第4話 とらネコ先生 挟まる(後編)レインボー塾キッズSSTでの俊介

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私の愛するトラ猫「ミューニャン」が天国に旅立ってから1年が過ぎた頃、私の身体に異変が!なんと!私はとらネコ「ミューニャン」に変身してしまったのです!!

こうして私は、昼間は「レインボー塾」の先生(通称レインボーばあば)として、レインボー塾に通う子ども達を支援し、夜はとらネコ「ミューニャン」通称マダムM)として、猫の仲間達と一緒に暮らす毎日を送るようになりました。

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レインボー塾での俊介

数日後の金曜日の午後です。

レインボー塾の『キッズSST』に俊介がやって来ました。

今日はお母さんと一緒です。

お母さんはレインボーサロンに入って行きました。

レインボーサロンは、SSTを受けている子ども達の保護者が待っている部屋です。

俊介はちょっと気落ちしている感じで、ウエイティングルームに入って行きました。

ウエイティングルームというのは、早く来た子ども達が、SSTが始まるまで待っている部屋です。

図鑑や物語の本が棚にたくさん入れてあります。

ブロックやゲームも置いてあります。

ジグソーパズルやカルタ、カードゲームなどを置いてある棚があって、子ども達は自由に使うことができます。

子ども達が制作したおもちゃも置いてあります。

ダルマ落とし・ドミノ倒し・輪投げ・ビー玉転がし・・・などなど

壁際にはソファーが置いてあります。

ドリンクバーには、水とお茶が用意されています。

俊介は図鑑のコーナーに行って、いろいろな図鑑の中から宇宙の図鑑を選びました。

ソファーに座って図鑑を見始めました。

でも、図鑑を見ているようで、上の空っていう感じです。

何か考えているようです。

ベランダでネコの私に会った後、どうなったのか気になりますが、自分から言い出さない限り聞くことはできません。

だってネコだったんだもの!私だって言えないわ!

レインボー塾のキッズSST

SSTが始まりました。

いつも私は、SSTの様子を後ろから見ています。

子ども達の様子スタッフの対応など、オブザーバーとして観察をして、後のスタッフ会議でフィードバックします。

ウォーミングアップでの出来事

最初はウォーミングアップです。

『キッズSST』のウォーミングアップでは、遊びながら身体と心を鍛えるトレーニングをしています。

今日は、忍者ごっこです。

忍者ごっこは子ども達の大好きな遊びです。

忍者になっていろいろな修行をします。

登り棒に登って、うんていを渡って行きます。

一本橋を渡って、マットで、でんぐり返しをします。

跳び箱に飛び乗って、はしごを登ります。

はしごの先に手裏剣(折り紙で作ったもの)が貼ってあるので、それを取って下ります。

手裏剣をストラックアウト(城の形)に向けて投げます。

城のお堀(ビニールの池があります)に落ちないように平均台を渡って行きます。

最後にトランポリンに乗って大きく跳ねます。

俊介は身体が大きいので、登り棒も雲梯も軽々こなして行きます。

一本橋も身体がブレることなく渡って行きました。

跳び箱の上にも楽々飛び乗り、梯子を登って行きました。

手裏剣を手にして、お城のストラックアウトに投げました。

でも俊介の投げた手裏剣は遠くに飛んでしまい、ストラックアウトを飛び越してしまいました。

俊介は呆然と手裏剣が飛んで行った方を見ています。

キョウタ
キョウタ

俊介、これ君が投げた手裏剣だろ?

