SST 気持ちを言葉で伝えよう(教材入り)

気持ちをうまく伝えられない?

誰でも嫌なことを言われたり、困ったことがあると思います。

例えば、リレーをしていて、「走るの遅いなあ。そんなんじゃビリになっちゃうぞ!」と言われたとします。

そんな時は、「走るのが遅いって言われるのは、嫌なんだ。」と言葉で伝えられると良いのですが、なかなか言葉で伝えられない子どももいます。

何も言わずに、言った子を突き飛ばしたり、殴ったりしてしまう子どもも多くいます。

発達障害などで「生き辛さ」を感じている子どもは、コミュニケーションが苦手な子どもが多いです。

言葉で伝えずに、暴言や暴力に訴える子どももいます。

うまく表現できないので、何も言わずに怒りを溜めてしまう子どももいます。

自分の感情を表す言葉がわからないこともあります。

嫌な気持ちをなんと言って表現すれば良いのかわからず、苦しんでいるのです。

困ったらSOSを出せば良いじゃないかと思うかもしれませんが、彼らはSOSの出し方がわからないのです。

学校生活の中には、嫌なことも、困ったことも出て来ます。

人によって嫌なことは違います。ある人にとってはなんでもないことでも、他の人にとっては非常に許せないほど嫌だと感じることもあります。

急に怒り出したり、暴力を振るったりすると、その行為だけで判断されて、何故そういう言動になったのかは不問になってしまうことが多いです。

言葉にならない気持ちについては、問われることもなく、一方的に叱責されたり決めつけられたりしがちです。

ですから、気持ちを言葉で伝える方法を教えていくことは、とても重要なことだと思います。

SSTで気持ちを言葉で伝える

発達障害などで「生き辛さ」を感じている子ども達に、気持ちを言葉で伝える方法を教えていく必要があります。

SSTでは、まず、気持ちについて考えてみます。

どんな気持ちがあって、それを表す時にどんな言葉があるのかを教えます。

例えば、怒りを感じた時にどう言えば良いのか?

怒りの度合いによって表現の仕方は違ってきます。

SST「腹が立った時どうする?」怒りのレベル2

どのぐらい腹が立つかわかったら、その場合の言い方は?

言葉を考えていきます。

自分では見つけられない時は、スタッフや友達と一緒に考えていきます。

だんだん言葉が増えていくと、どんな時その言葉を使ったら良いのかを考えます。

大体、最初に出て来るのは「くそ!」「ぶん殴ってやる!」「腹たつ」「・・・」とても言葉とは言えないものかもしれません。

そのうちに「〜されたら腹が立つ」「〜って言われたら無茶苦茶怒りを感じる」など、何が嫌だったのかを言えるようになってきます。

そうすることで、自分の気持ちを整理して、適切な言葉が言えるようになってくると思います。

SST 気持ちを言葉で伝えよう

ロールプレイを見よう

スタッフがロールプレイをして見せます。

スタッフのジュンヤさんが大縄跳びに入ろうとしていますが、なかなか入ることができません。何度も入りかけますが、タイミングが掴めなくて入れずにいます。

そこで、スタッフのタロウさんが

タロウさん
タロウさん

おい、何やってるんだよ、いつまでそうやってるんだよ。

日が暮れちゃうよ。

早くしろよ。

と言いました。

ジュンヤさんは、タロウさんを突き飛ばしました。

タロウさん
タロウさん

何するんだよ!

ジュンヤさんは、縄跳びを掴んで、ブンブン振り回しました。

タロウさん
タロウさん

やめろよ!危ないじゃないか!

それでも、ジュンヤさんは縄跳びを振り回し続けました。

考えてみよう

マリコさん
マリコさん

今のロールプレイを見て、どんなことを思ったかな?感想でも良いよ。

子どもC
子どもC

ジュンヤさんは、タロウさんに言われて腹が立ったと思う。

子どもA
子どもA

そうだよ。大縄って入るの難しいんだよ。なのに日が暮れるってひどいよ。

子どもD
子どもD

でも、いきなり突き飛ばしたら、タロウさんだってビックリするよ。

子どもE
子どもE

それに、縄跳びって当たったらすごく痛いんだよ。

振り回したら危ないと思う。

子どもA
子どもA

ジュンヤさんがいきなり行動に出たから、悪いって思われるんだよ。

マリコさん
マリコさん

それなら、ジュンヤさんはどうしたら良かったと思う?

