言い方で相手の感情は変わる?
私たちの生活の中で、同じこと(同じ内容)を言っていても、言い方で随分違う印象になることがあります。
例えば、消しゴムを忘れて困っている時に、隣の子に借りようと思いました。
その時の言い方が
「おい、消しゴム貸せ!」
では、相手は
「なんでこんな奴に貸さなきゃいけないんだ。」
と思い断るかもしれません。
でも、
「消しゴム忘れちゃったから、貸して欲しいんだけど良いかな?」
と頼むように言ってみると、
「良いよ。」
と案外スムーズに貸してもらえるかもしれません。
同じ状況で、同じ内容でも、言い方が変われば、相手の感情も変わってきます。
では、どんな言い方が良いのでしょう?
それは、アサーティブな言い方です。
アサーティブな言い方というのは、自分の気持ちや考えをしっかり主張しますが、相手や自分を傷つけない方法で行う言い方です。
なかなか難しい方法なので、練習をする必要があります。
アサーショントレーニングって?
アサーションという言葉を聞いたことがありますか?
アサーションでは、自分の気持ちや、考え、信念等が正直に、率直にその場にふさわしい方法で表現されるコミュニケーションを目指しています。(日本精神技術研究所)
アサーションは、自分も相手も大事にして、主張をしっかり行うものの、相手を傷つけない絶妙なコミュニケーション方法です。
アサーションを直訳すると『自己主張』となりますが、自分の意見を押し通すのではなく、相手の気持ちや意見も考慮に入れて、なおかつ自分の意見を言うことです。
自己表現の3つのタイプ
人間関係における自己表現には3つのタイプがあります。(ウォルピ)
非主張的自己表現(ノンアサーティブ)
自分を後回しにして、自分よりも他者を優先する自己表現です。
漫画の「ドラえもん」でいうと、「のび太君」がこのタイプです。
攻撃的自己表現(アグレッシブ)
自分のことだけを考えて意見したり行動したりして、時には他者を踏みにじることにもなる自己表現です。
漫画の「ドラえもん」でいうと、「ジャイアン」がこのタイプです。
公平で中立的な自己表現(アサーティブ)
自分の意見をはっきり言うが、他者の立場や気持ちも考えて配慮することができる自己表現です。
漫画の「ドラえもん」でいうと、「シズカちゃん」がこのタイプです。
自分も相手も大切にするコミュニケーションの方法を学ぶアサーショントレーニング
アサーショントレーニングを行う上で、自分のタイプを知っておく方が良いと思います。
例えば、スーパーマーケットのレジで並んでいたとします。
後ろから割り込んできた人がいました。あなたはどういう対応をしますか?
1割り込みなど絶対許せないので、大声で怒鳴って後ろに行かせる。
2割り込まれたのは嫌だけど怖そうだし黙って前に行かせる。
3「急いでいるのはわかりますが、今私はここに並んでいます。みんなも並んでいるので一緒に並んでください。」と言って並んでもらう。
あなたのタイプはどれですか?
1はジャイアンタイプです。(攻撃的)
2はのび太君タイプです(消極的)
3はシズカちゃんタイプです。(アサーティブ)
アサーティブなコミュニケーションを培うのが、アサーショントレーニングです。
自分は怒って怒鳴りやすいなと思ったら、怒鳴らないで相手に自分の思いや考えを伝える方法を考えます。
自分はどちらかというと、何も言えずに黙ってしまう方だなと思ったら、自分の思いや考えを相手にはっきり伝える方法を考えます。
SSTでアサーショントレーニングを!
SSTのテーマ 「言い方に気をつけよう」
場面(ロールプレイを見る)
場面:消しゴムを忘れた時
スタッフがロールプレイを行います。シーンは2つあります。
シーン1:
おい消しゴムかせよ
と言って、消しゴムを奪う
シーン2:
・・・(貸してほしいなあ)
消しゴムを忘れて貸して欲しいけど言い出せなくて諦める。
考えてみよう
シーン1とシーン2について感想を発表する。
シーン1を見てどんなことを思った?
消しゴム貸せっていうのは命令しているみたい。
無理やり貸せって言われて嫌な感じがする。
それに良いよって言ってないのに消しゴムを無理やり取るのはひどい。
シーン2を見てどんなことを思った?
借りたいのに何も言わないから。相手には伝わっていない。
借りたいなら貸してって言えば良いのにと思った。
どうすれば良かったと思う?