キョウタが手裏剣を持ちながら走って来ました。

俊介2
俊介

勝手に取るなよ。僕が拾いに行こうとしてたんだ。

俊介がいつもと違ってイライラした声で言いました。

キョウタ2
キョウタ

拾ってあげたんだから、礼ぐらい言えよ。

キョウタは怒って言いました。

俊介2
俊介

拾ってくれなんて頼んでないし。勝手に取ったんじゃないか。礼なんてしないね。

俊介が声を荒げて言いました。

キョウタ2
キョウタ

取ってないよ。拾ってあげたんじゃないか。あんな遠くに飛ばしたくせに。下手なんだよ。

キョウタは不満そうに言いました。

俊介2
俊介

下手だと。お前なんか何にも知らないくせに。

キョウタ2
キョウタ

手裏剣の投げ方なら知ってるよ。お前よりうまいよ。

キョウタが手裏剣を投げました。

お城のストラックアウトに見事に当たりました。

キョウタ2
キョウタ

お前は下手だから当たらないんだよ。

キョウタは自慢そうに言いました。

俊介2
俊介

お前、動物のことは知ってるか?宇宙に秘密のことも知らないだろう?お前なんか手裏剣投げができるだけじゃないか!

俊介は大声で怒鳴りました。

そこへジュンヤさんが来ました。

ジュンヤさんは作業療法士で、この忍者ごっこのインストラクターです。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

どうした?何か問題があったか?

ジュンヤさんは穏やかに聞きました。

キョウタ2
キョウタ

俊介が、せっかく拾ってやった手裏剣を、僕が取ったって言うんだ。自分が遠くに投げたくせに。

キョウタが憤慨して言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

そうなの?俊介。拾ってもらったの?

ジュンヤさんが俊介と目を合わせるように、しゃがんで言いました。

俊介3
俊介

僕・・・手裏剣が遠くに飛んじゃったんだ。お城に当てるつもりだったのに・・・

俊介はうなだれて下を向いて言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

そうだったのか。それは悔しかったねえ。

ジュンヤさんが優しく言いました。

俊介3
俊介

うん。キョウタが拾ってくれたのに・・・

俊介は目に涙を浮かべて言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

そりゃあ、仕方ないよ。悔しくて素直に謝れなかったんだろ?

ジュンヤさんが俊介の肩に手を置きながら言いました。

俊介3
俊介

ごめん、キョウタ。取ったなんて言って。

俊介はつぶやくように言いました。

キョウタ3
キョウタ

僕もごめん。下手なんて言って。

キョウタは俊介のそばに寄りながら言いました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

キョウタは、手裏剣を投げるのが得意だから、俊介にコツを教えてあげたら?

ジュンヤさんがキョウタの方を見ながら言いました。

キョウタ
キョウタ

良いよ。俊介、手裏剣をこう持って。肩の力を抜いて手首の力で投げるんだ。やってみてよ。

キョウタが俊介の手首を持ちながら、やり方を教えました。

俊介はキョウタの指示通りに投げてみました。

あとチョットでお城の屋根に当たるところでしたが、外れました。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

もう1回やってみて。コツはつかんできたみたいだよ。

ジュンヤさんが励ますように言いました。

俊介は、もう一度肩の力を抜いて、手首のスナップを利かせて投げました。

今度はお城の真ん中に当たりました。

キョウタ
キョウタ

やった!当たった、ど真ん中!

大声で歓声をあげたのは、キョウタでした。

シュンスケ
シュンスケ

うん、当たった。嬉しい。

俊介もちょっと照れながら言いました。

シュンスケ
シュンスケ

ありがとう、キョウタ。ありがとう、ジュンヤさん

俊介は2人にお礼をして、にっこり笑いました。

ジュンヤさんは、その場を離れて行きました。

ジュンヤさんはいつも子ども達の様子を見守ってくれています。

そして何かあった時は、すぐに駆けつけて問題を解決する手助けをしてくれるのです。

俊介とキョウタは、仲良くトランポリンを跳んでいます。

キッズSST  コミュニケーションタイムでの出来事

今日のコミュニケーションは、「どっちが好きでしょう?」です。

部屋を半分に分けて、好きな方に移動します。

「パン」と「ご飯」とか「電車」と「飛行機」とか「犬」と「ネコ」とか、色々な課題が出て、どっちが好きかを決めます。

「犬」と「ネコ」のお題の時、俊介は迷わず「ネコ」の方に移動しました。

キョウタは「犬」の方に移動しました。

移動した所に集まった子ども達で、何故そう思うのかを話します。

シュンスケ
シュンスケ

この前、でぶっちょネコが、うちのベランダのフェンスを通り抜けようとして、お腹がつかえて、フェンスに挟まっちゃったんだ。面白かったよ。

俊介が楽しそうに話しています。

なんと!そこだけをクローズアップしなくても良いじゃない。必死だったんだから。今でも思い出すとゾッとするわ。

モモカ
モモカ

えーっ!可哀想。怪我はなかったの?

