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挨拶は基本のスキル?
誰かに会ったときに、「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」など、挨拶をすることは、私達は日常生活で無意識に行なっています。
あまり気にせずに、その場の状況に合わせて、適切な言葉を選んで行なっていると思います。
発達障害などの子ども達にとっては、これが難しい場合があります。
自分以外の世界を認識できていない場合もありますが、挨拶をする必要性を感じていないこともあります。
相手を意識して初めてコミュニケーションをとる動機ができると思いますが、彼らの中には相手の存在をあまり意識していない現状もあるかもしれません。
人と繋がりたいと思えないうちは、なかなかコミュニケーション力をつけるのは難しいです。
友達や周りの人と一緒に活動したら『楽しかった❣️』と思った体験が多ければ『もっと繋がりたい』と思うだろうし、苦い経験を積み重ねてきていれば、人との繋がりを保ちたいとは思わないでしょう。
発達障害などの子ども達の中には、誰かと一緒に活動すること自体が苦手で、あまり他の人と一緒にやりたくない子どもがいます。
その原因は様々ですが、今まで生活してきた中で、誰かと一緒に活動して楽しかった経験をあまりしてきていないことが考えられます。
反対に一緒に活動した時に、責められたり、トラブルになったりして、嫌な体験をしたことで、心に傷を負っている場合が多い子どもは、もう一緒にやりたくない!独りがいい!と思い込んでしまっっていることも多々あると思います。
そこで誰かと一緒に遊んだり、ゲームをしたり、 身体を動かしたりして「一緒にやると楽しいな」という体験を沢山重ねていくことが大切です。
面白いから一緒にやってみようと思い、ちょっとずつでも実践する機会を増やしていくことで、人と繋がりたいという気持ちが高まってきます。
そうなって初めて、人と繋がるためにどうしたらいいだろう?という意欲を持つようになると思います。
本人が必要性を感じていないのに、「挨拶は大事だから、ちゃんとできるようにしよう。」と言って強要しても効果は期待できないと思います。
本人が人と繋がりたいと少しでも思っていることが前提条件だと思います。
人との繋がりを求めるのであれば、コミュニケーションは不可欠です。
その最も基本的なものの1つが挨拶です。
挨拶はコミュニケーションの基本のスキルです!
そこで、SSTでは、挨拶をはじめの方で学習します。
まず、人と向き合うことから始めていきます。
相手を見る、相手が受け取れるように、相手に伝わるように挨拶をする方法を学びます。
SSTの学習方法
SSTの学習方法は様々で、どんなやり方をしても、ターゲットスキルさえきちんと把握していれば大丈夫だと、『SSTについて』で説明しました。
ここでは、基本のやり方で学習活動の流れを説明します。
レインボー塾では、『こんな時どうする?』というコーナーで実践しています。
ロールプレイ(コント)を見よう(問題提起)
スタッフがロールプレイ(コント)をして子ども達に見せます。
この時、バッド例を提示します。
エピソード1
おはよう😃
・・・・・
なんだ!無視かよ!
エピソード2
おはよう😃!
小さな声で
おはよう
えっ?何か言った?聞こえないよ!
エピソード3
おはよう!
下を向いて
おはよう
えっ誰に挨拶してんの?
エピソード4
おはよう!
怒った表情で
おはよう。
何で怒ってるの?僕何かした?なんか嫌だなあ。
話し合い(考えてみよう)
エピソードを見て気づいたことや考えたことを発表します。
エピソード毎に区切って、話し合いをして、次のエピソードのロールプレイを見ていく方法もあります。
エピソードをホワイトボードなどに書いて、一目でどんなエピソードだったのかわかるようにしておきます。
エピソード1について
エピソード1を見て考えたことや気が付いたこと、感想などを発表しよう。
無視するのはダメだと思う。なんで挨拶しないといけないかわからない。無視されたら腹が立つ。無視ではなくて、恥ずかしいから言えないんだと思う。でも結果的に無視したじゃないか。
どうしたらよかったと思う?
