第5話 とらネコ先生 驚く(前編)すぐにキレてしまう徹哉の場合

第4話 とらネコ先生 挟まるをご覧になりたい方は→こちらをクリック

私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

とらネコ先生とレインボー塾の子供たちアイコン

高級住宅街(?)のネコの仲間達

今夜は満月で空が明るく輝いています。

しばらく散歩に出ていなかったので、久しぶりに月夜を楽しみながら、そよ風を感じることができました。

何で久しぶりかって?

実はマイダーリンと一緒に旅行に行っていたのです。

マイダーリンは、ドライブが大好きで、日本全国、何処でも車で行っちゃうんです。

今回は九州を廻る旅をしてきました。

美味しいものをいっぱい食べて、焼き物を見たり、お城を見学したり、温泉に浸かったり、自然を満喫したり・・・本当に楽しい旅行でした。って言ってる場合じゃなかった。

港の灯りが遠くに見えます。きっと水面にまん丸な月が映ってユラユラ揺れていることでしょう。

小高い丘の上の公園にて

ここは小高い丘の上にある公園です。

近くに博物館図書館があって、昼間は広い歩道を人々がゆったりと散歩をしている所です。

今はひっそりとして、街灯の灯りに照らされた木々が静かに佇んでいます。

丘に登るには、遊歩道を少し入った所にある階段を登っていきます。

丘の上の公園は小さくて、遊具が少しあるだけです。

ベンチも木の板で作られていて、のんびりと海を眺めたり、子どもが遊ぶのを見守ったりするのにうってつけです。

丘の下には、住宅やマンションが立ち並んでいて、ここは高級住宅街と言われています。

何をもって高級というのかは疑問ですけどね!

夜になるとここはネコたちの集会所になります。

私は息を切らしながら階段を登って公園の街灯の下にたどり着きました。

アレキサンドリア
アレキサンドリア

おや、マダムM。ハアハア言ってどうしたのさ。

シャムネコのアレキサンドリアがベンチの上で優雅に寝そべりながら言いました。

アレキサンドリアは血統書付きのシャムネコで、大きなダイヤのような目をしています。美しい!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

こんばんは、アレキサンドリア。綺麗な月の夜ね。

私はハアハア言いながらベンチに近づきました。

アレキサンドリア
アレキサンドリア

そうねえ。今夜の満月は綺麗ね。

階段を上るのがきついのかい?ダイエットには御誂え向きだけどねえ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうなんだけど、なかなかできなくてね。

万次郎
万次郎

肥満は身体に悪いってよ!

意地悪な声が聞こえたと思ったら、三毛猫の万次郎です。オスの三毛猫は珍しいそうで、幸運を招くとも言われています。

まあ、万次郎が幸運を招くとは思えないけどね!

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

こんばんは、万次郎。元気そうね!

私はベンチの下で毛づくろいをしながら言いました。

万次郎もベンチに近づいて来ました。

本当に惚れ惚れするほどスリムな身体です。身のこなしもシャープで、カッコイイです。

万次郎
万次郎

マダムM。この頃どうしてたんだ?見かけなかったね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ちょっと旅に出てたからね。あちこちのネコと友達になったのよ。

万次郎
万次郎

へえ、面白そうだな。俺は図書館でいつも昼寝していたよ。

図書館は大きくて、もちろん誰でも利用できます。

図書館の周りには木々が生い茂り、綺麗な花壇に囲まれた広場には、ベンチも置いてあって、住民の憩いの場になっています。

長老
長老

やあ、マダムM。久しぶりにその巨体を見たよ。

元気そうだな。

誰かと思ったら、この辺では珍しい野良猫の「長老」でした。

この高級住宅街と言われている地域では、大きな邸宅が立ち並び、それに合わせてか、血統書付きのネコ達優雅な日々を送っているのです。

野良猫の「長老」も、前は豪邸に住んでいましたが、家族が外国に引っ越したので、親戚にもらわれたのです。でも、遠くの場所だったので戻って来たそうです。

それからは、野良猫として頑張って生きています。やっぱり住み慣れた場所が良いみたいで、他のネコ達が助けてくれているようです。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

長老、巨体はないでしょう。チョッとふくよかなだけよ!