子どもB
子どもB

ジュンヤさんがちゃんと言葉で言ったら良かったんだよ。

子どもC
子どもC

そういうけど、なんて言えば良いんだよ?

嫌だ嫌だって?

子どもB
子どもB

難しいよなあ。なんて言うかなあ。

日が暮れるとか早くしろとか言われて嫌なんだけどって言うのはどうかな?

子どもD
子どもD

でも、相手が本当のことだろ!って言ったらどうするのよ?

だってそうでしょ。

大縄にいつまでも入れないんだもの。

子どもB
子どもB

それはそうだけど、嫌なことを嫌だって言うことは大事だと思うんだよな。

本当のことでも。

子どもE
子どもE

そうだよね。

何も言わないで暴力に訴えたら、タロウさんにはジュンヤさんの気持ちわかんないよね。

ただいきなり突き飛ばされたって思うだけだよね。

子どもA
子どもA

僕は大縄苦手なんだ。

でも、「日が暮れる」とか「早くしろ」って言われるのはすごく嫌なんだ。ていうのはどうかな?

子どもD
子どもD

それ良いかも。

苦手なんだからうまくできないよね。

待っていてほしいもんね。

どうやって入ったらうまくいくのか教えてくれるかな?って言うのは良いかもしれない。

やってみよう

マリコさん
マリコさん

それじゃあ、みんなでロールプレイをやってみようか。

さっきみんなで言い方を考えたよね。

それを使ってみてね。

大縄をやっています。A君はなかなか大縄に入れません。

子どもC
子どもC

おい、何をやってるんだよ!日が暮れるじゃないか!早くしろよ!

子どもB
子どもB

ごめん。

僕大縄苦手なんだよね。

どうやって入るのかわかんないんだ。

でも、「日が暮れる」とか「早くしろ」って言われるのはすごく嫌なんだよ。うまく入れる方法を教えてくれたら嬉しいけど。

マリコさん
マリコさん

ロールプレイをやってみて、どうだった?

子どもB
子どもB

うん、言ったけどさあ。

なんかモヤモヤしてるんだよね。

腹が立ってる時に、こんなセリフ言わないと思うな。

だって、そんな時は、冷静に考えて言えないよ。

子どもA
子どもA

僕も多分腹が立っていたら、教えてなんて言えないな。

それに、苦手なことを認めるのは、なんか負けたみたいで言いたくないなあ。

子どもD
子どもD

見ていて思ったけど、やっぱり無理があるよね。

腹が立ってる時って、ごめんなんて、口が裂けても言いたくないし。

子どもE
子どもE

そうそう、言ったやつを睨みつけてる状態で、そんなこと言わないよね。

子どもC
子どもC

怒らせた本人が言うのもなんだけどさ。

からかってやろうって気持ちもあるんだよね。

意地悪だけど。

きっと怒るなってわかって言ってると思うんだ。

だから、ごめんなんて言われると、なんか拍子抜けっていうか、ちょっとガッカリ。

でも、教えてほしいって言われるとまんざらじゃないかも。

マリコさん
マリコさん

腹が立っている時に、どんな風に言うかなあ?

何か意見ある?

タロウさんが、嫌なことを言う役をして、みんなで、その時の気持ちを言ってみることにしました。

タロウさん
タロウさん

おい、何やってるんだよ!日が暮れるじゃないか!早くしろよ!

子どもC
子どもC

早くしろって言われても、入れないもんは入れないよ。嫌なこと言うな!

子どもA
子どもA

めっちゃ腹が立つなあ。

入れるもんならとっくに入ってるよ!少し待ってろ。

子どもD
子どもD

ちょっとひどいじゃない。苦手なことは誰にでもあるよ。

子どもE
子どもE

難しいんだからしょうがないでしょ!すごく傷つくわ!