『消しゴム忘れたから、貸して。』と言えば良いと思う。
もし使ってたら、『使い終わったら貸して』と言えば良いと思う。
話し方の3つのタイプ
話をする時に3つのタイプがあります。
マリコさんがホワイトボードに書いていきます。できれば、ジャイアン・のび太・しずかちゃんのキャラクターを貼っていっても良いと思います。
1ジャイアンタイプ:大声で怒鳴ったり命令したりする話し方
2のび太君タイプ:モジモジして言いたいことを言えずにいる
3シズカちゃんタイプ:相手のことも考えて自分の意見をはっきり言う話し方
みんなはどのタイプが良いと思う?
シズカちゃんタイプが良いと思う
やってみよう
ロールプレイを子ども同士でやってみます。
A君が消しゴムを使っています。
B君は消しゴムを忘れたので、A君に借りたいと思っています。
B君はなんて言う?
2人1組でロールプレイをします。
どんな言い方をされたら、消しゴムを貸してあげようと思ったかを発表します。
やってみよう
様々な場面で、どういう言い方をすれば、相手が気持ちよく言い分を聞いてくれるかを考えます。
場面が書いてあるカードを見て、言い方を考えます。
1休み時間に遊んでいたボールを片付けて欲しい時
2読んでいる本を見せて欲しい時
3ノートの採点の列に割り込まれた時
4給食当番なのに遅れてしまった時
5理科の実験の時に自分にやらせて欲しい時
6掃除の時間に遊んでいる友達がいる時
練習しよう(ゲーム)
色々な場面が書いてある場面カードを用意して、真ん中に山札として置きます。
2人1組でカードを引いて、場面を読みます。
2人で役割を決めて、ロールプレイをします。
見ている人は、良かったら「イイね👍カード」を出します。
何回かやって、「イイね👍カード」をたくさんもらった組の勝ちです。
振り返り
「言い方に気をつけよう」の学習をして、気づいたことやわかったことや感想をワークシートに書いて発表します。
チャレンジカードに、シズカちゃんタイプの話し方ができた時に、どんな場面で、どんな風に言ったのかを記録します。また、他の人が言っているのを見つけた時にも記録します。
アサーショントレーニングは何回でも!
今回は、アサーショントレーニングの始めのSSTを紹介しました。
アサーショントレーニングは、1回では身につきません。
1回目は、3つのタイプがあることを意識してくれたら良いかなと思います。
「自分はジャイアンタイプだったけど、少し気をつけるようにしようと思った。」でも良いと思います。
まず、自分はどんな話し方をしているかを振り返って、言いたいことがうまく言えるように練習していこうと思うだけでも良いと思います。
そこからがスタートです。
練習を重ねて、うまく実際の場面で使えるようにしていくことが大切です。
SSTでは、「言い方に気をつけよう」や「言い方ひとつで変わること」などのテーマで、何回か学習を重ねていきます。
頼み方や断り方、誘い方などの学習の中にも、アサーショントレーニングが含まれます。
様々な学習の中で、何回もトレーニングをすることで、「この言い方が良いんだな。」と感じて、少しずつ使えるようになっていきます。
ジャイアン・のび太君・シズカちゃんのペープサートを使っても、低学年の子どもには、わかりやすいと思います。
「イイね👍カード」は色々な指導で使えるので、名刺サイズのカードをたくさん作っておくと便利です。
SST 言い方1つで変わること(アサーショントレーニング)の教材
どんな言い方をされた時に、どんな気持ちになったかを整理するワークシートです。
言い方で相手の気持ちが変わることを考えるワークシートです。
どんな言い方をすれば相手も自分も傷つかないのかを考える場面カードです。
嫌なことを言われた時に、自分の気持ちをどうやって伝えたら良いのかを考えるワークシートです。気持ちを表す言葉も一緒に考えます。
おまけの教材です。「良いね👍カード」は、いろいろな場面で使えます。友達から認められるのは良いものです。自己肯定感も高まります。
この他にも、ヘルプカード、お助けマンカード、チョコっとアドバイスカード、などがあります。ゲームをしている時などに使うと効果的です。
SSTのターゲットスキル は、まだまだたくさんあります。
少しずつ紹介できれば良いなと思います。
ヘルプカード、お助けマンカード、チョコっとアドバイスカードについては、SST 暗黙のルールで紹介しています。
SST 暗黙のルールをご覧になりたい方は→こちらをクリック