私はキッと睨みながら言いました。

長老
長老

前よりふくよかになったような気がするがね。

まあイイや。今夜は美しい満月だなあ。

長老は、滑り台の下で顔を舐めています。

長老
長老

そう言えば、住宅街を歩いている時に、大きな怒鳴り声ガシャンガシャン物が割れる音がしてたけど、あれは何だったんだろうなあ。

長老が背中を舐めながら言いました。

万次郎
万次郎

僕もここに来る途中で聞いたように思うな。ガシャンガシャン割れてたような。3丁目辺りかな?

万次郎がブランコの横で座りながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

3丁目辺り?白い門がある家かしら?

私は恐る恐る聞きました。

3丁目の白い門がある家は、レインボー塾に通っている徹哉の家なのです。

徹哉は小学校6年生で、大柄でイケメン男子です。

最近様子がおかしくて心配していたのです。

万次郎
万次郎

そうだったかもしれない。白い門で、庭にはバラ園がある家だったような・・・

でもブロック塀で囲まれた家の方だったかもしれない。

よくわからないや。

万次郎は申し訳なさそうに言いました。

長老
長老

ここは、割合静かな住宅地だから、あんな大きな音は珍しいな。

長老が肉球を舐めながら厳かに言いました。

アレキサンドリア
アレキサンドリア

誰か知り合いがいるのかい?

アレキサンドリアがベンチの上から優雅に首を傾げて言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうなの。レインボー塾に通っている徹哉がその辺に住んでいるのよ。

最近チョッと荒れている感じで、この前も暴言を吐いていたし、心配していたのよね。

私は正直に徹哉の話をしました。

オスマン
オスマン

その子、ランドセルがやけに小さく見える大柄の子かな?

いつの間に公園に来たのか、ペルシャ猫の「オスマン」が長い毛をなびかせて言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうそう、6年生というより中学生より身長が高い子なの。

私はオスマンに言いました。

オスマン
オスマン

その子なら、3丁目の家で大暴れしていたよ。

飾り棚を何かで叩いて中のガラス製品をメチャムクチャに壊してたよ。

オスマンが平行棒のそばで、長い毛を舐めながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

徹哉が暴れてたの?大変!行かなくちゃ。

私は大慌てで行こうとしました。

アレキサンドリア
アレキサンドリア

マダムM。気をつけないと、ガラスが飛んできてけがをするわよ。

アレキサンドリアが心配して言ってくれました。

万次郎
万次郎

遠くから様子を見た方がイイぜ。

万次郎もアドバイスをしてくれました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

でも、徹哉が心配だから、とにかく行くね。

私は、苦手な階段を飛ぶようにして(転がるようにしてが正しい表現かもしれない)降りて行きました。

公園の階段を降りると、広い遊歩道が続いていて、天敵、犬の散歩をする人や、夜間ジョギングをする人が、あちらこちらに見えます。

遊歩道は左右に広がっていて、右側が3丁目と4丁目です。

3丁目の方に回っていくと、広い敷地を持つ豪邸が立ち並んでいます。

それぞれに趣向を凝らしたデザインの門や塀が連なっています。

家も特別注文をしたような、様々な建築様式で建てられています。

とらネコ先生 宙を飛ぶ

私は3丁目を、滅多にしないけど走って行きました。

ハアハア、ゼイゼイ、ハアハア、ゼイゼイ・・・もうダメかもしれない。死にそうよ!

横っ腹が痛くて休憩をしていると門が開いて

誰かが私を蹴り飛ばしたのです!

ヒエーっ!飛んでるわ、私。

ドサッ!私は道路にグッタリ横たわっていました。

驚いたの何のって、急に世界がグルッと回ったんですから!

もう死んでいるの?私は目を閉じてじーっとしていました。

徹哉
徹哉

クソっ!何かを蹴飛ばしちまった。

声変わりした野太い声が降って来ました。

徹哉
徹哉

エーッ!この辺にイタチは出ないはずだけど・・・

野太い声が近くに寄って来て言いました。

イタチですって?失礼しちゃうわ。ネコですよ。ネコ!