子どもB
子どもB

入ろうと思ってるのに、そんなこと言うなよ。難しいんだよ。

マリコさん
マリコさん

それぞれに、嫌な気持ちを言葉で言えたね。

今のだったら、腹が立っても言えるかな?

タロウさん
タロウさん

こっちにも、すごく伝わってきたよ。嫌だったんだなあって。

ちょっと喧嘩になりそうなのもあったけど、いきなり突き飛ばされるより、相手が嫌だったんだなあってわかったよ。

ジュンヤさん
ジュンヤさん

自分の気持ちを言葉で伝えるのって本当に難しいよね。

その時の感情を表現する言葉ってなかなか見つからないしね。

でも、自分の気持ちを正直に言った方が良いと思うよ。

練習してみよう

嫌なことを言われたり、されたりする場面を書いた「場面カード」を山札に置きます。

2人1組になって、場面カードを見ます。

場面

A君が鉄棒の逆上がりの練習をしていました。
A君は逆上がりが全然できません。
B君が「お前下手だなあ。そんなんじゃ絶対できっこないよ。」と言いました。
子どもA
子どもA
お前下手だなあ。そんなんじゃ絶対できっこないよ。
子どもB
子どもB

逆上がり難しいんだよ。

でも、下手って言われるとすごく腹が立つんだ。

このように、様々な場面をロールプレイしながら、言葉を考えていきます。

ロールプレイを見ている人は、言い方が良かったら「良いね👍カード」を出します。

言い方がわからない場合は「ヘルプカード」を出して、「お助けマン」を呼んでも良いです。

アドバイスがある時は、「チョコっとアドバイスカード」を出して、自分が考えた言い方を言ったり、こんな風にしたらもっと良くなるよとアドバイスをします。

SST教材

感情のコントロール腹が立つカード立つカード

いいねカード

ヘルプカード

お助けマンカード

チョコっとアドバイスカード

👍カードやヘルプカード、お助けマンカード、チョコっとアドバイスカードは、色々な学習やゲームで使える便利なカードです。

振り返り

マリコさん
マリコさん

今日の学習でわかったことや気がついたこと、感想などを発表しましょう。

子どもA
子どもA

嫌なことがあった時に、気持ちを言葉でつたえなくちゃいけないことはわかった。

でも、なんて言えば良いのかは、まだよくわかんない。

子どもB
子どもB

そうだよね。なんて言って良いのか本当に難しいよね。

子どもC
子どもC

それにさ、怒ってる時って、言葉なんか浮かんでこないからなあ。

頭真っ赤になって・・・どうしても行動の方が先っていうか。

でも、言葉で言わないといけないんだなって少しわかった。

できるかどうかはわからないけどな。

子どもD
子どもD

気持ちって、嫌だって言うだけじゃないよね。

嬉しいとか悲しいとか、他にもあるじゃん。

だから、言葉の数もたくさんあるってことだよね。

子どもE
子どもE

そうそう、気持ちにぴったりの言葉ってどんだけあるの?って感じ。

子どもD
子どもD

それ探してみるのも良いかもね。

今回のSSTでは、主に怒りの感情を言葉にする学習をしました。

怒りの感情は、とても激しいので、言葉で伝えるのは難しいです。

まず、クールダウンをしてみて、冷静にならないと、言葉など浮かんでこないでしょう。

でも、怒りを行動で示してしまって(殴ったり蹴ったり暴言を吐いたり・・・)失敗することがとても多いのです。

感情には、言葉があること。

言葉で伝えないと相手には伝わらないこと。

たくさんの感情を表す言葉を知っておくことは、ゲームのアイテムを集めるように、ピンチの時の武器になることなどを教えています。

他の感情(喜怒哀楽)についても、それぞれに言葉があることも一緒に教えていきます。

気持ちを表す教材

気持ちカード喜怒哀楽

気持ちを表す言葉が書いてあるカードです。

どんな時に、そんな感情になるのかを考えても良いし、場面のイラストがあれば、こんな時はどの言葉かな?とマッチングさせるゲームにしても良いと思います。

 

今回は、SST 気持ちを言葉で伝えようというテーマのご紹介をしました。

SSTにはまだまだたくさんのテーマがあります。

少しずつご紹介しますね。

 

 

 

 

 

 

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