恥ずかしいけど、おはようって言った方が良いと思う。別に言わなくても良いと思う。でも無視された方は嫌な気持ちになると思うよ。相手の気持ちなんか知らないよ。あいさつした方が気持ちいいと思うけどな。などなど
アンダーラインの発言について、その場では何も言及しません。その子の正直な気持ちなので、スタッフは敢えてスルーします。
ここではどんなことを言っても非難されない安全な場所であることが前提条件だからです。
子ども達同士の話し合いの中で、気づきがあったり、考え方が変わったりすることがあります。
自分自身で気づくことを大切にして支援しています。
エピソード2について
エピソード2を見て考えたこと、気が付いたこと、感想などを発表しよう。
小さな声じゃ聞こえないと思う。相手が聞こえないんじゃ無駄だね。もっと聞こえる声で言った方が良いと思う。
どのぐらいの声の大きさで言ったら良いと思う?
相手にはっきりと聞こえるぐらいの声が良いと思う。
それじゃあちょっとやってみようか?見ているみんなはどのぐらいの大きさが良いか見ていてね。
おはよう
大きな声で
おはよう
今の声の大きさは?
ちょっと大きすぎかも。ビックリするよ。
どのぐらいの声が良いか、自分で考えてみてね。
エピソード3について
エピソード3を見て考えたことや気づいたこと、感想などを発表しよう。
下を向いていたら、相手が誰にあいさつしてるのかわからない。相手の方を見ないとねえ。違う方向を見てたら失礼だよね。
それじゃどこを見てあいさつをしたら良いと思う?
やっぱりあいさつした人の方を見た方が良いよ。相手の顔を見るのが良いと思う。
エピソード4について
エピソード4を見て考えたことや思ったこと感想を発表しよう。
怒った顔で言ったらダメだと思う。相手がビックリする。何故怒ってるのかわからないから嫌な気持ち。
それじゃあどんな顔で言ったら良いと思う?
怒ってない顔。普通の顔。笑った顔が良いと思う。笑顔って言うんだよ。
笑顔ってどんな顔?ちょっとやってみようか?
うーん難しいなあ。面白いことがないのに笑えないよ。ニコッとしたら良いんじゃない?
まとめ
みんな、たくさん意見が出たよね。挨拶はどんな風にしたら良いと思う?
ホワイトボードに子ども達の意見をまとめていきます。
無視しない。聞こえる声で言う。でも大きすぎたらいけない。笑顔で言う。難しいよなあ。
それじゃあ、やってみようか?僕とマリコさんが相手になるから、1人1人挨拶してみようか?
おはよう
おはよう
今のはどうだった?
良いと思う。ちゃんと相手の顔を見てた。笑顔だったよね。
このようにして、1人1人あいさつをしていきます。
見ているみんなは、感想を言ったり、チョコっとアドバイス(こうしたらもっと良いと思う)をしたり、良かったところを言ったりします。
練習してみよう(実際にやってみよう)
みんなで考えたあいさつのやり方を、実際にやってみます。
方法はいろいろありますが、今回はレインボー塾オリジナルの「あいさつすごろく」を使って活動します。
「あいさつすごろく」は、あいさつカード、アクションカード、場面カード、?カードの4種類の質問カードがあります。
ゲームはすごろくの要領で進めていきます。カードの所に止まったら、カードの指示を読んで行動します。
あいさつカードには、様々な場面での挨拶のやり方が書いてあります。
例 近所の人に夕方会った時はどんなあいさつをする?
指示を読んだ子どもは、スタッフにあいさつをします。
見ている子どもは、良かったら「良いねカード👍」を出します。
アクションカードには、身体を使った指示が書いてあります。
例 掃除をしているジエスチャーをする。
指示を読んだ子どもは、掃除をしているフリをします。
もし1人では難しい場合は、「ヘルプカード」を出して、「お助けマン」を呼んでも良いことになっています。「お助けマン」は一緒にアクションをします。
場面カードには、日常生活で遭遇するであろう場面が書いてあって、こんな時どうする?を考えて答えます。
例 授業中、隣の人がちょっかいをかけてきて困ります。どうしたら良いと思う?