徹哉
徹哉

お前死んじゃったの?イタチ殺しになっちまったのか、俺。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャニャ~ン

私はかすれた声で言いました。

徹哉
徹哉

ワーオ!お前ネコなの?ビックリだなあ。

こんな太ったネコが存在するんだ!

声の主は、私の身体をさすりながら言いました。イタタ

徹哉
徹哉

どこか怪我をしたのかなあ。大丈夫か?

私を抱き上げようとして、目が合いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

徹哉?私を蹴っ飛ばしたのは徹哉だったの?

ニャニャニャーン

徹哉
徹哉

何処も怪我していないみたいだな。良かった。

徹哉はヒョイと私を胸に抱いて歩き始めました。

どうなっているのかよくわからなくて、私は徹哉の胸に頭をすり寄せました。

ドクドクドクドク、徹哉の心臓はせわしなく動いています。

徹哉は私を抱いたまま、図書館の横にある広場に行きました。

木々に囲まれた広場には、木のベンチが置かれています。

徹哉はベンチに腰掛けて、私を膝の上に乗せました。

徹哉
徹哉

本当に何処も怪我してないか?ごめんな。

俺頭が真っ白になって、いや真っ赤だな。

周りが見えてなかったから・・・

徹哉は申し訳なさそうに言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

二ャオーン

徹哉
徹哉

そうか、大丈夫そうだな。あんな所で何してたんだ?

それは、あなたを心配して、駆けつけたわけですよ。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャーンニャーン二ャオーン

驚いたことなどすっかり忘れて、徹哉のお腹に頭を寄せて丸くなりました。

しばらく木々のざわめきを聞いていました。

花壇からは、季節の花のいい匂いが漂ってきます。

街灯の光は、花壇で咲いている黄色やピンクの花々を優しく照らしています。

広場はとても静かでした。

レインボー塾 徹哉の悩み

徹哉
徹哉

クソッ!今日もやっちまった。どうしても止められない。

徹哉は大きな手で私の背中を撫でながら言いました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

何をやっちまったんですかね?

ニャーン、ニャニャーン。

またしばらく沈黙が続きました。

徹哉は電池が切れたように放心状態になっていました。

きっとアドレナリンが切れた状態になっているんでしょう。

徹哉の手は傷だらけで、少し血が滲んでいます。

私は徹哉の手を舐めました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ペロペロペロペロ

二ャオーン

徹哉
徹哉

痛いよ。でも仕方がないんだ。俺が悪いんだから・・・

そうだった。私の舌ってザラザラしてるんだった。つい忘れちゃうのよね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ごめんね徹哉。

ニャーンニャン

徹哉
徹哉

俺、自分でも嫌になるくらい・・・キレちゃうんだよね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そうなのね。キレる原因は色々あるだろうけど、いつもイライラして、モヤモヤしてるんだろうね。