保育園に通っているモモカが心配そうに言いました。

本当に優しい子です。モモカは3人姉妹の1番上です。

シュンスケ
シュンスケ

大丈夫だったよ。別のところからベランダに入って来たんだ。でぶっちょだから、僕には抱けなかったけど、色々話を聞いてくれた

俊介は思い出すように言いました。

シュンスケ
シュンスケ

あの時は、最悪だったからでぶっちょに話ができて良かったよ。

私でも役に立っていたようで、本当に良かった!

キッズSST お絵かきタイムでの出来事

今日のお絵かきタイムは「好きな絵を描く」です。

テーブルには、絵の具・クレヨン・色鉛筆・マジックなどが用意されています。

画用紙に好きな絵を描いていきます。

モモカはお姫様の絵を描いています。

キョウタは飛行機が飛んでいる絵を描いています。

リョウは恐竜の絵を描いています。

ジュリは家族でピクニックをしている絵を描いているようです。

トオルは殴り書きで線をたくさん描いています。

俊介は、ネコを抱いている絵を描いていますが、どうみてもネコの方が俊介よりも大きいように見えます。

巨大じゃないの?そんなに大きいはずはないわ!俊介を食べようとしているゴジラみたいじゃないの。ひど過ぎる。ううっ

1人ずつ絵の説明をします。

俊介の番になりました。

シュンスケ
シュンスケ

僕とでぶっちょネコだよ。一緒に話をしてるんだ。

俊介が説明すると、

リョウ3
リョウ

そんなに巨大なネコ初めて見たよ。話をするの?

