょう。

でも、徹哉を支えてくれるお母さんや友だちがいます。

お父さんもきっと理解してくれると思います。

学校との問題も解決しなければいけません。

担任の先生の辛さ

疲弊しきった担任の先生の辛さがよくわかります。

学級崩壊といわれるものは、たくさんの学校で起きています。

担任の先生と子どもたちの関係がうまくいかないと、悪循環が起きます。

学校全体で取り組む必要があります。

担任の先生はどんどん追い込まれて、学校に来ることが辛くなってしまいます。

担任の先生を支えることが必要なのです。

 

そんなことを考えながら、徹哉の家の車(紺色のアルファロメオですよ)が走り去っていくのを見つめているレインボーばあばこと(マダムMでした。

とらネコ先生とレインボー塾の子ども達の話はまだまだ続きます。

どんな子どもが出てくるのか?

どんなネコ仲間が登場するのか?

次回のお楽しみです!

 

 

 

 

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