ニャーンニャーン、二ャオーン

徹哉
徹哉

世の中みんな敵だって思う。

誰も俺の気持ちなんかわかってくれない。

いつもいつも怒られたり責められたりするのは俺なんだ。

そんな風に思っているんだ。世の中みんな敵だって。嫌だよね。

自分ばかり責められて辛いよね。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

嫌なことばかり起こるって感じているんだね。

ニャオーンニャンニャンニャオーンニャン。

徹哉
徹哉

お前わかるの?今日も父さんが、『お前はウチの面汚しだ』って言ったんだ。『お前のせいで我が家はメチャクチャだって。』

徹哉は悔しそうに拳を固めました。ブルブル震えています。

唇をギュッと噛んで、涙を流しながら・・・辛そうです。

私は、胸に這い上がろうとしました。

徹哉が握りしめていた拳をゆっくり開いて、私の身体を支えてくれました。

私は徹哉の少しヒゲが生えている顎を舐めました。

ザラザラ、ザラザラ。

徹哉
徹哉

くすぐったいよ。お前って面白いな。

徹哉は私の頭を撫でながら、照れ臭そうに言いました。

さっきより徹哉の身体の力が抜けたように思います。

目も少し和らいで、優しい表情になってきました。

徹哉
徹哉

小さい頃から、いつでも俺が悪いって言われ続けてきたんだ。

俺身体が大きいだろ。

力も強いし、声も大きいから目立つんだよな。

喧嘩があっても、いつも俺が勝つし、力が入りすぎるから、相手が怪我をしてしまうんだ。

普通に物を持っても、壊してしまったり・・・

結局俺はダメな奴なんだよ。

家の面汚しって父さんが言った通りなんだよ。

徹哉は下を向いて私と目を合わせました。

そんなことないよ!

徹哉は力加減が苦手なだけだよ。

ついカーッとなってしまうのは、怒りのコントロールができないからで、それはトレーニングで我慢できるようになるよ。

本来の徹哉は、優しい思いやりのある子どもだって私は知ってるよ!

どうやって気持ちを伝えたら良いのかわからなくなって、私は徹哉の首筋に頭を寄せてゴロゴロゴロゴロ盛大に喉を震わせました。

徹哉は私の背中からしっぽまで撫で下ろしながら、空を見上げました。

徹哉
徹哉

今日は満月なんだ。狼男がでても仕方がないな。

ヒエーッ!何を言ってるのこの人。狼男って満月の夜に変身するんだっけ?あなた、狼男だったの?

私はもがいて逃げようとしました。

でも大きな手で抑えられて動けない!

徹哉
徹哉

大丈夫だよ!冗談だって、ハハハ。

徹哉は大きな声で笑いました。

何だ。驚かせないでよ。一瞬徹哉が変身するところを想像してしまったわ。ブルル、こ、怖い!

徹哉はまだ肩を震わせながら笑っています。

でも、何だか元気になったようです。良かった。ニャーン

徹哉
徹哉

俺、なんかモヤモヤしてたのが、少しマシになったような気がする。

二ャオーンにはパワーがあるんだな。

徹哉は私を胸に抱きしめながら言いました。

クッ苦しいんですけど!だから、力を入れすぎなんだよ!背骨が折れてしまうじゃない!ギャオーン

徹哉
徹哉

抱きしめすぎた?大丈夫?

徹哉は力を緩めながら言いました。本当に力が漲っていますね。

徹哉はしばらく月を眺めていました。まさか狼男になろうとしているのではあるまいね?

徹哉
徹哉

ガラス製品を粉々にしちまった。

父さんが怒るのも仕方ないよな。

学校で先公を殴ったんだもんな。

お前なんかクラスにいない方が良い』って言われてカーッとなってやっちまったんだ。

クラスの友達は俺の影響で悪くなったって。

俺がクラスを引っ掻き回してメチャクチャにしたって。

俺そんなつもりは全くないのに・・・

俺が全ての元凶だって言われて悔しくて・・・

徹哉はポツリポツリと話し始めました。

そりゃあそうでしょうよ!そんなこと言われて黙っている方がおかしい!私だって引っ掻いてやりますよ!って言ってる場合じゃない。

徹哉
徹哉

俺なんかこの世から消えて無くなってしまえば良いんだ。

生まれてこなければ良かった。

父さんも母さんも後悔しているんじゃなかな、俺なんか産んで

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

そんな!絶対違うよ!生まれてこなければ良かったなんてそんな悲しいこと言わないでよ!

二ャオーンニャンニャンニャオーン!

あまりに悲しくて辛くて、私は徹哉の胸に手を添えました。肉球でモミモミしながら、胸を撫でました。

徹哉
徹哉

お前、変わってるなあ。

徹哉は私を見下ろして背中を撫でながら言いました。

その手は大きくて、暖かくて、優しくて・・・安心できる感じです。

徹哉
徹哉

そろそろ帰った方が良いな。

もう帰る家はないと思っていたけど、結局あそこが俺の家だし・・家出するつもりだったけど、カーッとなってたから何にも持って来てないし・・・これじゃあどうしようもない。

徹哉は私を抱いて立ち上がりました。

徹哉
徹哉

ところで、お前、どこから来たの?