リョウが怪訝そうに聞きました。

シュンスケ
シュンスケ

でぶっちょは鳴くだけだけど、何だか僕の話に答えて鳴いているように感じるんだよ。だから話してるって思ったんだ。

俊介は思い返しているように言いました。

ジュリ
ジュリ

いいなあ、私もそんなネコに会ってみたい。

ジュリが羨ましそうに言いました。

ジュリ、きっと会えると思うよ!私は心の中で誓いました。

キッズSST ミュージックタイムでの出来事

今日の「ミュージックタイム」は、リトミックです。

リトミックは、音楽に合わせて身体を動かしたり手拍子をとったりダンスをしたりします。

インストラクターのさゆりさんが、前でみんなに指示を与えます。

キーボード担当のみさこさんが、音楽を流し始めます。

俊介はこれが苦手です。音楽に合わせて身体を動かしているつもりでも、身体の動きがギコチナイです。

リズム感というものは、持って生まれたもので、自然に身体が動く人もいますが、なかなか難しい人もいます。

俊介はリズムに乗ることができないので、いつも教室の端っこで座って見学しています。

リトミックが始まって、みんなはリズムに乗りながらサークルの周りをそれぞれの動き方をして回っています。

トオルが俊介のそばに来ました。ヘンテコな踊りみたいな動きをしています。

トオル
トオル

俊介もやってみなよ。面白いよ。

トオルは手をクネクネさせながら言いました。

俊介3
俊介

僕そういうの苦手だから・・・

俊介は躊躇しています。動こうとしません。

トオル
トオル

ほらっやってみなよ。こうやって手をクネクネさせるの。

トオルが見本を見せながら言いました。

俊介はまだためらっていましたが、おもむろに手を動かしてみました。クネクネ、クネクネ。

トオル
トオル

うまいじゃないか。その調子。今度は足も動かしてみて。

トオルは腰を振りながら足をブルブルさせました。本当に奇妙な動き方です。

俊介も真似してブルブルしてみました。

トオル
トオル

すごい!1回でできるなんて、天才だ!。

トオルは笑顔で言いながら、俊介の横で踊っています。

俊介も笑いながら、トオルの横で踊り始めました。

リョウ3
リョウ

面白そうだね。

途中からリョウも入って来てヘンテコ踊りを始めました。

いつの間にか3人ともサークルの中に入って踊りながら回っていました。

俊介は楽しそうに踊っています。

身体の動きはまだぎこちないながら、リズムに乗って踊っています。

キョウタは元々リズム感が良いので、踊りも得意です。ヒップホップ系の動きでなかなか決まっています。

でも、リョウとトオルは本当は踊りが苦手です。リズムに乗ることも難しいのです。

でも、トオルは独自のヘンテコ踊りで、リズム感のなさを克服したのです。

自分の感じたまま表現すれば良い」とインストラクターのサユリさんがいつも言っています。

トオルは感じたままクネクネ踊りを開発したのでしょう。リズムに乗っていなくても良いのです。

俊介が初めてリトミックに参加することができたのも、トオルのおかげです。

トオルは、リトミックが苦手なので、俊介の気持ちがわかったのでしょう。

だから、誘ってくれたのかもしれません。

子どもの力は偉大です。

キョウタにしてもトオルにしても、わずか5歳で、友だちの気持ちが分かって助けてくれようとしています。

私は見ていて、心がポカポカ温かくなりました。

キッズSST レインボータイムでの出来事

今日の「レインボータイム」(お楽しみタイム)はドミノ倒しです。

色々な色が塗ってある木の板を並べていきます。積み木を使ったりブロックを使ったりしても良いです。

俊介は色板を使って慎重に並べています。所々ストッパーを入れながら真剣な眼差しです。半円になるように綺麗に並べています。

キョウタはこれが苦手なのです。

手先が不器用な上、そそっかしいのですぐに倒してしまいます。

数枚並べては倒してしまって、しまいには癇癪を起こしてドミノの板を滅茶苦茶になぎ倒してしまいます。

俊介が並べていると、横のキョウタがまた倒してしまいました。

キョウタ2
キョウタ

クソッ!また倒れた!こんなの何回やっても時間の無駄だ!

キョウタは怒って今にも爆発しそうに言いました。

シュンスケ
シュンスケ

キョウタ、ストッパーをつけておけば大丈夫だから。

俊介がストッパーを渡しながら言いました。

キョウタ3
キョウタ

でも、すぐに倒れるから嫌なんだ。

キョウタはふくれっ面で言いました。

シュンスケ
シュンスケ

それじゃあ、僕と一緒にやってみようよ。僕が並べるから、キョウタはストッパーを入れてよ。

俊介は、自分のドミノをキョウタのドミノとつなげました。

そして、慎重にドミノを並べていきました。10個ほど並べた後に、

シュンスケ
シュンスケ

キョウタ、ストッパーの出番だよ

とドミノを手で押さえながら言いました。

キョウタは真剣な眼差しでドミノを見ています。

そして、恐る恐るストッパーをドミノの前に置きました。

今までにない慎重さでそーっと置いています。

キョウタ
キョウタ

やったー!置けたぞ。

シュンスケ
シュンスケ

すごいじゃないか!やったな!

俊介が笑顔で言いました。

キョウタもニコニコしています。

その後も俊介とキョウタのコンビでドミノは見事に完成しました。

みんなのドミノを繋げて、最後はいっぺんに倒していきます。

カタカタカタとドミノが気持ちよく倒れていきます。

モモカ
モモカ

わあ!すごい。うまくいったね!