指示を読んだ子どもは、解決策を考えて言います。
もし自分では考えられない時は、「ヘルプカード」を出して、「お助けマン」を招聘しても良いです。お助けマンと話し合って良い方法を考えます。
他の人は、答えを聞いて、良いと思ったら「良いね👍カード」を出します。
?カードには、自分についての質問が書いてあります。
例 あなたの好きなゲームは?その理由は?
質問された子どもは、自分について話します。
このすごろくにはゴールがないので、勝ち負けはありません。
時間を決めてゲームをするのも良いと思います。
大切なこと
1 それぞれの質問に対して、自分の考えを言えること。
2 友だちの意見をしっかり聞くこと。(反論や批判をしない)
3 困った時にSOSを出せること(「ヘルプカード」の活用、「お助けマン」の招聘)
4 友だちの意見やパフォーマンスに「良いね👍」カードを出して応援すること。
5 楽しくゲームをする時のマナーを守ること(人のアクションを笑ったり、意見を言っているのに途中で割り込んだりしないなど)
友だちと一緒にゲームをしている時は、「ルールを守る」「順番を守る」「負けても怒らない」を基本にして、様々なスキルを養うことができます。
トラブルが起こった時は、指導のチャンスです。
トラブルの原因を一緒に探って、どうしたら良いかを考えていきます。
次に同じようなトラブルになりそうな時に、スキルを活用できるように支援していくことが大切です。
振り返り(フィードバック)
今日のSSTを振り返って、気がついたことやわかったこと、感想を発表しよう
あいさつって色々な場面で言うんだってわかった。あいさつのやり方もチョットわかってきた。あいさつされると気持ちいい。あいさつって要らないと思ってたけど、今は大事かもって思う。
今日はみんなすごく頑張っていたね!それぞれすごいことに気が付いたり、意見を言ってくれたりしたよね。
他のスタッフから1人1人に、良かったところやいい気づき、友だちとの関わりなど良かった点を発表します。(スタッフはあらかじめ対象児童を決めて、活動中、行動観察を行なっています。)
SSTのスキルは「いつでも」「どこでも」「誰にでも」使っていこう!合言葉です。
このようにして、友だちや周りの人と仲良く生活していくためのスキルをSSTで学んでいきます。
子ども達が、実際の生活の中で、少しでも実践して、周りの人とうまく生活してくれたら良いなと思います。
今回は「あいさつをしよう」というSSTの1つのやり方を紹介しました。
教材について
教材として、SST「あいさつスゴロク」(レインボースゴロク付き)をつけさせていただきます。
あいさつカード(pdf)に、あいさつカード、場面カード、アクションカード、?カード、レインボーカード(これはおまけです。)がついています。
レインボーカードには将来の職業が色々書いてあります。もし自分がその職業になったらどんなことがしたいかを言います。
例 あなたは作家です。どんな作品を書きたいと思いますか?
あいさつスゴロクの作り方
印刷をして、各カードを切り取って、二つ折りにすると、面が「あいさつカード」のロゴで裏が「あいさつをする場面の言葉」になるように作ってあります。
カードをコピー紙に印刷した場合は、強度を得るためにラミネート加工をすることをお勧めします。画用紙なら真ん中を糊付けしてください。
すごろく版はA3ぐらいにコピーしてラミネート加工をする方が良いと思います。
コマは、私は100円ショップで「おもしろ消しゴム」というのを購入しましたが、なんでも良いと思います。子どもの消しゴムを使ってもOKです。
ゲームの人数は6人〜8人が限度だと思います。2人以上でできますが、4〜6人ぐらいが良いと思います。あまり人数が多いと、人がやっている時間が多くなるので飽きてしまう子どももいます。
あいさつスゴロクのPDF
クリックするとそれぞれの教材のPDFにつながっています。
今回は「いいね👍カード」「ヘルプカード」はつけていません。