そうだった。ここは私の家から遠く離れているので、マイダーリンが迎えに来てくれるはずなんだけど、いつ頃来てくれるのかはわからないし・・・

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャーンニャン

徹哉
徹哉

そうか、お前も家出して来たのか。俺の家に連れて帰ろうか?

いえいえ、家出したのではありませんから。私のことは気にしないで良いから・・・

徹哉は私を抱きかかえながら、ズンズン歩いて行きます。

図書館の広場を離れ、木々の間を抜けて、遊歩道の上を大きな歩幅で通り過ぎて行きます。

白い門が見えて来ました。

バラ園の芳しい匂いが風に乗って漂ってきます。

徹哉は門の隙間から家をジーっと見ていました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

徹哉なの?

心配そうな声が聞こえたと思ったら、玄関からお母さんが駆け寄って来ます。

お母さんは華奢な体つきの上品な女性ですが、今は心配でやつれた顔をしています。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

徹哉、心配したのよ。どこに行ってたの?

お母さんは徹哉の大きな身体を抱きしめました。

えーっと私は徹哉に抱かれているので、一緒に抱きしめられてもムギューっとなってしまって・・・ニャオーン

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

徹哉、この子は誰?

お母さんが私に気がついて尋ねました。

徹哉
徹哉

太ってるけどネコだよ。名前は知らないけど・・・

俺こいつを蹴っ飛ばしちゃったんだ。

徹哉は私をお母さんに見せました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

この子首輪つけてるわ。『マダムMって名前なのね。

きっと飼い主さんが心配していると思うわよ。

不覚にも、私首輪なんかつけてたの?名前が書いてあるのか。知らなかった。

きっとマイダーリンがこっそり付けたのね。ううっ

徹哉
徹哉

そうか、マダムM。家に帰るんだな。さよなら。

徹哉は私を道路にそーっと置いて見下ろしました。

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

ニャーンニャーン

私は徹哉の足首に身体を擦り付けて回りました。

徹哉
徹哉

別れたくないのかな?

徹哉が言うと、

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

さようならって言ってるのよ。

とお母さんが、ニコニコしながら言いました。

徹哉
徹哉

父さん、まだ怒ってる?

徹哉が心配そうに言いました。

徹哉のお母さん
徹哉のお母さん

書斎に入ったままよ。きっと言いすぎたって思っているわ。

お母さんが優しく徹哉の肩を抱きながら言いました。

2人は肩を寄せ合ってバラ園の横を通り過ぎて玄関に向かいました。

私は2人の後ろ姿が玄関に消えるまで見ていました。

マイダーリン 許さないわよ!

そうそう、マイダーリンは、多分図書館の駐車場に来ているはずね。

私は急いで図書館の駐車場に向かいました。

さっき徹哉と私が座っていたベンチで、マイダーリンは月を眺めていました。

まさか!マイダーリンも満月の夜に狼男に変身するのでは?

私は恐る恐る近づきました。

ケンゾウさん(ダーリン)
ケンゾウさん(ダーリン)

ガオーッ!

マイダーリンが大声で叫びました。

ギャー!私は背中の毛を逆立てて飛び退きました。フーッツ

ケンゾウさん(ダーリン)
ケンゾウさん(ダーリン)

ごめんごめん。あんまり綺麗な満月だったから、ついその気になってしまった。

そう言いながらマイダーリンは私を抱き上げました。

許さないから!フン。引っ掻いてやろうかしら?

ケンゾウさん(ダーリン)
ケンゾウさん(ダーリン)

今日はどうたった?

マダムM(とらネコ先生)
マダムM(とらネコ先生)

二ャオーン、フン!

家に帰った徹哉はあれからどうしているでしょう?

お父さんとは話をしたかしら?

どうしたら徹哉の苦しみを取り除くことができるかしら?

徹哉が心配なとらネコ先生ことマダムMでした。

 

第5話 とらネコ先生 驚く(後編)に続く→こちらをクリック

タイトルとURLをコピーしました