モモカが手を叩きながら言いました。

ジュリもドミノの周りを走りながら手を上げて喜んでいます。

キョウタは俊介とグータッチをして喜びを分かち合っています。

トオルとリョウも踊りながらドミノの周りを回っています。

みんなで力を合わせてドミノを作ったこと、うまく最後までドミノがきれいに倒れたことが嬉しかったのでしょう。

達成感を味わうことができます。

さよならの時間の後・・・お母さんの悩み

さよならの時間になりました。

俊介はキョウタとハグをしています。

俊介のお母さんが私の方に来て言いました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

今度お時間のある時で良いので、ご相談したいのですが。

レインボーばあば
レインボーばあば

いつでも良いですよ。もし良かったら、今からでも良いですよ。

俊介だったら、スタッフのマリコさんとタロウさんがついていますから心配いりませんよ。

私は笑顔で言いました。

俊介のお母さんはしばし考えていましたが、

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

それでは、お言葉に甘えて今からお願いします

と言いました。

俊介は、まりこさんとタロウさんと一緒にウエイティングルームに入って行きました。

きっと図鑑を見たいのでしょう。

図鑑に載っていたことを、延々とまりこさん達に話すのでしょう。

私と俊介のお母さんは、レインボーサロンに入りました。

レインボーばあば
レインボーばあば

何か飲みます?

私は自分が喉が渇いているので、カモミールティーを入れました。

俊介のお母さんもカモミールティを入れていました。

2人で飲み物を持ってソファーに座りました。

何か相談があるようですが、まずはお茶を飲んで心を落ち着けてからと思ったので、私は黙ってお茶を飲んでいました。

しばらくして、俊介のお母さんが話し始めました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

この間、俊介が幼稚園のお友だちに大怪我をさせてしまって。

俊介のお母さんは思い出したくないというように首を振りました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

相手のお子さんは、頭を打って救急車で病院に運ばれたそうです。頭の手術をして、今も入院しているんです。

俊介のお母さんは辛そうに下を向いたまま話しました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

私、俊介を一方的に叱ってしまったんです。

だって相手に怪我をさせるなんて、なんということをしてくれたんでしょう

私は主人と一緒に相手の家に行って、謝りました。

2人で病院にも行ってお見舞いもしました。

相手の方はとても良い方で、『子どものことだから』って言って許してくださいました。

お医者様は、後遺症はないだろうと言っていたそうです。

治療費を払うって言ったんですが、保険で賄えるから良いっておっしゃって。

俊介のお母さんは、ハンカチで目元を押さえながら言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

良かったじゃないですか。相手の方が良い方で。

私はホッとして言いました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

ええ、そうなんですけど・・・

主人が俊介の話を聞いてくれたんです。

主人は、『どっちもどっちだな』と言ってました。

俊介がブランコを無理に奪おうとしたことは悪いけど、相手が怪我をしたのは、事故みたいなものだって言うんです。

私にはそうも思えなくて、俊介さえブランコを奪おうとしなかったら、そんな事故は起こらないはずですし・・・

俊介のお母さんは私の目を見つめながらキッパリと言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

まあ、そうですけど。子どもの世界ではよくありますよ。

売り言葉に買い言葉って言いますでしょ。

私は「奪えるもんなら奪ってみろ」と相手の子どもが言ったことを伝えたかったのですが、モチロン言えません。

だってあの時はネコだったんですから・・・

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

主人は俊介はとても優しい良い子だというのです。

過ちは犯すけれどそれは仕方がないって。

これから色々経験しながら成長していくんだから、温かい眼差しで見守ってやれって・・

きゃー!良いこと言うわね、お父さん!最高!!

あの時の穏やかで優しい印象は間違ってなかったのね。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

私、俊介にひどいことを言ったんです。

もうあなたを育てる自信がなくなったとか、顔も見たくないとか、妹は絶対こんなことしないとか、他にも色々言いました。

もう少しで手を出していたかもしれません。

お母さんは泣きじゃくりながら言いました。

俊介もショックを受けて傷ついていたけど、お母さんも辛い思いをしていたんですね。

カーッとなって思わず口走ってしまったんでしょう。

他の子どもに自分の子どもが怪我をさせるって、それも頭の手術をしたって、それは本当に辛いでしょう。

苦悩の日々だったと思います。

誰かに責任を押し付けたいと思うのも当然です。

でも、それが自分の子となると、結局は自分に返ってくるのですから、逃げ場がありません

レインボーばあば
レインボーばあば

辛かったですね。よく我慢していらっしゃった。

俊介の様子はどうですか?

私が聞くと、お母さんは遠くを見るような目になって言いました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

あの日から、妙に礼儀正しくなりました。

余計なことは全く喋らなくなりました。

図鑑の話もあんなに延々と喋っていたのに、今は黙っているんです

お父さんが帰って来ると、書斎に入って話をしているみたいです。

時々2人の楽しそうな笑い声が聞こえて来るんです。

でも、私の前では、遠慮をしているみたいに打ち解けてくれないんです。

お母さんは、ハンカチを握りしめながら言いました。

レインボーばあば
レインボーばあば

俊介はお母さんが大好きですよ。

お母さんに心配をかけたことが辛いんでしょうね。

私はお母さんの手に手を重ねながら言いました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

そうでしょうか。私本当にあの子を育てていく自信がありません

また、誰かに怪我をさせたらどうしましょう?

レインボーばあば
レインボーばあば

お母さん、俊介はどんな子ですか?

暴力を振るって暴れる子ですか?

今日見てたら、俊介は苦手なリトミックもいつもみたいに見学しないで頑張って友だちと一緒に踊っていましたよ。

ドミノ倒しの時は、ドミノの苦手な友だちに手を差し伸べて一緒に作っていましたよ。

私は今日の俊介の様子を話しました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

俊介がそんなことを?

レインボーばあば
レインボーばあば

そうですよ。俊介は優しい子ですよ。

私は精一杯の俊介への愛情を込めて言いました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

そうですか。俊介が・・・

レインボーばあば
レインボーばあば

あ母さん、俊介があんなに優しいのは、お母さんが愛情を込めて俊介を育ててこられたからじゃないですか。

図鑑を一緒に見たり、俊介の話をちゃんと聞いてあげたり、俊介の得意なことを伸ばしてあげたりしたから、あんな良い子に育っているんですよ。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

そんな、当たり前のことをしているだけです。

お母さんは照れながらそう言いました。

でも、笑顔が戻っていました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

私、俊介ともう1度話してみます

主人の言った通りだったんですね。

主人はあの子の良いところをたくさん知っているんです。

似た者同士ですから・・・

ふふふと笑いながら、お母さんはニコニコしながら言いました。

 

俊介の宇宙の話が延々と続いているウエイティングルームに私とお母さんが入って行きました。

マリコさんとタロウさんはニコニコしながら俊介の話に聴き入っています。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

俊介、お待ちどう様。マリコさん、タロウさん、ありがとうございました。

俊介のお母さんが笑顔で言いました。

シュンスケ
シュンスケ

お母さん、もうお話終わったの?まだまだこれからだったんだけどな、また今度にするよ。

俊介は図鑑を棚に戻しながら言いました。

俊介のお母さん2
俊介のお母さん

帰ったらお母さんにも聞かせてね

お母さんが言うと、100ワットの明かりがついたように俊介の顔が明るく輝きました。

シュンスケ
シュンスケ

うん、良いよ。たくさんあるんだ。

俊介は嬉しくてしょうがないという感じで、お母さんの手を握りしめました。

シュンスケ
シュンスケ

マリコさんとタロウさん、話を聞いてくれてありがとう。

レインボーばあば、さようなら。

レインボーばあば
レインボーばあば

さようなら、俊介。元気でね!また今度会いましょう!

俊介はお母さんと手を繋いで、駐車場の車のあるところまで歩いて行きました。

青い車に乗って、窓から俊介が手を振りました。

お母さんは軽く会釈をしました。

私は、青い車が通りを遠くまで走り去るまで、ずーっと見ていました。

俊介はまだ5歳です。

これから小学校に入っても、色々な問題が起こるかもしれません。

お母さんが子どもを信じて丸ごと愛してあげることが、俊介の成長に大きな影響を与えます。

幸い、お父さんは俊介を理解して『温かい眼差し』で見守ってくれているようです。

きっとお母さんを支えてくれると思います。

俊介と家族の幸せを願っているレインボーばあばこと(マダムM)でした。

 

とらネコ先生とレインボー塾の子ども達の話はまだまだ続きます。

どんな子どもが出てくるのか?

どんなネコ仲間が登場するのか?

次回のお楽しみです!

 

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